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宮崎県市街地におけるバスレーンのカラー
排水性(低騒音)二層同時舗装の施工事例

建設省 宮崎工事事務所
 副所長
児 玉 孝 夫

1 はじめに
中心市街地がますます活性化し,発展するためには市街地が美しい景観を形成する等,魅力ある都市空間を創生し,人々が集まってくることが不可欠な条件となる。多くの人々が集まる市街地で現在最大の問題は交通渋滞であり,日常生活や経済活動に重大な影響を与えている。
この対策としては,バイパス・環状道路の整備,交差点改良等の交通容渥からの解消などハードな施策が有効であることは言うまでもない。しかしこの施策は,経済的・時間的な問題から,早急な推進が図れないのが実状である。
そこで,既設道路の利用の仕方に工夫を加えたり,生活の暮らしぶりを工夫することにより,都市の道路交通混雑を緩和する手法の体系である「交通需要マネージメント(TDM)施策」の推進が注目される。TDM施策には,時差出勤,フレックスタイムなどによる,ピーク時間に集中していた交通最の平滑化,パーク&ライド,シャトルバスによる相乗の推進等々があるが,バスレーンのカラー化も重要なTDM施策である。
すなわち,バスレーン舗装のカラー化は,バスレーン上の一般車両の駐車および進入を抑制し,バス交通の定時性確保,および利便性の向上を目的としており,このことによりバス利用者の増加によるマイカーの減少等,交通渋滞緩和に大きく貢献することが期待される。
また,バスレーンのカラー化が市街地の美観に大きく貢献することは周知の事実であり,メインロードの明示化として明確な道案内の役を目行う。
さらに,カラーバスレーンを排水性舗装とすることは,水はね防止を代表とする歩行者への配感,騒音低減を代表とする隣接住民等への配慮,すべり抵抗性や耐わだち掘れ性の増大等による交通安全,ドライバーヘの配慮を高める等,人に優しい道路となる。
今回,宮崎市中心市街地を形成する国道10号および国道220号(橘通り)において費用対効果を考慮した,バスレーンのカラー化(排水性二層同時舗装)工事を実施した。
ここにその概要を報告する。

2 必要とする条件および機能
バスレーンのカラー舗装の必要条件および機能としては主に次の4項目である。
2-1 耐流動性
バスレーンは交通量も多く,バスストップなどの制動荷重がかかることから耐流動性に優れていることが不可欠である。
2-2 識別性・美観
バスレーンの区別を明確にするには,色彩が識別性に優れ,周辺環境に適応した美観を有することが重要である。一般的に赤茶系の色が採用されている。
2-3 沿道環境
バスレーンを有する地域は,歩道等に人通りが多く,人家・会社など商業地域の建物の密集地であるため,沿道環境に優しい舗装が必要である。
2-4 走行安全性
都市部で信号機も多いため,雨天時や夜間の視認性やすべり抵抗性に優れ,平坦性が良く,スムーズな走行安全性を有していることが大切である。

3 カラー排水性混合物の特性
3-1 舗装種別
現在,カラー舗装にはいくつもの舗装があるが,バスレーンであることを考慮すると,次の3舗装が適当と思われる。
 ① カラー排水性舗装
 ② カラー半たわみ性舗装
 ③ カラーロールドアスファルト舗装
本現場は宮崎市の中心部に位置し,沿道には,県庁・デパート・繁華街など,県内で最も人・車とも集中する地区である。
そこで,バスレーンのカラー化のみならず,雨天時の視認性向上,歩道への水はね防止効果および騒音低減効果が期待できる脱色バインダで有色骨材を使用した「カラー排水性舗装」を採用した。

3-2 有色骨材および顔料の選定
色彩はワインカラー等の赤茶系統とすることが望ましいことから,表ー1に示す選定したワインカラー系の有色骨材2種のうち,性状が良く(低吸水率.比重大)均一で大量に産出(安定供給)可能な北海道浜頓別産の有色骨材を使用した。
また併用として顔料を使用し,耐久性を考慮し,その骨材と同色のものとした。

