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大分駅周辺総合整備事業について
~跨線橋撤去時の渋滞対策~
大分県 佐藤憲一
1 はじめに

「心かよい 緑あふれる 躍動都市」を都市像に掲げる大分市は、海、山、川と豊かな自然に恵まれ、古くは大友宗麟公により南蛮文化が開花した、東九州の一大拠点として歴史を刻んでいます。
昭和39年の新産業都市の指定を契機に飛躍的に発展を遂げ、平成9年には中核市に指定、平成17年1月佐賀関町・野津原町と合併しました。人口およそ46万人を擁し県都として、東九州の中核都市としてさらなる飛躍が期待されています。
しかしながら、その中心市街地は、鉄道により南と北に分断されており、大分駅の北側は大規模な商業業務の集積した既成市街地ですが、南側は、商業施設も少なく、住宅街にJR関連施設や大規模な空閑地が点在している地区であり、それぞれの市街地が均衡ある発展を妨げられてきました。
また、鉄道の平面踏切による交通渋滞は、市民生活に多大な支障を与えています。
そのようなことから、将来の50万都市を展望したとき、大分県の県都として活力と魅力にあふれたスケールの大きな風格のある市街地の形成が望まれています。
このような状況のもとで、現在、大分駅周辺では、大分駅付近連続立体交差事業、大分駅南土地区画整理事業、庄の原佐野線をはじめとする13の関連街路事業を三位一体とした「大分駅周辺総合整備事業」を、都市基盤整備の最重点課題として位置づけ、国、県、市がそれぞれの役割分担の中で、本格的な事業に着手しています。
大分駅連続立体交差事業、大分駅南土地区画整理事業、庄の原佐野線等関連街路事業を事業ごとに、また、現在策定中の交通処理計画とそのPR状況についても紹介します。


写真-1 駅周辺の現況と完成イメージパース

2 事業の概要
(1) 大分駅付近連続立体交差事業
大分駅付近連続立体交差事業は、道路と鉄道を立体交差化することにより、都市交通を円滑化し大分駅周辺地域の都心機能強化の役割を担う事業であり、南北市街地間の交通が極めて円滑になり、踏切事故の危険性も解消され、市街地の一体的発展の促進が期待されています。

・事業主体
・高架区間
・除去踏切

・大分駅部

・運転所の移設

・事業費
・現在の進捗

大分県
日豊本線 3.65㎞
久大本線 1.92㎞
豊肥本線 1.60㎞
日豊本線 10箇所(人道2)
久大本線 3箇所(人道1)
ホーム  4面8線
ホーム長 133m~165m
大分電車区南側に併設
通路線の新設
600億円(JR負担7%)
豊肥・久大本線を
平成20年8月24日高架化し一期開業(部分開業)


図-1 大分駅周辺総合概要図

(2) 大分駅南土地区画整理事業
駅周辺に散在する国鉄精算事業団用地や鉄道高架事業によるJR残用地を活用することにより、駅前広場やシンボルロード等の公共施設の整備と併せて駅周辺街区の有効高度利用を図り、良好な市街地環境をあわせ持つ中心市街地にふさわしい地区を創出します。

・事業主体
・施工面積
・公共用地率

・整備内容

・事業費

大分市
49.6ha
施工前 16.48%
施工後 41.39%
シンボルロード整備
道路、駅前広場、公園、下水道等の整備
690億円


図-2 新しい街並みのイメージ

(3) 庄の原佐野線等関連街路事業
大分駅の高架化に伴い、南北の市街地が一体化することになり、道路網の再編を行うことにより、その事業効果を一層高める事を目的に庄の原佐野線を始めとして、大分駅周辺の幹線道路を整備し、都市交通の円滑化を図ります。
特に県が事業主体の庄の原佐野線は、市街地の形成を支援する東西方向の都市軸道路として位置づけられており、地域高規格道路として整備されています。


図-3 大分市幹線網図(パンフ参照)

また、庄の原佐野線は、連立事業高架工事の跨線橋撤去時の迂回路としても活用されるために、都市計画決定は半地下式ですが、暫定平面形で国道210号~国道10号までの間を平成20年9月23日供用開始しました。


