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川内川に架かる「新曽木大橋」の整備について
~景観に配慮した橋梁整備~
川畑輝宏

キーワード:新曽木大橋、橋梁整備、景観

1.はじめに
 新曽木大橋は、伊佐市大口曽木の一級河川川内川に架けられた橋長204 mの斜張橋である。
 伊佐市は、鹿児島県・宮崎県・熊本県の県境に位置する、県本土最北の市である。周囲は九州山地に囲まれた盆地であり、中央部を川内川が流れており、新曽木大橋は「東洋のナイヤガラ」と称される曽木の滝の下流部に位置する(図-1)。

2.事業概要
 橋梁名:新曽木大橋
 路線名:一般県道 鶴田大口線
 橋長:204 m
 有効幅員:車道7.0 m、歩道3.5 m
 事業期間:平成18 年度~平成23 年度
 事業費:約17 億円
 上部工形式:PC2径間連続斜張橋
 下部工形式:逆T式橋台、壁式橋脚
 基礎形式:直接基礎

3.新曽木大橋の整備目的
 新曽木大橋の上流側に架かる曽木大橋は、曽木の滝下流の鶴田ダム建設に伴う工事用道路として1962 年(昭和37 年)に整備され、約50 年もの間、地域の生活道路や観光道路として大きな役割を果たしてきた。その曽木大橋は、老朽化や幅員狭小などにより安全面において問題が生じていたが、
新曽木大橋の整備により安全で円滑な交通を確保出来るようになった。
 特に、新曽木大橋の近くにある曽木の滝公園・曽木発電所遺構は、年間30 万人が訪れる観光名所であり、新曽木大橋の開通は、地域の生活道路や観光地へのアクセス道路としてだけでなく、滝周辺の曽木の滝公園や展望所などを結ぶ新たな周遊道路として期待されている。
 また、周遊の観光名所である鶴田ダムや北薩広域公園への観光道路としての機能も担っており、域内道路網の連携強化が期待される。

4.景観について
 新曽木大橋は平成17 年度に橋梁詳細設計を実施するとともに曽木大橋景観検討会を設置し、橋梁位置やデザインの検討を行った。
 景観検討会には、地元観光協会や商工会、国県市の行政機関の他、景観アドバイザーとして学識経験者が参加した。
 第1回景観検討会では、景観基本方針を決定し、橋梁の基本形状や基本構成要素、橋梁デザインの方向性を検討した。

 第2回景観検討会では、デザイン方針により、主塔形状や橋脚の外部景観のデザインと歩道舗装などの内部景観のデザインを検討した。
 第3回景観検討会では、曽木らしさがより高まる橋梁の細部を洗練し橋梁の魅力を高める検討を行った。
 橋梁は「東洋のナイヤガラ」と称される曽木の滝の下流約300 mの位置にあり、滝を正面から一望できる。また、橋梁部材には、遮断が少なくスマートな印象である斜張橋が提案された。

 主塔・横梁・橋脚は、懐古的風情を取り入れ、安心感の高い造形を表現した。主塔は曽木の風景の中ですっきりとまとまるようH型とし、この高さ約70 mの主塔から、左右12 本ずつ計48 本のケーブルが斜めに張り出され、橋桁を支える構造でハープ型の洗練されたデザインとなっている。

 歩道部・親柱は、かつての曽木発電所をしのばせるアーチやレンガをイメージしたデザインを採用している。

5.旧・曽木大橋について
 慣れ親しんだ旧・「曽木大橋」のある風景を、曽木の歴史に残したいとの地元等からの要望もあり、曽木の滝のレリーフを主塔に設置している。
 多くの利用者に親しまれてきた曽木大橋は、新曽木大橋の完成に伴い今後撤去される予定となっている。

6.新曽木大橋の開通
 新曽木大橋は、平成18 年に着工後、5年の歳月を経て完成し、平成23 年11 月5日に地元の方々の歓喜に包まれ、開通式典が行われた。
 休日には多くの観光客が訪れ、橋上より「東洋のナイヤガラ」と称される曽木の滝を望むなど観光振興の一翼を担っている。

7.おわりに
 貴重な土地を提供して頂いた地権者の皆様、工事に御協力頂いた地域の皆様、さらには工事に直接携わって頂いた施工者の方々のおかげで、本橋梁が完成できたことに深く感謝申し上げます。

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