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被災の大きかった山間部の町村における災害査定等の対応について
~令和4年9月の台風第14号豪雨による被災を受けて~

宮崎県 県土整備部
河川課 主査
福 里 圭 介

キーワード:台風第14号、早期確認型査定

1.はじめに
全国トップクラスの日照時間、快晴日数など、天から大きな恵みを受ける「日本のひなた宮崎県」は、暖かい黒潮のおかげもあり温暖な気候に恵まれ、スポーツのキャンプ地に適し、農業も盛んなところです。
しかしながら夏から秋にかけては、毎年のように台風が接近し、それに伴う暴風雨により度々災害が発生しています。
令和4年9月に、非常に強い勢力で本県に接近した台風第14号では、県内各地で浸水被害や土砂災害が発生し、死者3名、住家被害は約1,600棟にのぼり、農業等にも多大な被害をもたらしました。
この災害により、犠牲となられました方々に対しまして、謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。

図 令和4年9月の台風第14号に伴う被害

今回の台風災害に際し、国土交通省におかれては、内水排除のための排水ポンプ車の配備、防災ヘリによる上空からの調査、災害査定官やTECFORCEの派遣、国土技術政策総合研究所による調査など、緊急的に対応していただきました。また、国道327号(諸塚村)の被災箇所については、早期の通行止め解消を図るため、本県の災害復旧事業では初めて、国の権限代行により仮橋による応急工事を実施していただくこととなりました。この場を借りて心から感謝を申し上げます。

2.降雨の概要と被害の状況
令和4年9月14日に小笠原近海で発生した台風第14号は、大型で非常に強い勢力を維持しながら九州に接近し、18日19時頃に中心気圧935hPaの非常に強い勢力で鹿児島市付近に上陸、18日22時頃に本県に最接近し、19日朝にかけ九州を縦断しました。
県では、9月17日に災害対策本部を設置し、全市町村に対して災害が発生する恐れのある段階から災害救助法を適用するなど、早期の対応に努めました。また、県内30ダムで事前放流を実施し、このうち県管理ダムでは13ダムで通常の洪水調節容量に加え、約2千6百万m3の容量を追加確保し、洪水に備えました。
台風に伴う豪雨は、9月15日より降り始め、複数地点で総雨量500mmを超えました。特に県北部の山間部では線状降水帯が2度確認され、宮崎地方気象台の資料によりますと、西米良村、椎葉村、日之影町において24時間雨量が500mmを超え、統計開始からの最大値を更新する大雨となりました。
9月18日の午後から19日にかけ宮崎地方気象台より大雨特別警報が15市町村に発令され、県内全ての市町村で避難指示が発令されたほか、16市町村で緊急安全確保が発令され、ピーク時には6,298 世帯11,985 人の住民が避難所などへ避難をしておりました。
土石流が13箇所、がけ崩れが51箇所で発生、県管理道路の通行止めはピーク時に83 路線122区間に達し、集落の孤立や停電、断水が発生しました。道路の啓開や仮復旧に伴い、停電等は順次解消されていきましたが、冒頭にも触れました国道327号の道路崩壊は、通行止めが長期にわたり、地域の生活や産業に大きな影響を与えました。
記録的な豪雨により県管理の洪水予報河川・水位周知河川35河川48箇所の水防基準点うち、20河川27箇所で氾濫危険水位を超過し、5ダムで異常洪水時防災操作を実施する事態となりました。堤防の決壊等は発生しませんでしたが、県内全体で浸水を含む家屋の被害は、全壊・半壊・一部損壊395棟、床上浸水634棟、床下浸水529棟、合計1,558棟に達しました。

3.河川等の被災状況
被害が広範囲におよび、交通途絶等により調査に時間を要することが想定されたため、発災直後から、国や測量設計業協会の協力を仰ぎ、被災状況の把握に努めました。
県と市町村が管理する公共土木施設においては、河川災害箇所が373箇所、砂防関係6箇所、道路関係997箇所、港湾関係6箇所、公園関係3箇所、下水道関係3箇所の合計1,388箇所で被害が確認され、被害額は約347億円に達しました。

表 令和4年台風14号 災害件数

4.本復旧に向けた取組
令和4年9月24日に谷内閣府特命担当大臣(防災)、25日には寺田総務大臣が被災現場を視察され、10月13日には、衆議院災害対策特別委員会(委員長:江藤拓衆議院議員)による現地視察が行われ、11月2日に台風第14号の暴風雨等による災害については、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」に基づく激甚災害に指定されました。災害復旧事業の国庫補助率の嵩上げ等の措置により、復旧が加速するものと期待しております。

写真 台風第14号被災地視察に係る衆議院災害対策特別委員会との県庁での意見交換

復旧に向けた本県独自の取組として、特に被害の大きかった県北部の山間部7 つの町村に、大規模災害の応援チーム派遣制度(平成22年策定)を活用し、県から職員派遣を行い発災直後の被害状況調査、災害査定に向けた資料作成及び災害査定応援などの支援をしたところです。
今回の台風による被害箇所が約1,500箇所あることから、早期復旧に向け公共土木施設の災害査定について国と調整を行い、11月に3班、12月に21班、1月に13班、2月に3班の災害査定班を編制していただきました。
また、通常の査定とは別に、椎葉村と美郷町において、早期確認型査定(2段階査定)を実施していただきました。
査定が完了した箇所から順次、復旧工事を進めることとしています。

5.おわりに
本県では、17年前の平成17年9月に今回と同様の進路で来襲した台風第14号により、死者13名、家屋被害約9,000棟、公共土木施設の被害約2,900箇所に上る甚大な風水災害が発生したことを契機に、様々な治水対策に取り組んできました。被害が特に大きかった大谷川などでは、河川激甚災害対策特別緊急事業で緊急的に改修を実施しました。その他の河川においては、地域の状況に応じ、堤防整備等の河川改修に加え、輪中堤や宅地嵩上げによる治水対策を進めてきました。河川に流入する土砂が、洪水被害の要因であった二級河川耳川においては、関係機関と連携し総合土砂管理に取り組んできたところです。平成30年度からは、国土強靱化対策として河川掘削を進め、国土強靱化のための3か年緊急対策により158河川で約200万m3の掘削を実施してまいりました。
また、大規模災害発生時の速やかな復興を実現するため、(一社)宮崎県建設業協会等の団体と平成18年に応急対策業務等に関する協定を締結し、毎年出水期前に、連携を確認するための会議と訓練を実施しています。 
今回の台風では、平成17年の台風第14号に匹敵する大雨となりましたが、その時の水害と比べると、多くの河川で水位の上昇を抑えられ、浸水家屋数が約4,400棟から約1,200棟と減少するなど、国土強靱化対策などこれまでの取組による効果が一定程度発揮されたと感じたところです。

表 宮崎県内の家屋被災状況

しかしながら、私が、発災直後から視察した県内の状況は大変厳しいものであり、県内各所で甚大な被害が発生したことを改めて実感しました。
被災された県民の皆様の生活再建と地域の復旧・復興が一日でも早く進むよう、引き続き、国や市町村、関係機関・団体と連携しながら公共施設の早期復旧と県土の強靱化に、全力で取り組んでまいります。

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