図-4 田室跨線橋撤去時の主な迂回路

3 交通処理計画策定について

大分駅付近連続立体交差事業に伴い、既に単独立体化されている国道10号の万寿跨線橋、国道210号の田室跨線橋、及び市道王子椎迫線の王子跨線橋を撤去することになります。
いずれも、交通量の多い道路の跨線橋であるため、撤去工事中の交通規制や撤去後の踏切設置などによって、一般交通に影響を及ぼすことが想定されます。そのため、両跨線橋を撤去した場合の交通処理対策を事前に検討し、渋滞対策を推進しておく必要があります。
そこで、行政並びに民間の関係機関で構成する『大分駅付近連続立体交差事業交通円滑化検討部会』を『大分県渋滞対策協議会』に設置し、各々の意見や提案等を集約することにより、効果的な交通処理対策の実施を検討することにしました。
部会の設置に向けて、第1回準備会(実務者レベルのワーキンググループ:平成17年1月28日)を開催し、問題点と課題の整理や交通処理計画の方針を協議し、第2回準備会(平成17年3月18日)にて、交通処理計画の提案を経て、第1回部会を平成17年3月29日に開催しました。

   (HP参照:http://www.pref.oita.jp/17500/)


写真-2 『第1回連立交通円滑化検討部会』

第1回部会では、交通処理計画の問題点・課題を抽出しまして、問題のある交差点の改良等ハード対策の検討・協議を行いました。また、ソフト対策の実現性を探るため、大分市中心市街地(主にJR日豊本線より北側)に立地する従業員50名以上の事業所の従業者を対象に下記の調査を実施しました。

(1) 事業所ヒアリング調査
(従業者の多い60事業所にてヒアリング)
・事業所概要
・従業者の通勤状況
・撤去時の対策の必要性
・時差出勤等の導入状況、導入可能性

(2) 通勤者アンケート調査
・個人属性(住所、年齢、性別、通勤車の有無)
・通勤現況(出勤・帰宅時間、通勤手段・ルート)
・撤去時の通勤手段、通勤ルート
・時差出勤等対する参加意向、希望始業時間
・パーク・アンド・レールライドの意向・条件
・パーク・アンド・レールライドに対する意向・条件
通勤者アンケートの有効回答数は、市内61事業所:4,361名、大分県職員:1,841名、大分市職員:563名でした。調査結果の概要は、
・中心市街地の事業所の始業時間は、8:30~9:30 の1時間に約7割が集中
・通勤手段のうち約5割が自家用車を利用
・通勤ルートのうち約2割が国道210号に集中
・時差出勤等には、約5割の通勤者が参加意向
・各P&R施策には、それぞれ約1割程度の通勤者が参加意向
・要望の高い公共交通の利用促進策は、「運行本数の増便」「ワンコインバス」「深夜運行」でした。

(3) 提案施策から実施施策への検討
「中心市街地の事業所の始業時間は、8:30~9:30の1時間に約7割が集中している」「通勤手段のうち約5割が自家用車を利用している」「時差出勤等には、約5割の通勤者が参加の意向である」「各P&R施策には、それぞれ約1割程度の通勤者が参加の意向である」というアンケート調査結果から跨線橋撤去時のソフト施策の優先順位を施策の効果や可能性から判断し、
①時差出勤によるピーク時間帯の交通の分散
②P&Rによる都市部の交通量の削減
③公共交通機関利用促進による交通手段の変更
としました。


平成18年8月 新聞全面広告、商工会議所所報

(4) ソフト施策の削減目標
田室跨線橋撤去時の影響範囲を考慮し、対照断面を生石椎迫線から下郡中判田線までとし、道路交通センサスH22予測交通量を基にJR日豊本線断面を通過する断面交通需要量を算出し、跨線橋撤去前と跨線橋撤去工事中(国道210号全面通行止め)の断面交通容量から、混雑度を算出して、撤去前の混雑度(1.27)を目標にソフト施策での削減目標を1,720台にセットしました。PR活動の目標としては、わかりやすく2,000台としPRを行いました。

(5) スイスイ環境通勤(時差出勤)の推進
事業所ヒアリング調査を実施した事業所を中心にスイスイ環境通勤(時差出勤)のお願いに伺い、平成18年7月末までに、県、市を含めて904台(11企業)の登録を頂きました。
平成18年8月から、新聞の全面広告、商工会議所所報、ポスター等でPRをするとともに、事業所ヒアリングを続けた結果、新たに16企業に参加を頂き、合計1,232台の登録となりました。
平成19年度になって、事業所ヒアリングの範囲を拡大するとともに、既に参加を表明している1,232台(27企業)についても、人事担当者レベルから参加者レベルへのPR活動に移行するため説明会を実施して、時差出勤参加者の意識高揚を図りました。
その結果、平成19年度末には1,353台(42企業)の登録を頂きました。

