新・北九州空港は，福岡県の北九州・京築地域200万人の航空利便性の確保と同地域の活性化のため，周防灘沖合約３㎞の海上を埋め立てて建設された海上空港であり，平成18年3月16日に開港した。

新北九州空港連絡道路は，この新空港への唯一の連絡施設として整備された，新空港から東九州自動車道苅田北九州空港ICまでの延長約８㎞の道路である。このうち，橋長2,100mの海上連絡橋となる新北九州空港連絡橋と空港島内道路を合わせた延長約３㎞の部分が海上部，苅田北九州空港ICとの接続部と平面道路を合わせた延長約５㎞の部分が陸上部となる。（図ー１)

この道路は，空港・港湾・陸上交通を連結し，自動車産業をはじめとする周辺地域の産業を支える基幹的道路としての役割を担い，国内のみならず周辺アジア諸国との交流拠点となりうる新空港や東九州自動車道等との連携により，広域的な交流・交通ネットワークを形成し，地域の活性化に寄与するものと期待されている。

旧北九州空港は，三方を山に囲まれており，空港周辺まで市街化が進んでいるため，大型ジェット機に対応する滑走路拡張が困難な状況にある。これに代わる新北九州空港は，大型ジェット機が就航可能な2,500mの滑走路を持ち，空港圏域200万人の航空利便性は一挙に向上すると期待されている。

また，沖合約３㎞の海上に位置することから，航空機騒音の影響が少ないと考えられ，将来的には24時間就航が可能な空港と言える。

①設置管理者 国土交通大臣

②種別 第二種空港

③管理面積 約160ha

④滑走路 長さ2,500m，幅60m

⑤エプロン　大型ジェット機用2バース
中型ジェット機用2バース
小型ジェット機用4バース

新北九州空港連絡橋は，中央径間部に長さ400mの鋼モノコード式バランスドアーチ橋（写真一1)，側径間部に780m，920mの10，11径間連続鋼床版箱桁橋を有する全長2,100mの海上橋である（平成18年3月5日現在で通行料が無料の海上橋では日本一の長さ）。下部工は橋脚・橋台25基からなり，そのうち22基が海中基礎である。

図ー２に連絡橋一般図を示す。

連絡橋の計画にあたっては，空港に隣接することから上方を空域制限，船舶の通航路であることから下方を航路制限という制約を受けるほか，海底地盤は非常に軟弱で粘土層と砂層が交じり合う複雑な地盤への対応，また空の玄関口として景観への配慮を考慮して計画を行った。

構造性・経済性・施工性・景観等を比較検討の結果上部工について，中央径間部は日本初の橋梁形式となる鋼モノコード式バランスドアーチ橋を，また側径間部は鋼床版連続箱桁橋を採用し，下部工については，仮締め切りを兼用した鋼管矢板基礎を有するY型のRC橋脚を採用した。

基礎工設計においては，現位置での杭の支持力確認に経済的でかつ静的載荷試験に近い特性が得られるSTN（スタナミック）試験（図ー３)を実施し，支持層の選定と合理的な支持力算定式を考え，2本の実杭での載荷試験で確認した。この試験結果を実施設計に反映させた結果，深い岩盤まで杭を打ち込む必要がなく，その分コストを削減することができた。

上部工の架設については，海上架設となるためフローティングクレーンによる大ブロックー括架設工法を採用した。中央径間部は，セッティングビームを用いた落とし込み架設（写真一2)で行い，両側径間部は，モーメント連結工法で桁を添接し，フローティングクレーンは，シリーズ架設とした。

また，塗装は重防食仕様としてフッ素塗装を採用している。

下部工の施工については海上という構造物にとって過酷な環境下となるため，塩害対策として躯体表面をち密に構築すべく（塩水の躯体内への浸透を極力防止することを目的として）透水型枠（図－４）を使用，温度ひびわれ対策として感潮帯に保温型枠を使用し養生を行った。またコンクリートの配合には低発熱高炉セメントを使用し，アルカリ骨材反応の防止対策として高炉スラグの微粉末（置換率50％以上）を添加する方法を採用するなど，耐久性の向上を図っている。

新空港の開港に先立ち，連絡道路は平成18年3月5日に供用を開始した。

日本有数の工場が集積し，大きな発展の可能性を有する北九州・京築地域が，新空港の開港を契機にして更に大きく飛躍するものと期待されている。

最後に，連絡橋の建設にご尽力いただいた新北九州空港連絡橋設計施工委員会の先生方をはじめ，関係した方々にこの書面をお借りして厚く御礼申し上げるとともに，航空便数の大幅な増，安い駐車場料金（1日399円），便利な交通アクセスなど，ますます便利になる「新·北九州空港」を地元のみならず，全国，海外から福岡県にみえられる方々にぜひ利用していただきたい。