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延岡工事事務所の事業紹介

建設省 延岡工事事務所
 所長
藤 並 之 生

1 はじめに
延岡工事事務所の管内地域は,宮崎県の北部に位置する延岡市,日向市の外5町8村である。
当地域は,旭化成を中心に工業都市として発展した延岡市,および細島港を中心に各企業が進出している日向市を中心に発展している。また,西部山岳地帯では,豊富な森林資源や観光資源を活かした地域づくりを進めている。一方,高速交通ネットワークの整備が不十分であるうえ,主要産業の低迷等から人口の減少を招くなど大きな課題が顕在しつつある。
このような状況の中,災害に強い河川の整備,低迷する産業および観光を支援するための交通網,特に高速道路の整備が強く求められており,延岡工事事務所では河川事業として一級水系五ヶ瀬川,支川北川の改修,道路事業として国道10号延岡道路,門川日向拡幅,国道218号北方延岡道路,高千穂バイパス,国道10号維持管理等の事業を進め,九州横断自動車道延岡線については調査の推進を図っている。

2 河川関係
(1)五ヶ瀬川の概要について
五ヶ瀬川は流域面積では九州で4番目に大きい大分県,熊本県,宮崎県の3県にまたがる河川である。
河川の計画規模は,比較的小さく,近年数度の大きな出水は,その計画の見直しが急務であることを教えてくれている。河川整備方針,整備計画策定の中でこれらの件について検討中であり,その状況について述べるとともに,併せて平成9年の出水により発生した災害の対応として北川激特事業,平成11年度から行っている床上浸水対策緊急事業等,河川事業として実施しているものについて以下にとりまとめる。

(2)五ヶ瀬川技術検討会
五ヶ瀬川の現計画は,治水安全度1/60(相当),対象流量6,000m3/sとなっているが,近年の発生洪水はこの洪水を大きく上回るものであった。このことから早急な改修計画の見直しが必要となっているが,治水安全度,および対象流量の決定には,流域状況,河道特性の点において大きな課題を抱えている。
そのため,これらを解決するため,専門家,地元行政からなる技術検討会を立ち上げ,対策(案)を踏まえた計画見直しに取り組んでいる。

(3)五ヶ瀬川アユ調査
五ヶ瀬川の派川大瀬川は,アユで有名な川で,落アユの時期には,全川を締切るヤナが建設され,市の名物となっている。しかし,現在の流下能力は現行計画の7割近くしかなく,大幅な河床掘削を含めた何らかの対策が必要な河川で,特に現計画の見直しによる流量改訂が実施されればその必要性はますます大きくなる。
しかし,当河川は水産資源保護法の指定を受けており,改修工事には解決すべき多くの課題が予想される。そこで漁協と大学の専門家を交えた調査を行い,アユの遡上,産卵,流下の実態把握を行っている。
 ※低水検討,整備計画の基礎資料とするため

(4)五ヶ瀬川危機管理検討会
治水安全度が低いこと,近年異常出水が多く発生していること,河川の氾濫域内に行政の中心が存することなど,大きな出水を受けたとき,都市機能の停止が想定されることから,市民の危機管理に対する日頃の心構えは重要となってくる。
これらより,市民代表,マスコミ,ライフライン,地元大学,水防関係者と入れた当検討会を設置し,具体的対応マニュアルの作成に取り組んでいる。

(5)北川激特事業
平成9年の未曽有の出水では,当河川の改修計画量4,000m3/sを大きく上回る5,000m3/sの流量が流れ,流域の市町に大きな災害をもたらした。その復旧を急ぐため,河川激甚災害を申請し平成9~13年度までの事業期間で県区間,直轄区間の工事を進めており,現在70%の完成をみている。当事業も残り一年半となり,現在最盛期を迎え安全に留意し工事に取り組んでいる。
① 北川モニタリング委員会
河川法改正後の最初の大規模改修事業ということで,環境に配慮した川づくりに,検討会を設置し取り組んだところであるが,その後の工事の進捗に合わせ,当初計画との整合を図るための追跡調査を実施している。この計画,調査手法等に対してのアドバイス,評価検討を行うことを目的として,当初設置した川づくり検討会を基にしたモニタリング委員会を立ち上げ,当初の構想が川づくりにどのように生かされているのかについて当会によりフォローアップを行っている。
② 河川学習館
北川の川づくりで,河川環境に関する各種の調査と,別途河川生態学術研究会の対象河川として河川生態の調査が行われており,その結果を公表する場,また河川学習の場として河川学習館の建設を行っている。

