技術活用パイロット事業の実施状況
技術活用パイロット事業は,建設工事に係る新工法・新技術を公共事業において適用し,その現場適応性,効率性,安全性,経済性等を検証し普及を図るため,昭和62年度より実施している。
これまで17事業採択されており,本誌2号から順次掲載している。
今回は,特定の新工法・新技術に関するパイロット事業を全国的に展開する「特定技術活用パイロット事業」(技術活用パイロット事業のうち建設技術協議会において特定した技術を対象として統一的かつ重点的に行うもの)について紹介する。
1 平成3年度技術活用パイロット事業
(1)超早強コンクリートを用いたコンクリート舗装
実施工事事務所
大隅工事事務所
大隅工事事務所
1)技術の概要
コンクリートが硬化し,強度を発現するには長い時間が必要であり,このことがコンクリート施工の迅速化・合理化における工期短縮のボトルネックともなっている。実用的な施工性を有し,高い1日強度を有するようなコンクリートを開発することができれば,施工の短縮化や合理化になるばかりでなく,コンクリートの応用範囲が広がる可能性もある。
これまでも硬化の早いセメントは市販されていたが,硬化が早すぎて作業時間が確保できない等実用上の問題点を有していた。
このため,土研とセメントメーカー4社で共同研究を行い,以下のような性能を有する6種類の超早強コンクリートを開発した。
① 材令1日の圧縮強度で300kgf/cm2以上発現し,その後も安定した強度増進をする。
② コンクリートを練りまぜてから1時間以上の作業時間が得られる。
③ 耐久性等,他のコンクリートの性質は従来のコンクリートと同等以上。
なお,用途としては,舗装用コンクリート,シールドトンネル用ライニング,吹付けコンクリート,コンクリート工場製品があげられ,その他にも一般コンクリートの急速施工や硬化熱を利用した寒中施工等の応用も考えられる。
例えばRCCPは早期開放が期待されている構造物のひとつであるが,この超早強コンクリートを利用すると翌日には設計基準曲げ強度45kgf/cm2以上となり交通開放が可能となる。一般のコンクリート舗装やコンクリートオーバーレイ等も翌日開放が可能となり,超早強コンクリートの特性を活かせる構造物といえる。
【超早強セメントの種類とその特徴】
LDセメント:超早強セメント,アルミ天然鉱物,高性能減水剤
ODセメント:超早強コンクリート用セメント(高性能減水剤を事前混合)
SDセメント:特殊ポルトランドセメント(超早強性セメント),高性能減水剤
DD1セメント:カルシウムサルフェート系鉱物を主成分とする特殊高強度系混和材
早強セメントに5%混合,高性能減水剤を使用
早強セメントに5%混合,高性能減水剤を使用
DD2セメント:カルシウムアルミネート無機硫酸塩系特殊急硬性混和材
普通セメントに25%混合
普通セメントに25%混合
DD3セメント:スラグ系特殊セメント(高炉スラグ超微粉末),アルカリ刺激剤
(2)透水性舗装(排水型)
実施工事事務所
北九州工事事務所
長崎工事事務所
北九州工事事務所
長崎工事事務所
1)技術の概要
透水性舗装(排水型)とは,舗装路面の滞水による水はね防止や連続した水膜の除去による走行安全性の確保,更にはエンジン音やタイヤと路面の接触に起因する交通騒音を低減させる効果をねらった舗装である。
通常のアスファルト混合物は,合成粒度が連続であり,粒径の大きな骨材の間をそれよりも粒径の小さい骨材が埋めることにより,水を通さない緻密なものとなっている。これに対して,透水性舗装に用いられる透水性混合物は,中間粒径の骨材を極端に少なくすることにより,通常のアスファルト混合物よりも空隙率が大きく,透水性に富んだものである。
車道透水性舗装の舗装構成を下図に示す。
ここで,透水層とは透水性混合物で施工された層を意味し,不透水層とはそれ以外のほとんど水を通さないアスファルト混合物で施工された層を意味する。一般に車道部は路盤以外に浸水させると舗装の耐久性に影響があるため排水層の下に不透水層を設ける。一方,歩道部はこのような不透水層を設けないで路盤以下に浸水させる場合もある。
(3)雨天(夜間)時に視認できる区画線
実施工事事務所
北九州国道工事事務所
福岡国道工事事務所
佐賀国道工事事務所
北九州国道工事事務所
福岡国道工事事務所
佐賀国道工事事務所
1)技術の概要
従来の区画線における雨天の夜間時の視認性低下という問題点から,雨天(夜間)時でも視認性のよい区画線が望まれている。従来の区画線の視認性が低下する原因は,表面が水膜に覆われ前照灯の光線が拡散,吸収されて,再帰反射されないことであり,この問題点を解決するものとして,新しい区画線を開発した。これらをその特徴別に4種類に分類する。
a)突起の設置(図ー1)
区画線表面に突起を設置し,雨天時に突起を表面水から突出させることにより視認性を確保する。