(6) ラクラク環境通勤 (P&R等) の推進
P&BR・RR(パーク&バスライド・レールライド)についても、郊外のショッピングセンターの駐車場を利活用する郊外型を2カ所とJR日豊本線断面を通過しない大分駅南側に1カ所の合計3カ所470台の駐車場を確保し、現在、条件整理しています。
さらに、郊外の職員研修所駐車場や高速道路の高架下など、その他の適地についても検討中であり、アンケート調査によるニーズ予測値650台を目標に適地選定とPR活動を実施しています。

バス・電車 吊り広告用ポスター

写真-3 企業説明会


ラクラク環境通勤(P&R)のポスター


ラッピングバス

4 PRについて

連続立体交差事業と高架工事に伴う跨線橋撤去時の渋滞対策についてPRをするため豊肥・久大本線が高架化一期開業(部分開業)をする直前に開業イベントを企画しました。

(1) 報道関係者「内覧会」(8月11日)
開業イベントを告知するために、報道関係者に内覧会を行いました。テレビニュース4社、新聞2社が「高架線路ウォーキング」と「一期開業」をPRして頂きました。


写真-4 報道関係者「内覧会」

(2) 高架線路ウォーキング(8月16, 17日)
用地をご提供頂いた地元の方々や、夜間工事でご迷惑をおかけした隣接に住まわれる方々に、高架開業前の線路を歩いて頂くとともに、連続立体交差事業と日豊本線高架化工事に伴う跨線橋撤去時の渋滞対策についてPRをするため、「高架線路ウォーキング」を実施しました。
16日(土)に1,960人、17日(日):5,011人、合計6,971人の参加を頂き、説明スタッフ6名がフル稼働し1人、11~12往復して、「連立事業」「田室・王子跨線橋の撤去」「渋滞対策」「道路特定財源」「弾性バラスト軌道」「防音壁」「ロングレール」等の説明・PRを行いました。

写真-5
高架線路ウォーキング
高架事業説明

写真-6
高架線路ウォーキング
「王子跨線橋」「田室跨線橋」
撤去工事説明
「財源確保:道路特定財源」説明

写真-7
高架線路ウォーキング
全景写真

(3) 豊肥・久大本線高架記念式典(8月24日)
記念式典を高架下で行い、地元小学生に「一日駅長」になって頂き、新しい高架ホームで出発式を行いました。こちらもテレビ4社、新聞5社に報道して頂きました。
報道関係者内覧会で「跨線橋撤去の渋滞対策」について説明をした効果があり、どの報道も「今後の課題は跨線橋撤去の渋滞対策」とPRして頂きました。

写真-11  8月21日テレビ大分ニュース

(4) 県政広報番組でのPR(9月6日)
一期開業後に県政広報番組(毎週土曜日17:55~18:00)にてPRを行い、「部分高架した効果」や「跨線橋撤去の渋滞対策」についてPRしました。

(5) 部分高架化の効果
部分高架化の効果検証として、踏切の遮断時間、遮断回数、列車の通過台数などを高架化される前の7月14日と高架化された後の9月8日に24時間調査を行いました。その結果、一日の遮断時間は45%に、遮断回数は64%に減りました。


写真-8 上野踏切(豊肥・久大本線が高架化)


平成20年8月25日 朝日新聞


平成20年9月13日 大分合同新聞


平成20年8月24日 読売新聞

5 おわりに

交通処理計画を円滑に進め、確実に目標を達成していくためには、企業や住民の協力が不可欠であることから、効果的なPR活動のあり方や効果的なPR方法について検討し続けるとともに、ソフト施策による効果が十分に発現しない場合を想定し、相乗り等の自動車削減策についても併せて検討・準備しておくことも重要と考えています。
いずれにしても交通量の多い道路の跨線橋であるため、撤去工事中の交通規制や撤去後の踏切設置などによって、一般交通に影響を及ぼすことは間違いありません。
TDM施策の問題・課題は山積ですが、今後とも『大分駅付近連続立体交差事業交通円滑化検討部会』にて、各々の意見や提案等を集約することにより、効果的な交通処理対策を検討・実施してまいります。

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