日本風景街道九州ルートの活動概要とこれからの発展に向けて
国土交通省 九州地方整備局 道路部
道路計画第二課 調査係長
道路計画第二課 調査係長
池 田 幸 司
キーワード:景観・自然、歴史・文化、施設・体験
1.はじめに
日本風景街道とは、住民・NPO・企業などが主体となって行政と連携しながら、道を舞台に風景や自然・歴史・文化など、地域ならではの資源を活かした「美しい景観づくり」「活力ある地域づくり」や「観光の振興」を行っていく取り組みである(図- 1)。
それぞれの活動を活発にすることで、にぎわいや元気のある地域を目指している。
日本風景街道の具体的なイメージ(図- 2)は、中心となる道路があり、脇道があり、道を舞台に風景や自然・歴史・文化など、地域ならではの資源を活かした「美しい景観づくり」、「活力ある地域づくり」や「観光振興」を行っていく取り組みである。
各地域で活動されている団体(パートナーシップ)が交流し、連携することによって、「点」での活動が「みち」で繋いで「線」になり、地域活性化や観光振興につながっていくものである。
日本風景街道のこれまでのあゆみとしては、(図- 3)、平成17 年度に日本風景街道戦略会議が設置され、平成19 年度に「日本風景街道の実現に向けて提言」をとりまとめられ、同年9 月より登録を開始している。
平成31 年3 月末までに全国で142 ルート、九州ルートでは15ルートが登録(図-4)されており、最近では平成31 年3 月に新たに「島原半島うみやま街道~歴史と水の温泉まち~」が登録された。
2.日本風景街道九州ルートの活動
九州ルートのこれまでの活動成果の一部を紹介する。
景観の整備・保全として、「ながさきサンセットロード」では、ビュースポットの整備(写真-1)を平成20 年に行っている。整備にあたっては、パートナーシップと行政機関で現地景観診断を行っている。
景観診断とは、沿道景観や海の眺めの良いところ、改善した方が良いところなどについて、現地を視察しながら話し合い、さらに良くするにはどのような取り組みをするかを考えて実施に至っている。
地域活性化イベントでは、「九州横断の道 阿蘇くまもと路」の活動において、「九州横断徒歩の旅」(写真- 2)として、平成23 年より豊後街道(大分~熊本城間)約125㎞を、小学3 年生~中学3 年生の子供達(約200 名)が体育館等に寝泊まりし、集団生活を行いながら歩いて旅をする体験学習であり、地元の方々との交流を通じた「心」の学習、歴史街道を歩いて旅する「歴史」の学習として30 年以上の歴史を持っている。
この取り組みは、100 名近いボランティアにより支えられており、子供の頃、旅を経験した人材が、新しい旅を支えるなど、人材の育成と確保にも繋がっている。さらに、地域の風物詩として地元テレビや新聞等の取材や報道特集番組などが組まれるなど、地域資源の情報発信にも寄与している。
関係者の交流では、「日南海岸きらめきライン」は、平成22 年から日本風景街道大学(写真- 3)を開学し、自立的な地域づくり活動を企画・実行し、持続可能な取り組みを目指すために、宮崎大学を会場として実施している。県内はもとより東京、福岡から2 日間に渡り参加者の意識啓発・高揚を図り、パートナーシップの人材育成、底上げにつながるとともに、今後の美しい景観の形成や地域の魅力発信に大きく寄与している。
日本風景街道は登録開始から10 年が経過したことを踏まえ、今後の日本風景街道の活動を更に活性化させるための方策などについて、幅広く検討するため、平成29 年12 月に学識経験者等からなる「「日本風景街道」有識者懇談会(石田委員長:筑波大学名誉教授)」が設置され、4 回にわたり議論が行われている。
これまでの検討結果を踏まえ、平成30 年8 月に「日本風景街道の発展に向けて」として提言がとりまとめられた。
提言としては、発展に向けた課題として、①停滞が見られるパートナーシップが存在、②「日本風景街道」の認知度が低い、③地元自治体との連携不足、④資金・人員体制が不足しているなどが示された。
また、発展に向けた具体的な取り組みの方向性としては、①景観の整備・保全、②案内看板等の検討、③情報の発信・共有、④道の駅との連携、⑤関係者の交流、⑥道路協力団体制度の活用、⑦支援体制の構築などが示された。これらを踏まえ、現在、具体的な取り組み内容を検討中である。
3.シンポジウム
日本風景街道九州ルートは、平成19 年度の登録開始以降、現在15 ルートとなっている。この間、それぞれのルートの活動は着実に実を結ぶなど、活動の広がりを見せており、設立から10 周年を迎えた。昨年、平成30 年12 月にシンポジウム(「九州風景街道~これからの10 年~」)が開催され、九州風景街道の更なる発展に向けた具体的取組の方向性について意見が交わされた。
シンポジウムでは始めに「「日本風景街道への期待」~ 提言「日本風景街道の発展に向けて」を踏まえて~」と題して筑波大学の石田名誉教授、「国際化、アジア化する九州の地域社会と九州風景街道」と題して九州大学の樗木名誉教授による基調講演により、九州風景街道への期待とアジアに近い九州が有するポテンシャルについて考えるきっかけが提示された(写真- 4)
更に、北海道と長崎から先進的な事例紹介が行われ、これらを踏まえ、「これからの10 年で九州風景街道が目指すもの」と題して、風景街道の活動の活性化のための取組の方向性や、風景街道と関連する施策とどのように連携していくかなど、元西日本新聞社副社長玉川氏コーディネートによる活発なパネルディスカッションが行われた。
4.おわりに
最後にジオパークや世界遺産との連携、九州風景街道としてのルート間の連携、今後の九州風景街道を支援する新たな体制のあり方など、これからの10 年に向けた議論で得られた今回の成果については、具体的な検討・取り組みを通して、九州15 ルートの今後の活動支援に反映していくこととしている。