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都市高速道路との接続による「国道3号黒崎バイパス」の整備効果について
森山安夫

キーワード:整備効果、自動車専用道路ネットワークの形成、物流の効率化

1.はじめに
一般国道3号は、北九州市門司区を起点とし、福岡市、熊本市を経由し、鹿児島市へ至る総延長約470㎞の九州を縦貫する主要幹線道路である。北九州地域においては、東西方向の都市軸を形成する重要な路線であるものの、北九州市の副都心である黒崎地区においては交通渋滞の慢性化により、幹線道路としての機能が低下している。
このような状況を踏まえ、北九州国道事務所では、八幡および黒崎地区の交通混雑の緩和と道路交通の円滑化を図り、地域経済活動の活性化を支援するとともに、都市内の自動車専用道路ネットワークを形成する重要な道路として、黒崎バイパスの整備を推進している(図- 1)。
今回、黒崎バイパスと都市高速道路が接続されたことによる整備効果について紹介する。

2.黒崎バイパスの整備状況
黒崎バイパスは、延長5.8㎞の自動車専用道路で平成3 年度に事業化され、平成20 年10 月に黒崎北~陣原(2.9㎞)が部分供用した後、数度の部分供用を経て、平成24 年9 月に北九州都市高速道路と接続し、これ迄に5.2㎞が供用した(表- 1)。現在、春の町ランプ、黒崎西ランプ等の整備が残っており、平成26 年3 月現在の事業進捗率は約87%の状況である。

3.黒崎バイパスの利用状況
黒崎バイパスの供用延伸とともに、バイパスの交通量は、図-3に示すとおり、並行道路である国道3号と県道からの交通量の転換が図られてきている(国道3号および県道本城熊手線の交通量は約2割減少し、黒崎バイパスを利用(101 百台/12 時間)。その他、周辺道路から黒崎バイパスへ交通が転換(183 百台/12 時間)。
国道3号の交通状況は、写真-2に示すとおり供用後において、走行性が向上している。

4.黒崎バイパスの整備効果
(1)所要時間の短縮
1)プローブ調査による所要時間の推移
黒崎バイパス供用前後のプローブ調査結果より国道3号朝ピーク時の上り線(小倉市街地方面)の所要時間は最大約15 分短縮した(起点;樋口町交差点~終点;西本町1 丁目交差点間:約5.8㎞)。

2)道路利用者による定時性向上の実感
黒崎バイパス供用前後の交通状況を把握するため、北九州市域を対象としてWEBアンケート調査を実施した。図-5に示すとおり、約9割の方が定時性の向上を実感し、黒崎バイパス周辺のみならず、北九州市内の広範囲にわたり定時性向上を実感している結果が得られた。

3)路線バス運行時間の改善
黒崎バイパス供用前後の交通状況を把握するため、黒崎地区周辺を運行する路線バス事業者へのヒアリング調査を実施した。その結果、図-6に示すとおり、国道3号利用路線は、最大10 分の遅れが平均5分程度に短縮、県道利用路線は、最大10 分遅れが平均1分程度に短縮し、バス利用者の定時性の向上や運転手の負担軽減につながっているとの声が聞かれている。

(2)渋滞状況の変化
黒崎バイパスの延伸供用により、国道3号の主要渋滞箇所である筒井町交差点、黒崎駅前交差点および国道200 号の渋滞が緩和されている(図-7)。ただし、未整備の春の町ランプの影響により、端末の前田ランプ出口では、渋滞が発生している。

(3)物流を支援する道路ネットワークの構築
北九州市は、近代産業の一大拠点である北九州工業地域の中心に位置し、鉄鋼業、重化学工業等が盛んな都市である。また、物流拠点として、全国4位の港湾貨物取扱量を有する北九州港をはじめ、周辺に苅田港、北九州空港があり、道路ネットワークの構築による物流支援が求められている。

黒崎バイパスは都市高速道路と接続したことで高速道路ネットワークの一部を形成し、北九州港や小倉都心部等の物流拠点と洞海湾工業地域、学術研究都市および遠賀・福岡方面とのアクセス向上により物流企業活動の効率化につながっている。
北九州市に事業所を置く企業にアンケート調査を行い、回答のあった約180 社のうち、約8割の企業が配送時間の向上等業務活動に効果があったと回答し、黒崎バイパス周辺のみならず、北九州市内の広範囲にわたり業務活動への効果を実感している結果が得られた。

特に、門司区と小倉南区で高い結果が得られたのは、業務活動で高速道路を利用する割合が高い遠距離に位置しているためと推測でき、黒崎バイパスは高速道路ネットワークの一部として、重要な役割を担っている。

(4)救急医療活動の支援
遠賀郡消防本部の救急搬送件数は、図- 10 に示すとおり年々増加傾向にある。遠賀消防本部管内は3次救急医療施設がなく、2次救急医療施設が満床の場合など、市立八幡病院、新日鐵八幡記念病院、小倉記念病院など高次医療施設が複数ある北九州市に救急搬送を行っている(管外搬送は3割弱で推移し、管外搬送の約8割が北九州方面)。
消防本部へヒアリングを実施した結果、黒崎バイパス供用前は、交通渋滞等で所要時間が読めない黒崎市街地の利用を回避して、県道へ迂回し、都市高速道路 黒崎IC 経由で北九州市内の救急病院へ搬送していたが、供用後は国道3号の走行性が向上したため、黒崎バイパスおよび国道3号を経由し、都市高速道路利用に変更している。この結果、搬送時間の短縮(消防隊員の実感5分)に加え、搬送ルートの選択肢が増え、救急医療活動へ貢献している(図- 11)。

(5)北九州市東西軸の連携強化
黒崎バイパスの供用により、図- 12 に示すとおり、小倉都心部(北九州市役所)から30 分圏域が大幅に向上し、北九州市の東西連携が強化された。

5.おわりに
黒崎バイパスは、北九州市黒崎・八幡地区の経済発展や道路ネットワークの完成など、様々な効果をもたらすことから地元の期待も非常に大きく、早期の完成が望まれる所である。
また、今年度、国道3号に接続する春の町ランプの整備についても、着手する予定である。今後も地域と一体となり、一日も早い全線供用に向けて事業を推進させていきたい。

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