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平成20年度大規模津波防災総合訓練について
九州地方整備局 足立辰夫
1 はじめに

10月19日(日)宮崎市宮崎港と宮崎県沿岸の11市町において今後30年間に南海地震が発生する確率は50%程度、東南海地震は60~70%程度の確率で発生するといわれており、紀伊半島から四国、九州に至る広範囲において甚大な被害が出ると想定されています。これらの地震津波による被害の軽減を目指して、「大規模津波防災総合訓練」を国土交通副大臣はじめ国や県、市、関係機関、地域住民の参加のもと実施しました。


加納国土交通副大臣の挨拶

この訓練は、平成16年12月のスマトラ島沖大地震に伴うインド洋津波災害を踏まえてスタートした実践型の防災訓練で、中央防災会議の平成20年度総合防災訓練大綱に位置づけられており、平成17年度の和歌山県御坊市、平成18年度の徳島県小松島市、平成19年度の宮城県気仙沼市についで4回目となるものです。
訓練は、午前9時に和歌山県南方沖でマグニチュード8.6の地震が発生し、宮崎県では最大震度6弱、宮崎県沿岸に津波警報「大津波」が発表されたとの想定で、住民の避難訓練、地震津波情報の収集・伝達、漂流者救助・救急、応急復旧、物資輸送訓練等を沿岸地域住民と防災関係団体・機関が協力、連携し実施されました。


宮崎大学村上准教授による解説

2 訓練の概要
 ① 日 時   平成20年10月19日9時~12時
 ② 場 所   メイン会場 宮崎市宮崎港東地区13岸壁
        サテライト会場 宮崎県沿岸9市町
 ③ 主 催   国土交通省
 ④ 協 賛   内閣府
 ⑤ 後 援  公益法人等 18機関
 ⑥ 訓練参加機関     76機関
 ⑦ 規 模   約3万1千人参加
        (情報伝達・避難訓練に参加した住民含む)
 ⑧ その他   訓練の解説を宮崎大学工学部土木環境工学科の
        村上啓介准教授からいただきました。

3 訓練の想定

●訓練で想定した地震・津波の規模
 ① 海溝型地震の発生(和歌山県南方沖)
   9:00 地震発生、緊急地震速報発表
   9:02 震度速報発表
   9:03 津波警報(大津波)発表
   9:42 津波警報(大津波)解除
 ② 震 源 和歌山県南方沖(深さ約10㎞)
 ③ マグニチュード 8.6
 ④ 震 度 宮崎県北部平野部で震度6弱
         宮崎県南部平野部で震度5強
 ⑤ 津波高 宮崎県沿岸に最大高さ6m
 ⑥ 津波到達(地震発生後)第一波到達:20分後
                 最大津波到達:40分後

4 訓練のテーマ

訓練実施にあたってテーマ「広域連携の強化及び住民の意識向上・啓発」を掲げ、3つの実施テーマを設けました。
 ① 迅速な情報伝達
 ② 迅速な避難
 ③ 迅速な救助・復旧
 この訓練を通して地域の住民の方々に学んでいただきたいことは、「自助」「共助」「公助」の役割を理解していただくこと。また、行政などの公的機関では、津波防災対策の更なる充実、関係機関との連携強化を図るものです。

5 訓練内容

●メイン会場
① 災害時、援護を必要とする人々が参加した避難訓練


要援護者の避難誘導訓練

② TEC-FORCEの活動訓練
  (先遣班、現地支援班、被災状況調査班等)


TEC-FORCE隊による現地対策本部設営訓練

③ ヘリコプター、船舶、水上バイク隊による漂 流者の救助訓練
  (宮崎県警、宮崎市消防団、第十管海上保安本部)

④ 報道機関(テレビ局等)が自主的に取材、リポート等の報道訓練
  (NHK、宮崎放送、テレビ宮崎、FM宮崎)


マスコミによる報道訓練

⑤ 建設業協会、防災エキスパート会等による堤防応急復旧訓練

⑥ カーフェリー火災消火訓練
  (海上保安本部、宮崎ベイコムハート連絡会)


