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排水性舗装機能回復の検討

建設省 九州技術事務所長
村 松 正 明

建設省 九州技術事務所
 調査試験課 材料試験係長

山 本 晋 也

世紀東急工業株式会社
 九州試験所長
若 松 一 喜

1 はじめに
わが国の排水性舗装は昭和62年の東京都環状7号線を皮切りに、その施工実績は着実に伸びてきている。九州管内における施工実績も平成9年度までに約40万m2に達しており,今後もさらに増えることが予想される。(図ー1)
このように排水性舗装の施工実績が増加するなかで,その機能の維持と今後の普及(排水性舗装)を図るためには,適切かつ効率的な管理手法の確立は重要な課題となっている。
排水性舗装の有する機能として,雨天時の視認性の改善や交通騒音の低減などが挙げられる。これらの機能は,供用後の交通荷重による空隙つぶれや塵埃などによる空隙づまりで低下することが確認されている。このなかで空隙づまりが原因で機能が低下した排水性舗装は,高圧水の噴射と汚泥水の吸引を組み合わせた物理的手法の機能回復は可能と考えられている。
本調査は,平成7~8年度建設省九州管内で施工した排水性舗装の機能回復機械による回復作業を実施し,その効果を検証したものである。

2 調査概要
(1)施工箇所
一般国道3号 福岡県久留米市諏訪野町地区
(2)施工内容
機能回復作業 :5,530m2
現場透水量試験:60箇所
コア分析   :30箇所
回収物質の調査:1,2,4工区
(3)施工期間
平成10年2月17日~平成10年3月30日

3 調査内容
(1)排水性舗装混合物の特性値
調査箇所の混合物の各特性値を表ー1に示す。

(2)施工機械
機能回復の使用機械は,高圧水噴射汚泥吸引方式を用いた。吸引した汚泥水は洗浄水に還元し,噴射水として再利用する循環方式である。
機能回復の作業は,
 噴射水圧:70kgf/cm2:作業速度:10m/分
 1回の洗浄幅:2m と設定した。

4 調査結果
(1)回復作業前後の排水機能
図ー3,図ー4は,回復作業前後のOWP(わだち部)BWP(非わだち部)の現場透水量を示したものである。
回復作業前の15秒当たりの平均透水量は,1工区136cc,2工区311cc,4工区250ccで,施工直後の現場透水量が1000cc~1200ccであったことを考慮すると機能低下の進行が伺える。この低下の度合いは供用後22~24ヶ月では極めて大きいものと考えられる。また,測定位置の違いによる現場透水量は,全体的にBWPの方が大きい値を示しており,一般的な傾向とは異なる。これは,空隙つぶれによってOWPの吸排作用(車のタイヤが通過するOWPでは,多孔質な表面を通過するときに生じる吸排作用が塵埃などを排除する)の効果が発揮できなかったものと考えられる。
回復効果については,BWPでは全測定15箇所のうち12箇所で回復効果が得られている。一方の,OWPでは7箇所となっている。BWPの方が高い回復効果が得られている。
当該地区の追跡調査によると供用後17ヶ月の横断凹凸量は,1工区:8.2㎜,2工区:7.3㎜,4工区:5.7㎜となっており,供用月数の経過から判断すると若干大きい。これは当該路線が慢性的な渋滞箇所であることから,交通荷重(制動繰り返しの圧密・流動)を多く受けるOWPで空隙つぶれが発生していると判断される。
したがって,OWPで十分な回復効果が得られなかったのは,塵埃等が回復作業時の高圧水によってほぼ閉塞状態(空隙つぶれによる)の舗装空隙内へ強引に押し込み吸引効果を阻害したものと推察される。

(2)回復効果の評価
回復効果は,残存透水率(回復前・後の現場透水量÷施工直後の現場透水量の百分率)で評価した。図ー5は,回復作業前後の残存透水率の関係を示したものである。この図から,高い回復効果を示す回復前の残存透水率は概ね50%以上である。

(3)コア供試体の空隙率
表ー2は,コア供試体の空隙率を示したものである。空隙率は,配合設計時の50~60%(連続空隙率では40~50%)程度に低下しており,空隙づまりや空隙つぶれの進行していることが確認できる。

(4)現場透水量と連続空隙率の関係
現場透水量とコア供試体の連続空隙率の関係は図ー6に示すとおりである。
連続空隙率が大きくなると,当然現場透水量も増加するものと期待したが,排水機能低下の著しいことが影響して明確な相関が得られていない。

