平成28年熊本地震を教訓とした防災・減災対策について
菖蒲明久
キーワード:平成28 年熊本地震、防災・減災対策、リダンダンシー
1.はじめに
今回の地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
大分県内の被害状況(7月7日現在)ですが、人的被害27人(重傷・軽傷)、建物被害5,832棟、道路被害209件などで、公共土木施設(県及び市町村)の被害総額は、約41億円となっています。
また「九州・山口9 県災害時相互応援協定」に基づき、カウンターパート方式により熊本県と南阿蘇村へ延べ2,194人・日(7月5日現在)の人的支援を行っており、今後も積極的に支援を行っていきます。
さて、発災してから4ヶ月が経ちますが、被災後すみやかに、応急復旧に取り組み、6月には、国の災害査定も行われて、復旧のスピードを加速しているところです。
2.道路の被害状況と対応
産業や観光など社会経済活動の要となる大分自動車道で24日間の通行止めが発生しました。大分・熊本を結ぶ主要幹線道路である国道212号(日田市)も2箇所で今なお全面通行止めとなっています。
地震直後、大分自動車道では湯布院IC~日出JCT間において、由布岳PA付近上り線側の切土のり面が崩落、土砂が堆積して上下線を寸断したほか、500mほど湯布院寄りに位置する並柳橋でも支承・主桁の損傷が明らかとなり、全面通行止めとなりました。その後の応急対策により、2車線通行が可能となりました(写真-1、2)。
東九州自動車道を含めた高速道路では、今なお暫定2車線区間が多く残っていますが、対面通行による重大事故の発生などの課題に加え、災害における迅速な復旧対応のためにも、4車線化に向けた取組が必要であると改めて痛感しました。
また、大分・熊本を結ぶ主要幹線である国道212 号(日田市)では2箇所で今なお全面通行止めとなっています。現地は日田地域特有な急峻で柱状節理のある地形であるため、復旧作業の安全を確保しながら、一日でも早い交通開放に向け、職員一丸となって取り組んでいきます(写真-3)。
3.南海トラフ巨大地震等への備えについて
今回の地震では、改めて社会インフラの強靱化の必要性を痛感しました。大分県では主に南阿蘇村の支援を行ってきましたが、要員の派遣や物資の輸送については、中九州横断道路と国道57号が大きな役割を果たしました。特に、熊本で消費されるガソリンや軽油は、その8割が大分から陸送されていますが、平成24年九州北部豪雨災害で大規模のり面崩壊があった国道57号滝室坂で、落石や土砂崩れ対策とともに道路を守るためのロックシェッドで改良復旧され、今回は無傷で通行できたことや、九州唯一の製油所がある大分臨海部コンビナートが支障なく稼働したことが円滑に支援できた大きな要因となりました(図-1)。
国道57号のリダンダンシーとして中九州横断道路の早期整備の必要性や臨海部における護岸強化など喫緊の課題として取り組んでいかなければなりません。
大分臨海部コンビナートは、製鉄・石油精製等の産業が集積し国内外のサプライチェーンを形成するなど、わが国の産業・経済を支えるとともに、県内の産業や雇用の中核として重要な役割を果たしています。その背後には、県都大分市の市街地が広がっています。今後50年以内の発生確率が90%程度とされる南海トラフ巨大地震による最大の経済被害額は約1.9 兆円(大分臨海部の域内被害額に、サプライチェーンの寸断による国内へのダメージ波及など域外被害額を加えたもの)、津波浸水人口は約56,000 人と推計されています。しかしながら、大分臨海部コンビナートの護岸は、建設から約半世紀が経ち老朽化対策も課題となっています(写真-4)。
また、発災直後からの救命・救助や救援物資の輸送のため、平成26年度に道路啓開計画を策定していますが、緊急輸送道路を含む道路啓開ルートにおける橋梁の耐震化やのり面崩壊対策の取組も喫緊の課題です。
こうしたことから、大分臨海部コンビナート護岸補強対策をはじめとした防災・減災対策に併せて、中九州横断道路の整備などリダンダンシーの確保、広域交通ネットワークの機能強化を進めていきます。
4.おわりに
今後、大雨が降りやすい台風時期を迎え、地震に伴う地盤の緩みによる土砂災害等も懸念されることから、県民の生命・財産を守るために、引き続き危機管理に万全を期してまいります。