カーフェリー火災消火訓練

⑦ ライフライン復旧訓練
  (水道、九電、NTT、KDDI)

⑧ 倒壊家屋からの救出訓練
  (陸上自衛隊、航空自衛隊)


倒壊家屋からの救出訓練

⑨ 事故車両、埋没車両からの救出、道路啓開訓練
  (宮崎警察本部、日本自動車連盟等)


事故車両からの救出訓練

⑩ 被災者の救助・救出訓練、トリアージ
  (日赤、国立病院機構、航空自衛隊等)
⑪ 避難所の運営、ボランティアセンターの運営
  (宮崎市社会福祉協議会、宮崎市民活動センター、 東大宮地区社会福祉協議会)
⑫ 炊き出し訓練(日赤、陸上自衛隊)


炊き出し訓練

●サテライト会場
① 情報伝達・避難訓練
② 被災者救助・救急訓練
③ 水閘門閉鎖訓練
④ 火災消火訓練
⑤ 炊き出し訓練

6 訓練の特徴など

●地震発生から津波警報発表中の訓練
① 地震・津波情報伝達訓練
・津波から安全に避難するために、気象庁が発表する津波警報(大津波)を伝達する訓練と、地震から身を守るため、緊急地震速報を活用した地震対応訓練を実施しました。

② 住民避難訓練
・津波によって浸水が想定される地域の住民や災害時に援護を必要とする人々が参加し、津波警報発表中に避難所までの避難訓練を会場内で実施しました。
・津波警報発表中における、漁船の海上避難(沖合への避難)訓練を実施しました。

③ マスコミ報道訓練
・報道機関(テレビ局等)が訓練会場の訓練状況を自主的に取材しリポートする訓練を実施しました。

●津波警報解除後の訓練
① 被災者の救助・救急訓練
・事故車両、土砂埋没車両に閉じ込められた被災者の救助訓練、倒壊した家屋に取り残された負傷者の救助訓練を実施しました。
・ヘリコプター、船舶、宮崎市消防団水上バイク隊が津波による海上漂流者を救助する訓練を実施しました。

② 緊急物資の輸送訓練、ボランティアセンター運営訓練
・航空機、船舶、及びトラックによる緊急物資輸送とボランティアとの連携による避難所での物資の積み下ろし訓練を実施しました。
・ボランティアの活動の拠点となるボランティアセンターの運営訓練を実施しました。

●TECーFORCEによる訓練
・被害状況把握のため中国地方整備局から先遣隊の派遣訓練を実施しました。
・被災地の調査、早期に応急対策するための現地対策拠点設営訓練を実施しました。
・河川・道路・港湾等の被害情報収集、堤防・道路応急復旧などの訓練を実施しました。

●関係地方自治体との同時訓練
・宮崎県内の東南海・南海地震防災対策推進地域(宮崎市、延岡市、日南市、日向市、南郷町、新富町、門川町)宮崎県内の沿岸地域(串間市、高鍋町、川南町、都農町)の会場において、住民の避難訓練、被災者の救助・救急訓練、被害情報収集・伝達訓練等を行いました。

7 おわりに

津波被害を最小化するためには、「自助」「共助」「公助」の役割分担のもと、様々な施策を広範かつ総合的に講じていかなければなりませんが、中でも、大災害の経験を風化させずに後世に伝承することが大切な課題と考えております。
宮崎市をはじめ日向灘沿岸地域は、過去幾度となく津波災害に見舞われていますが、約200名が亡くなった1662年の外所(とんどころ)地震後、被災体験を風化させないため、特に被害が大きかった地区では50年ごとに供養碑を建立し、供養祭を行っています。
まずは私たち一人一人が津波に関する防災知識を身につけることが重要です。 この訓練により得られた数々の教訓、課題、反省点につきましては、引き続き広域的な防災関係機関による情報共有と連携を図り防災対策の充実、強化に努めて参りたいと考えております。
最後に、今回の訓練にご協力いただきました関係各機関の皆様に対して、深く感謝とお礼を申し上げます。

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