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川辺川ダム事業について

建設省 川辺川工事事務所
 所長
金 尾 健 司

1 はじめに
球磨川流域では,過去400年間に100回以上もの洪水が起きている。その中でも昭和40年7月3日の洪水では,死者6名,家屋の損壊・流出1,281戸,床上浸水2,751戸と非常に多くの被害を受けた。このため,熊本県知事,人吉市長をはじめとした地元からの要望や政府の災害調査団の調査結果を踏まえ,昭和41年に川辺川ダムの建設を盛り込んだ治水計画が策定された。その後,球磨川の河川改修事業とともに川辺川ダム建設事業を進めている。

2 ダム事業の概要
(1)経緯
川辺川ダム建設事業は,昭和41年に計画を発表後,昭和42年度から実施計画調査に着手した。昭和51年に特定多目的ダム法に基づく基本計画を策定,平成2年に全ての水没住民団体と損失補償基準の締結を完了した。平成8年8月には,川辺川ダム事業審議委員会より「川辺川ダム事業は継続して実施することが妥当である」との答申を頂き,現在,ダム本体工事着工を控え,球磨川漁業協同組合との漁業補償交渉を進めているところである。
(2)事業の目的等
川辺川ダムは,球磨川の最大支川である川辺川に建設されるアーチ式コンクリートダムで,洪水調節,河川環境の保全・舟運のための流量確保,かんがい,発電の4つの目的をもつ多目的ダムである。

(3)事業の進捗状況
本事業では,現在,代替地の造成,付替道路の工事等を鋭意促進している。平成11年度末時点で,代替地の造成に関しては,全体の8箇所のうち7箇所が完成しており,最大規模の頭地代替地についても92%(土工量ベース)の完成をみている。
付替道路の工事については,全体延長のうち約71%の区間が完了しており,付替国道445号については,平成13年春に頭地代替地まで供用開始できるよう工事を進めている。
また,平成11年7月には,ダム本体部分の川の流れを迂回させるための仮排水路トンネルが完成している。

3 川辺川ダム事業における環境保全ヘの取り組み
川辺川ダムの湛水予定地やその下流地域は,豊かな自然を有していることから自然環境に十分配慮したダムづくりが必要である。このため,昭和51年度より湛水予定区域とその周辺区域などにおける動植物の生息・生育環境,水環境等の調査,保全対策の検討を継続的に行っている。特にクマタ力や九折瀬洞つづらせどうについては,専門家からなる検討会を設置し,指導を受けながら詳細な調査,保全対策の検討を行っている。
これらの取り組みについては,平成12年6月に「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」としてとりまとめ公表している。
今後とも,各分野の専門家の指導を受けながら,調査およびモニタリングを行い,その結果を公表していくとともに,自然環境に十分配慮したダムづくりを推進していく。

4 川辺川ダム事業におけるアカウンタビリティについて
川辺川ダム事業については,これまでも地域の要望や意見を踏まえつつ進めているところであり,事業に対する疑問をお持ちの方々に対し,多様な方法で事業の必要性や現状等を説明するなど,アカウンタビリティの向上に努めている。
(1)ダム事業説明会
球磨川流域の住民の方々に川辺川ダムの実施状況等について説明し,事業についてご意見をいただくため,毎年開催している。
(2)ホームページの開設
広報活動の一環として,インターネットのホームページを平成11年3月に開設し,幅広く情報発信を行うとともに,ご意見を伺っている。
(3)頭地資料室「やませみ」の整備
川辺川ダム建設事業の紹介および五木村の村づくりと情報発信の拠点として,平成8年11月に五木村の頭地集落内に設置した。川辺川ダムに関するパネルや頭地代替地の模型などを展示しダム事業を紹介するとともに,これまでに公表した資料の閲覧を実施している。
(4)資料の作成,配布
事業に対するご理解,ご協力を得るため,ダム事業について説明した資料や新聞の折込チラシなどを作成し,流域の方々に配布を行っている。

5 おわりに
川辺川ダムは,球磨川流域の人々の生活を洪水による被害から守り,また,地域の発展に欠くことのできない水資源を確保するなど,当地の社会・経済を支える上で多大な効果がある。

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