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地域高規格道路「中津日田道路」中津三光道路の供用開始に寄せて
三村一

キーワード:地域高規格道路、中津日田道路、供用開始

1. はじめに
中津日田道路は、大分県中津市と日田市を結ぶ延長約50㎞の地域高規格道路である。
本路線は、北九州・大分の都市圏を結ぶ東九州軸と、佐賀・久留米方面と大分市を結ぶ北部九州横断軸の重要なクロスポイントに位置しており、東九州自動車道と九州横断自動車道とを連結することで循環型高速交通ネットワークの形成を図るものである(図-1)。
ここでは、中津日田道路の整備状況と平成27年3月に供用開始した「中津三光道路」の概要について報告する。

2.「中津日田道路」の全体計画と整備状況
「中津日田道路」は、平成6年12月に計画路線の指定を受け、優先度の高い区間から順次事業に着手している。
全体約50㎞区間のうち、平成20年度に「県道中津港線」と「中津道路」の計3.6㎞区間の暫定供用を皮切りに、平成23年度には「本耶馬渓耶馬溪道路」5.0㎞、そして26年度には重要港湾中津港に直結する「中津臨港道路」3.4㎞、「中津三光道路」3.0㎞が相次いで開通し、現在までに15.0㎞が供用している(図-2)。
東九州自動車道以南の「三光本耶馬渓道路」(12.8㎞)は国土交通省が、「耶馬溪道路」は大分県が施工するとともに、残りの未着手区間のうち、終点部にあたる日田市から山国町の区間(8.5㎞)を「日田山国道路」(大分県施工)として平成27年度に新規事業化し、いよいよ全線完成に向けて、事業の進捗を加速させている。

3.中津日田地域の現状と九州北部豪雨における整備効果
大分県北西部で福岡県との県境に位置する中津市は、豊前地方の中心都市であり、最近ではNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」ゆかりの地として中津城周辺や耶馬溪地域の観光施設に多くの観光客が訪れている。また、観光面で注目を浴びる一方、中津市は重要港湾である中津港を有しており、近年、多目的国際ターミナル等の整備が進み、これに伴い平成16年12月にはダイハツ九州が港湾隣接地に進出するなど、豊前地方の商工業の拠点として成長が著しい(写真-1)。

一方、平成24年の6月末から7月にかけて中津市、日田市を中心とする大分県北西部において、度重なる集中豪雨により、河川の氾濫や土砂災害など甚大な被害が発生した。7月末には激甚災害の指定を受けるなど、河川や道路などの公共施設をはじめ、農業や商工業、観光業などの産業面、住民生活に深刻な影響を及ぼした。
こうした中、同年3 月末に開通した中津日田道路の一部区間(5㎞)である「本耶馬渓耶馬溪道路」が、被災し全面通行止めとなった国道212号のバイパスとして機能した。
中津市南部は、耶馬日田英彦山国定公園に指定されるなど、そのほとんどが森林地域で、国道212号はそうした地域を縦貫する唯一の幹線道路であったが、奇しくも期待されたリダンダンシー効果を発揮し、災害に強い地域高規格道路として地域住民の日常生活や各種産業の物流を支援することができた(図-3)。

このように災害発生時の緊急輸送道路としての機能だけでなく、九州北部地域の商工業や観光業を支援する地域高規格道路「中津日田道路」の早期整備が強く待ち望まれている。

4.「中津三光道路」の整備状況
「中津三光道路」(伊藤田IC~中津IC)は平成18 年度に事業化され、平成20年度から本体工事に本格着工した。
暫定2車線の自動車専用道路(設計速度80㎞/h)で、完成までに9年の年月と91億円の事業費を要している。当該区間は、国道10号上で「中津道路」と接続して、三光下秣(さんこうしもまくさ)ICを抜け、東九州自動車道と中津ICで連結する延長3㎞の区間である。
これにより、海上からの物流拠点である中津港と陸路の大動脈である高規格幹線道路が連携する交通ネットワークが完成し、九州北部地域の物流構造が飛躍的に改善されることになる(図-4)。

つぎに、当該区間における施工状況や開通の状況について紹介する。

①“ 三位一体” の施工体制の確立
「中津三光道路」が通過する地域は、住宅地とのどかな田園が混在しており、施工期間が長期であったため、農業や地域住民への細かな配慮が必要であった。
そのため、建設安全協議会を地域住民、施工業者、大分県の3 者で運営し、施工上の課題や地域からの要望、時には苦情等もすべて受け付け、徹底した施工管理と現場把握に努め、地域住民の信頼を得る体制を執った
一方で地域の祭事などにも積極的に参加し、地元と密なコミュニケーションを図り、風通しの良い現場づくりを行った。
また、開通2週間前に地元の方々を招いた「内覧会」を盛大に開催し、道路の完成を関係者全員で祝った(写真-2)

②当該区間の施工状況と供用後の維持管理について
全体3㎞区間のうち、主な構造物であるトンネル(L=600 m、1箇所)や橋梁(3箇所)のほかは、概ね盛土構造となっている。盛土材についてはトンネル残土や、終点部にあたる東九州自動車道と接続する中津IC部の切土箇所から搬入したが、その他に、前述の九州北部豪雨災害により発生した河床掘削土も流用している。
また、施工全般においては前述の建設安全協議会により、1日の施工時間の厳守をはじめ、周辺道路の散水や水路清掃、騒音や振動を抑制する工法の採用など、住環境保全対策をとりながら工事の進捗を図った。
「中津三光道路」の開通に合わせて、中津港線(定留IC)~東九州自動車道接続部(中津IC)間をNEXCO西日本㈱に管理委託することにした。これにより東九州自動車道と一体的な交通管理が24時間体制で可能となり、自動車専用道路に見合った管理体制となった。

③開通式(完成供用)
平成27年3月1日に、東九州自動車道、豊前IC~宇佐IC間の開通に合わせて、全線開通した(写真-3)。

開通式は、その前日、2月28日に開催したが、広瀬勝貞大分県知事をはじめ、中津市、宇佐市の両市長、地元選出の国会議員、地元関係者等、総勢約200名が出席し、盛大に開通式を行った(写真-4)。

5.おわりに
東九州自動車道が平成27年3月21日に佐伯IC~蒲江IC間が開通し、九州横断自動車道とともに高速道路が県内全線で結ばれたことをはじめ、平成26年度は、県内各地で大規模なバイパス等の開通に沸いた1年となった。
中津市を中心とする県北部地域においては、九州をはじめ関西・四国も視野に入れ、九州の東の玄関口としてのポテンシャルをさらに高めていくことが重要である。
引き続き、高速道路とともに高速交通ネットワークを形成する中津日田道路を戦略的に整備し、大分県の「安心」、「活力」、「発展」を足元から支えていきたい。

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