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川内市街部(向田地区)のかわまちづくり
~住民参加型による川内川市街部の改修~
森﨑和博

キーワード:地域連携、住民参画、堤防の質的強化

1.はじめに

川内川下流域に位置する、薩摩川内市街部左岸の向田地区においては、堤防が築堤されてから約50 年を経過しており、南九州特有の流水に脆弱なシラス堤防であることから出水時の漏水、今後の大洪水により支障を来す恐れがあるため、浸透に対する堤防の強化が必要な区間であった。
このことから、薩摩川内市街部の安全確保のため、堤防の被覆工を施工することにより河川水の堤体への浸透及び天端からの降雨浸透を抑え、堤防の質的強化対策を実施し、併せて良好な水辺空間の形成及び住民協働の川づくりを図ったのでその報告を行う。

 

2.向田地区かわまちづくり検討会等の開催
整備イメージを具体化するべく、治水・防災上の課題や潤いと安らぎのある魅力的な水辺空間のあり方について、地域の方とワークショップを平成20 年から開始した。
第2 回目ワークショップにおいては簡易模型による討議を行い、地域の創意工夫が活かせるよう配慮し、これまでの意見を踏まえて、薩摩川内市の中心市街地に位置する公園空間として、3 つのゾーンに分けて整備目標を立てた。

平成21 年4 月には、かわまちづくりを行う上で幅広い意見を集約するために意見交換会を4回開催し、平成21 年9 月からは向田地区かわまちづくり推進協議会及び推進協議会作業部会を開催し、「歴史情緒あふれるまちなか水辺空間の創造」をコンセプトに整備目標を以下のとおりとした。
○水辺空間の整備
  人が集い・遊び・学び・憩える水辺空間の創出
○河川敷の利活用促進
  市民のコミュニティーの場となる空間づくり
○歴史情緒あふれるまちへ
  周辺地域の史跡と連動し歴史情緒あふれるまちづくり

 

3.整備イメージ
向田地区かわまちづくり推進協議会によるコンセプトに基づき以下のとおりとした。
・浸透に対する安全性を確保(堤防質的強化対策の目的)
 ⇒全断面被覆工法(アーマー化)とすることで浸透に対する安全性を確保。
・利活用スペースやイベント等に利用できる空間の確保。
 ⇒特殊堤防(パラペット)とすることで堤防天端を広くし、イベント時の出店や水防活動等に利用できるスペースを確保する。
 ⇒護岸タイプを自然石や階段形式等とすることで景観や親水空間の整備ができ、平常時の花火大会やレガッタ大会の際に利用できるスペースを確保する。

 

4.景観への配慮
施工において、護岸タイプを自然石や階段形式にすることや、コンクリートが目立たないようコンクリート着色等を行うことにより景観や親水空間としての整備を行った。
コンクリートの色については、石材とのバランスを考慮し、様々なパターンを検討し配置、色を決定した。

 

また、検討会による住民からの意見として薩摩街道(江戸時代の参勤交代に用いられた街道)渡唐口(ととんぐち)の復元・整備を目指し、旧堤防撤去時に発生した約50 年前の石材を流用することでコスト縮減を図りながら、歴史的材料による土木施設を現地に残すこととした。
※薩摩街道
薩摩街道は、明治時代に国道が建設されるまで、南九州の陸上交通の大動脈であり、当時は、川内川を向田本町通りにある波止場の渡唐口(左岸)から大小路太平橋上流の渡瀬口(右岸)へ渡り、阿久根や、出水へ向かっていた。

     

5.住民協働の川づくり・維持管理体制の構築
本事業のように市街地に密接している事業は、地域の理解(合意)が事業を左右することから、計画段階からの住民の参加、イメージパースや模型等を用いて視覚により理解しやすい説明を心がけ、工事実施に向けては、関係行政機関、周辺住民、商店街、河川利用者等で構成する「向田地区かわ
まちづくり推進協議会・作業部」を開催し、整備方針を立て、河川空間の整備、利用方法、管理方法などを定め、役割分担を明確にすることで円滑に事業推進を図った。
また、事業の円滑化を目的として、より丁寧でわかりやすく事業の必要性や施工進捗が分かる情報を市報等に折り込んで随時進捗状況を掲載した。

薩摩川内市(関係自治体)との連携としては、市民ニーズに対応した河川空間の整備の一環として堤防天端に照明を設置している。
これは薩摩川内市と協議を重ね、市が設置及び管理(占用)を行うことにより、工事の施工時期を調整し、施工の二度手間を防ぎコスト縮減が図られ、地元要望を実現できた事例である。

昨年度末に開催された、第7回向田地区かわまちづくり推進協議会においては、整備進捗状況の報告、利活用状況・維持管理活動の報告が行われた。
維持管理計画については、国と薩摩川内市で、ゴミ拾い、清掃等について管理協定を締結する方向で協議を進めており、維持管理範囲区分図を作成し、詳細を詰めているところである。

 

6.おわりに(利用状況)
完成した堤防は、掲げた整備目標を達成し、市民の憩いの空間として利用され、川舟遊覧など新たなイベントなども計画されている。
今後とも国、関係自治体、住民による河川空間の整備、利活用方法、管理方法など役割分担を明確化し、継続的に整備、管理できるよう取り組んでいきたい。

   

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