建設技術開発の現況と今後の展開
建設省九州技術事務所
建設専門官
建設専門官
一 瀬 恭 之
1 九州建設技術開発会議の動向
当会議は近年の社会の潮流の変化,国民の意識とニーズ,建設をめぐる情勢の変化の課題を的確にとらえ,九州における建設関連業界(12団体)と建設行政部局(地建,7県,福岡,北九州の政令2市)を結集し技術開発に向けたニーズの集約や開発・普及に向けた取り組み等全般について意見交換や協議等を行なう会議として平成4年2月に発足した(図ー1)。
その活動事項としては,
① 建設技術開発・普及に関する情報
② 建設技術開発・普及に関する推進方策
③ 建設技術開発・普及に関するニーズ・シーズの掘り起こし
④ 建設技術開発・普及に関する広報活動
⑤ その他建設技術開発・普及に関し必要な事項としている。
当会議の取り組みはまさにこれからであるが,当面部会等で議論を交わして行く検討方針としては,各部会毎に下記のように提案されており,既にコンクリート製品開発部会においては具体的な製品の開発を行なっている。尚,他の部会については今後活動予定である。
(1)コンクリート製品開発部会
汎用性の広いコンクリート製品の大型化,長尺化軽量化,省現場施工化等の検討開発を行い規格,技術基準なども含め検討していく。
(2)遠隔操縦・自動作業建設機械開発部会
危険地域での建設機械作業を離れた安全な場所から遠隔操作により行なうと共に自動作業も可能なシステムとしての開発を検討。
(3)汎用機械開発部会
① 多目的汎用性機械
バックホウのような多目的な利用に適しやすい機械の機能や仕様について開発イメージを検討し開発を行なっていく。
② 軽作業用小型汎用性機械
小規模な掘削や運搬,転圧,杭打等の汎用的な軽作業を行なう小型多目的機械について開発検討。
(4)路盤締固度の自動測定機械(システム)開発部会
技術管理業務で全国的にRI計器を用いた締固め管理の現場検証を行なっているが,地盤の締固め管理作業の簡素化を図るためのシステム開発。
2 建設技術情報(新技術・新工法)収集状況
「九州建設技術開発会議」の発足を受けて事務局となっている九州地方建設局においてはこれらを強力に推進するため「いきいき九州推進プラン:略称V-PLAN」の主旨を踏まえつつ,九州地方建設局および各事務所に「技術開発推進室」を設置し民間が開発した新技術・新工法の提案や相談を受ける窓口を設け,申請を頂いた技術情報は登録され,九州建設技術開発会議の委員に送付するとともにマスコミを通じ広く紹介している。また,地建内においては局,各事務所に早く情報を提供する方法としては第一報として「新技術だより」を週1回,および第二報として申請内容を全て年2回に分け送付している。
最終的に1年分まとまった段階で「新しい建設技術」として初回はVol1を平成5年11月㈳技術管理協会より,約1,500部発行している。
申請された新技術・新工法の分類方法は各地建によって違っているが九州地建においては「土木工事標準積算基準書」との横並びと照合・検索のしやすさを意識し,完全とは言えないが合わせることにした(編ー大分類,章ー中分類,節ー小分類)。
平成4年度中に申請頂いた件数は273件で工種に分けると表ー1のとおりである。
発行後,約1年を経過しその活用状況について各事務所の意見を聴くと,十分とは云いがたいが存在については63.4%が知っており,今後「技術開発推進室」の活性化を計りたい。
現在平成5年度版(Vol2)を編集中(平成6年7月1日発行予定)であるが,申請件数が少なく150件程度になるが合わせると423件の技術量となる。また,九州地建においては技術力の向上(技術情報知識の向上)を図りながらパイロット事業等に申請された「新しい建設技術」の中から優れている技術を取り入れるのに必要な特徴等,九州を6ブロックに分け「新技術・新工法等」説明会を開催し申請会社のエキスパートから説明を受けている。なお平成5年度の実績は工法で19件,出席者数540名であった。
技術開発は時代を変えるとまで云われる。目前に来ている21世紀に向けての大きな遺産(社会資本整備)造りは技術開発しかないと云っても過言ではないであろう。
辛抱強く必要性を機会ある毎アピールし民間技術の掘り起こしを行い,①「維持管理・更新のための技術」,②「省エネルギー化技術(リサイクルを含む)」,③「施工現場の無人化・省人化技術」を見い出し,確立に努力を続けていきたい。
3 これまでの技術開発の点検と今後の展開
世の中を変えることが出来るのが「技術」である。
「技術」こそが社会の様態,人の気持ちや物の考え方を良くも悪くも変えることが出来るという認識は,今日の我が国の経済成長と豊かな生活の実現の原動力の一つが,建設技術においてそれぞれの立場でその使命を果たすべく日夜忙しく努力し勉強している人々の雰囲気の中に,ひところのような「情熱」が薄れつつあるのではないかという危惧が指摘されている。昨今の技術開発推進主体である民間企画の開発成果の適用方法,すなわち「いかす道」について,特に公共事業への適用に関する運営方法を見直すことは技術開発に対するインセンティブを活性化するために重要なことと云える。
そこで建設省においては開発された新技術を現場で活用する「技術活用パイロット事業」を昭和62年度から実施し逐次制度を拡充してきている。さらに平成5年度より現場での確認が必要な新技術に対し,試験フィールドを提供し,その検証を行う「試験フィールド制度」を実施している。
九州地方建設局がこれまで行って来た技術活用パイロット事業等,実施状況を表ー2に示す。
表ー2のとおり平成4年度から現場においても技術開発の認識が高まっているものの,課題毎の施工件数が少なく追跡調査を終え,とりまとめの段階で課題の内容によってはバラツキが大きく,とりまとめおよび総合評価が出来ず先送りせざるを得ない。また,歩掛調査も並行して行っており計画として3年目には標準化に移行する考えでいるが,先送りする課題が増大し現状では新技術への取組みが出来ない状況になると思われる。
現場におかれては通常業務の執行で手一杯と思われるが,パイロット事業の制度を再度認識して頂き新たに取り組んで頂きたい。必要あらば何事においても九州技術事務所において支援することは惜しまないので気軽にご一報いただきたい。