(5)コア供試体の透水係数
回復作業前後のコア供試体の透水係数を,図ー7に示す。この図から,僅かであるが機能回復作業による透水係数の改善が見られる。

(6)現場透水量と透水係数の関係
図ー8は,現場透水量と透水係数の関係を示したものであるが,両者に相関は見られない。これは,現場透水量試験は深さ・横方向への自由水であるのに対し,室内透水量試験では側面を密封して深さ方向だけの透水量とする測定方法の相違に起因しているものと考えられる。また,コア供試体で試験を行う場合,基層界面のタックコートの付着による影響も無視できない。

(7)コア供試体の目視観察
コア供試体(機能回復の前後)を縦方向に2分割して,内部の目視観察を行った。回復前の空隙づまり物質は,ほとんどの供試体が上部から下部に及んでいた。しかし,回復作業後の空隙づまり物質が回収されているのは上部(1~1.5cm)付近だけで,下部へは至っていない。
このことは,供用後比較的早期に空隙つぶれが生じ,空隙づまり物質が舗装体内部を閉塞したため吸引効果を発揮できなかったものと思われる。

(8)空隙づまり物質の回収量
機能回復作業で回収された空隙づまり物質量は,1工区:97.3g/m2,2工区:99.0g/m2,4工区:93.2g/m2で工区ごとの回収量にほとんど差はない。
過去の実績例では,高速道路で50~60g/m2,一般道路で100~120g/m2程度であると言われている。本路線でも平均的な空隙づまり物質量は回収されたことになる。

(9)空隙づまり物質の粒度
回収した空隙づまり物質の粒度組成は,図ー9に示すとおりであるが工区ごとに変化はなく,いずれも日本統一分類法の「細粒分まじり砂(S-F)」に分類される。

(10)回復作業時の目視観察
回復作業時の路面状況は,高圧水による骨材の離脱飛散や吸引不足による回収物の浮遊などは見られず良好であった。設定した標準作業(噴射水圧70kgf/cm2,作業速度:10m/分)が当該現場にも十分適用できたものと判断される。

5 まとめ
今回の調査結果から得られた知見を整理すると次のことが言える。
① 排水性舗装の残存透水率が30%程度を下回る路面では,機能回復作業を行っても有意な回復効果は期待できない(今回調査では,約半数程度の測点で回復作業後の現場透水量に回復効果が認められなかった)。
② したがって,機能回復を行う時期としては,残存透水率50%以上(現場透水量500~600cc/15s)がひとつの目安と言えそうである。
③ 排水機能低下の原因が主に空隙つぶれであれば,機能回復を行っても回復効果が期待できない場合がある。
④ 現場透水量と連続空隙率(コア供試体)の関係および現場透水量と透水係数(コア供試体の室内透水係数)との関係では,試験方法の相違やコア採取時の影響(タックコートによるコア底面の閉塞)などを受け,明確な相関は得られなかった。

6 機能回復機械
今回の機能回復調査に先立ち,建設省技術評価制度で認められた4社の機能回復機械について調査を行った。(平成9年8月調査)
吸引装置の基本的な原理は,いずれの機械も高圧水による洗浄とバキュームによる汚水吸引を組み合わせ,洗浄水を楯環させるタイプのものであった。そのほかには,吸引の効率を上げるため吸引装置に振動の付加や沿道環境への影響を少なくするために作業時の低騒音装置を付加するなどの工夫がなされているものもある。
現行の機能回復機械で改善点を強いて求めるとすれば,施工速度が遅いため回復作業には交通規制が必要なこと,あるいは定常的な施工を必要とする維持管理としてはでき得る限り施工コストの低廉化を図る,などである。まだ,機能回復の施工実績が浅いことでもあり,今後の施工実績を重ねることでさらに改良が加えられることを期待するものである。

7 おわりに
今回の調査では,排水機能の異なる工区の(H9.10月調査の回復前現場透水量は1,2工区:300cc/15s,4工区:700cc/15s程度)回復効果とその持続性について確認することも考えていたが,実際には,どの工区も300cc/15s程度以下であり,当初考えた計画といくぶん相違が見られやや偏ったデータが得られた。
今後は,今回調査の経験を踏まえて排水機能の異なる路線の機能回復など多面的な条件(回復効果,持続性,コストなど)の検証によるデータの蓄積を行う必要がある。

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