3-3 有色骨材の配合割合
一般的にカラー排水性舗装は,骨材間隙のモルタル分が非常に少ないため退色しやすく,有色骨材の配合割合は耐退色性に大きく影響する。
しかし,有色骨材の使用はコストが増大することから,これまで多くは30%程度の使用に留まっていた。
そこで本工事では,騒音低減効果をはかる目的から,排水性舗装を50㎜とし,図ー2に示すように高価な有色骨材(混合比50%)を上半分25㎜,下半分には通常の排水性舗装25㎜の構造で,2層同時に舗設するデュアルアスファルトペーブメント工法を採用した。
本工法を採用することにより,2種類の混合物を1層で施工することとなり,大幅なコストの縮減が可能となった。

3-4 カラー排水性混合物の配合および性状
有色骨材の配合割合に当たっては,配合率30~60%の供試体を作成して検討した結果,有色骨材50%,石粉分は顔料と消石灰を等分で使用し,目標空隙率20%を確保できるように設定した。なお,通常の骨材については,有色骨材と同様な選定基準に基づき,比重が大きな骨材を使用した。
カラー排水性混合物の特性値を表ー2に示す。

4 デュアルアスファルトペーブメント工法
4-1 工法の概要
本工法は,マルチアスファルトペーバを用いて2種類のアスファルト混合物を上下同時に重ねて敷きならす工法である。主な特長を以下に示す。
① 通常の施工では,1層の最小施工厚は骨材最大粒径の2.5~3倍程度であるが,本工法では2層同時に敷きならすことで1層あたりの最小施工厚を骨材最大粒径の1.5~2倍まで減らすことができる。
② 高価な材料を使用したアスファルト混合物を薄層で施工することにより,通常の舗装に比べてコストの低減を図ることができる。

4-2 マルチアスファルトペーバの機能
マルチアスファルトペーバの機能を下記に記す。
① 2種類のアスファルト混合物を同時に敷きならして連続施工を可能とするため,大型ダンプ1台分(10t)以上の合材を積載できる2つのホッパを有している。
② 2層同時敷きならしを円滑にするために4つのクローラを有し,かつ前部のクローラは左右に旋回できる機構になっている。
③ レベリングアームが通常の1.5倍程度の長さであり,より平坦で均一な敷きならしができるようになっている。
マルチアスファルトペーバの主要諸元は表ー3,機構図は図ー3に示すとおりである。

5 施工後の仕上がり状況
本工法での仕上がり状況は,表ー4に示すとおりである。厚さ測定においては全厚(50㎜)に対しての測定値を記入し,上下層(設計値各25㎜)に対しては記入していないが,平均値で上層+1.2㎜,下層+2.1㎜の測定値を得ている。
また,締固め度および平坦性等もすべて基準値を満足しており,出来形・品質・景観ともに良好な結果であった。

6 コスト縮減内容
今回の施工に対するデュアルアスファルトペープメント工法と従来型工法(1層仕上げ)のコスト比較を表ー5に示す。
比較の結果,デュアルアスファルトペープメント工法では2種類の合材を使用することによって,高価なカラー排水性合材の使用量が減ったため,コストの縮減がみられた。

7 施工前後の騒音の比較
今回工事では,環境影響の改善を図る目的もあり,騒音低減機能を有する排水性舗装で施工したため,着工前・完成後に道路交通騒音(LAeq)を測定した。図ー4および表ー6にその結果を示す。
施工前に対し施工後では,3db~5db(平均値)の騒音の低減があり,環境基準に対しても碁準を下回る結果が得られた。

8 まとめと今後の課類
本工事では,バスレーンにおけるカラー排水性舗装をデュアルアスファルトペーブメント工法により施工した。その結果,以下に示すことが確認できた。
① 2層同時施工により,従来工法の約60%の低コストでカラー排水性舗装を施工することができた。
② 施工前に比べて,施工直後で3~5dBの道路交通騒音が低減できた。
③ 街並みにそぐう景観が確保でき,魅力ある空間となった。
その一方で,今後,以下に示す課題について検討が必要であると考えられる。
① 施工機械が大型(25t程度)であり,適用場所が限定されるため,小型化の検討が望まれる。
② マンホール等がある場合,下層スクリードが接触し2層同時施工ができないため,人孔鉄蓋後付工法(エポ工法)との併用など,合理的な施工方法の検討が望まれる。
③ 2機のプラントを同時に使用するため,特に冬場においては,各合材の温度などの徹底した管理をする必要がある。

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