(6)床上浸水対策事業
五ヶ瀬川左岸部の古川地区の内水排除を目的として平成11~15年度までの5ヶ年計画で取り組んでいる事業で,今年度は,既設樋管の付替が必要となり,施工中の交通対策や川表側に切り回しが出てくることによる出水対策が重点課題となり,安全面に充分配慮した工事計画の立案が必要である。

(7)水辺プラザ事業
延岡市が計画し取り組んでいる河川堤防を利用した市民ランニングロードを支援する目的と,建設省が川に親しんでもらうための施策を実施するため,大瀬川沿いに水辺プラザ事業を計画した。
現在は工事実施中であるが,当事業で行う内容は,環境護岸,緩勾配坂路,水辺の修景となっており,早期完成を市民から大いに期待されている。

3 道路関係
(1)一般国道10号延岡道路
延岡道路は,東臼杵郡北川町大字長井を起点とし,延岡市の西部地域を環状し,同市伊形町に至る延長20.2kmの自動車専用道路である。本道路は,延岡市街地の交通混雑の緩和と交通安全の確保を目的とし,将来は東九州自動車道,北方延岡道路,九州横断自動車道延岡線と一体となって高速広域交通ネットワークを形成し,産業や経済の発展,文化交流等,地域の開発促進,活性化に大きく寄与するものである。
平成6年度に事業化し,平成10年度より延岡JCT・ICから延岡南IC間延長7.8kmの工事に着手しており,4橋梁のうち1橋は既に完成し,残る3橋についても施工中である。また6トンネルのうち4トンネルについて,工事の進捗を見ている。今後は,同区間の工事促進を図るとともに,北川ICから延岡JCT・IC間延長12.4kmについても早期工事着手を目標に,調査設計,用地買収促進に努めている。

(2)一般国道218号北方延岡道路
北方延岡道路は,東臼杵郡北方町大字蔵田を起点とし,延岡市天下町で延岡JCT・ICに至る延長11.0kmの自動車専用道路で,一般国道218号の代替道路として,災害に強く,安全性・信頼性の高い機能確保を目的として計画し,先の延岡道路等と一体となって機能する道路である。
本道路は,平成8年度に事業化し,平成11年度から北方ICから延岡JCT・IC間延長8.5kmの用地買収に着手し,設計協議,用地買収を精力的に進め,近々の工事着手を目指している。

(3)九州横断自動車道延岡線(高千穂~北方)
九州横断自動車道延岡線は,熊本市から延岡市に至る延長95kmの国土開発幹線自動車道であり,現在,御船から矢部間延長23kmについては平成10年度に日本道路公団に施工命令が出されているが,残る矢部から延岡間延長72kmについては,基本計画区間である。
当事務所では,本年度より高千穂から北方間延長29kmについて環境影響評価の手続きに着手したところであり,整備区間指定に向けて,鋭意,調査の推進を図っている。

(4)一般国道10号門川日向拡幅
門川日向拡幅は,一般国道10号の渋滞解消を目的とした延長12.8kmの現道拡幅事業である。昭和45年度に事業化し,現在までに8.7kmを供用している。現在は,日向市原町地区の2車線区間の改築,および日向市新生町から同市大字平岩間延長3.0kmの調査設計・用地買収の促進に努めている。

(5)一般国道218号高千穂バイパス
高千穂バイパスは全国的にも神楽や天孫降臨の里として有名な高千穂の国道218号の溢路区間の解消,観光交通に伴う渋滞の解消を目的として,現国道の北側を迂回し高千穂町押方から同町三田井に至る延長4.7kmの一次改築事業である。

昭和57年度に事業化し,現在までに3.1km完成供用しており,平成10年度から新高千穂大橋(仮称)〔L=300mRC(鉄筋コンクリート)逆ランガーアーチ橋〕の工事に着手し,平成14年度供用を目標に鋭意工事を進めている。

(6)交通対策,維持修繕
当事務所では,安全で円滑な交通の確保を目指し,幅広歩道,バリアフリー化,交差点改良,付加車線の整備等を行っている。また,管理の高度化を目指し,光ファイバー敷設のための情報BOXの整備,岩盤斜面や冠水予想箇所にCCTV等の設置を進めている。電線共同溝についても安全で快適な都市空間形成のために,平成13年度より延岡バイパスに整備予定である。
一方,増大する交通量に伴う騒音対策のため,沿道環境改善事業による低騒音舗装の整備,震災対策として橋梁等の点検,補強を積極的に行っている。

4 おわりに
宮崎県北地域においては,山間部での過疎化進行は深刻であり,市街地部でも産業の低迷が続き,一部工場の閉鎖など明るい話題が少ない中,社会資本整備に対する地元の期待は大きい。私共,延岡工事事務所としましては新たにスタートする国土交通省の一員として,なお一層の碁盤整備に努めて参りたいと思っておりますので,今後ともご理解,ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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