区画線表面に突起を設置し,雨天時に突起を表面水から突出させることにより視認性を確保する。
b)特殊ガラスビーズの開発(図ー2)
従来のガラスビーズに加えて,特殊なガラスビーズ(核およびガラスビーズから構成,粒径大)を開発,表面散布することにより,表面水から突出する部分を作り,視認性を確保する。
従来のガラスビーズに加えて,特殊なガラスビーズ(核およびガラスビーズから構成,粒径大)を開発,表面散布することにより,表面水から突出する部分を作り,視認性を確保する。
c)ガラスビーズの改良(図ー3)
大粒径あるいは高屈折率のガラスビーズを開発,表面散布し,雨水からの突出,反射性能の向上により視認性を確保する。
大粒径あるいは高屈折率のガラスビーズを開発,表面散布し,雨水からの突出,反射性能の向上により視認性を確保する。
d)改良型貼付式シート(図ー4)
貼付式シートの表面の突起あるいは封入レンズ等により反射性能を向上し,視認性を確保する。
貼付式シートの表面の突起あるいは封入レンズ等により反射性能を向上し,視認性を確保する。
(4)ジオテキスタイルによる補強土工法
実施工事事務所
鹿児島国道工事事務所
鹿児島国道工事事務所
1)技術の概要
ジオテキスタイルとは,高分子系の材料を素材とした土木用繊維材料であり,その素材や形状,製造方法などにより各種のものがある。それらを大別すると,織布,不織布,ジオネット,ジオグリッドに分けられ,各ジオテキスタイルは各々引張強度の大きなもの,透水性の優れたものなど,材料特有の特徴を有している。
ジオテキスタイルを土構造物へ適用する場合の機能としては,補強,排水,ろ過,保護などの機能があるが,本工法はこのうち補強,排水の機能を利用して土構造物を築造する工法である。すなわち図ー1のように,盛土内にジオテキスタイルをある間隔毎に敷設し,ジオテキスタイルと土との間の摩擦抵抗により,盛土や土留め壁の安定性を向上させる工法である。この工法により,降雨や地震に対してより安定性の高い盛土を築造することが可能になると共に,用地幅の制限や山岳地などで,盛土のり面を急にしなければならない箇所でも図ー2に示すような急勾配な補強土壁を構築することも可能となる。また,図ー3に示すように透水性のジオテキスタイルを用いることにより,ジオテキスタイルの持つ排水機能により過剰間隙水圧を消散させ,高含水比粘性土等を高盛土することが可能となる。
施工方法は,盛土材のまき出し,締固め,ジオテキスタイルの敷設,のり面部の処理,次層の盛土材のまき出しという施工手順を繰り返すことにより特殊な機械を用いずに比較的容易に施工ができ,工期の短縮が可能となる。
特定パイロット事業では,本工法を適用方法の違いにより以下の2工法に分けて行うこととする。
① 盛土補強工法
のり面勾配が1割までの盛土を補強する工法であり,ジオテキスタイルの引張力による補強の他にも排水機能を用いた補強も対象とする。
のり面勾配が1割までの盛土を補強する工法であり,ジオテキスタイルの引張力による補強の他にも排水機能を用いた補強も対象とする。
② 補強土壁工法
のり面勾配が1割~垂直までの急勾配な盛土で,のり面工によりのり面部の保護を行った盛土を対象とする。
のり面勾配が1割~垂直までの急勾配な盛土で,のり面工によりのり面部の保護を行った盛土を対象とする。
(5)軟弱地盤上における柔構造樋管
実施工事事務所
武雄工事事務所
武雄工事事務所
1)技術の概要
軟弱地盤上に構築される樋門,樋管は,その機能を確保するために,従来基礎に支持杭を用いて沈下を生じさせない構造となっている。しかし,周辺地盤が沈下すると樋管と堤体との不同沈下によって,樋管下部に空洞が生じたり,あるいは堤体が緩んだりするために,構造物周辺の堤体の安全性に問題があった。
そこで,堤防のより高い安全性の確保のために,直接基礎で構築して沈下に対応できるフレキシブルな函体構造をもつ樋管が望ましいと考えられる。例えば,図ー1に示すように,コンクリート製カルバートではスパンを短くして変形による曲げ応力の増大に対応すると共に,継手形式を可撓継手にして函軸方向のたわみ性を確保するような構造が考えられる。また,継手の開きを防止するために必要に応じて函体をPC鋼棒で連絡することがある。さらに,図ー2に示すように鋼管を使用し,継手部分は,変形の追従のよいスチールベローズ継手を用いる樋管も考えられる。
いずれの構造も地盤の沈下にある程度追従できることから,直接基礎でも管体の破損や継手の開き等に充分対応し,樋管の機能を満足することができる。しかも,函体底面の空洞や堤体の緩みも生じないことから,堤体の水密性が図られ安全な堤防が築造できる。
また,プレキャスト製品の適用も可能であるので,施工の合理化,工期の短縮,工費の節減につながるものである。