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長崎工事事務所の事業紹介

建設省 長崎工事事務所
 所長
西 野 賢 治

1 はじめに
長崎は,鎖国時代にわが国で唯一西欧に開かれた窓口であり,諸外国の文化,学問,技術や物資,人が行き交った。このため,長崎は他の地域とは異なった独自の歴史・文化を育み,歴史的な資産を多く有し,また自然豊かな地域でもある。
地形的には平地が少なく,降雨が市街部に到達する時間が短く,また大容量のダムを建設することも困難であるため,水害や渇水による被害を頻繁に受ける地域でもある。
産業としては,かつては造船業やその周辺産業が活発であったが,製造業全体としては全産業に占めるシェアが低く,また全国的な不景気のため低迷している。北海道に次ぐ全国第二位の漁獲高を誇る漁業についても,農林水産業自体が低迷している状況である。このような状況の中,長崎県は観光を最も重要な基幹産業として位置付け,地域振興に取り組んでいるところである。
折しも,今年は日本とオランダの交流の歴史が始まって四〇〇周年に当たり,オランダと縁(ゆかり)の特に深い長崎県では,今年を「ながさき阿蘭陀年」と名付け,各種イベント・記念事業を次々と展開しているところである。
このような状況のもと,災害に強い,安心して暮らせる安全な地域づくりを行うための河川事業やダム事業,また低迷する製造業や重要な基幹産業と位置付けている観光を支援するため,交通網の整備が強く求められており,長崎工事事務所としては,長崎県唯一の一級水系である本明川の改修および本明川ダム事業,また道路事業として,国道34号,35号,57号,205号および西九州自動車道の事業を進めている。

2 河川関係
(1)本明川の改修経緯と事業進捗等
本明川は,死者・行方不明者539名の甚大な被害となった昭和32年7月の諌早大水害を契機に,翌年,国が直轄事業として災害復旧に着手し,昭和43年,一級水系の指定を受けた。
その後,諌早市は,長崎県央陸上交通の結節点であることから,県央地区拠点都市としての急速な社会資本整備と人口集中が進むと共に,長崎大水害となった昭和57年7月出水を契機に,直轄編入時に比べ,更なる改修の必要性が高まった。
このため,平成3年3月,当初計画(1/80)を改定し,既往最大洪水(昭和32年7月出水:1/100規模)対応を目標としたダムと河道改修による国の水系一貫の治水計画に改定している。
その後,平成5年,特に治水安全度が1/10以下と最も低い支川半造川を中心に改修事業に着手し,現在,鋭意,事業実施中の状況にある。
また,本明川ダムについても,昨年度に長崎県南部広域的水道整備計画が策定され,その供給水源として本明川ダムの整備が必要とされているなど新たな展開が始まっており,流域の期待が高まりつつある。
今後は改正河川法に基づく河川整備基本方針と河川整備計画の早期策定に向けて,地域の意見を参考にすると共に諌早湾干拓とも調整を図りつつ,作業を進めていく方針である。

(2)’99.7.23出水の概要および今後の対応策
① 出水概要
7月23日(金)未明から熱帯低気圧の影響を受け,長崎県南部を中心に激しい雨が襲い,午前9時15分,諌早市全域に避難勧告が発令された。
今回の降雨は,諫早での日雨量325㎜に対し,3時間雨量が約70%を占めており,短時間の超集中型の降雨であった。
なお,主要地点の雨量状況は,最大時間雨量:123㎜(本野),最大3時間雨量:243㎜(清水),流域平均雨量188㎜となった。
このため,本明川の裏山水位観測所で,ピーク水位3.61m(23日9:20),半造川の埋津水位観測所で5.15m(23日11:03)を記録した。
今回の出水規模は,流量確率では昭和57年出水と同等規模(確率規模1/30程度)であったが,3時間最大降雨の比較では,昭和32年7月出水より今回出水が上回っており,河川水位の急激な上昇や河川沿川を中心とした内水被害(床上232,床下420)の発生につながったものと考えられる。

② 今後の対応
今回の出水に対する今後の対応策としては,再度災害防止の視点から内水対策まで,災害復旧事業を推進すると共に,「本明川洪水危機管理検討委員会(委員長:野口正人長崎大学教授)」(H11.7.9発足)からの提言等を踏まえたソフト面での危機管理体制の確立を図っていくこととした。
a 主なハード対策
・災害等復旧事業
 被災した護岸等の復旧(総延長約2.6km)と河道掘削(約26万m3)の実施。
・内水対策
 諌早排水機場のポンプ増設(2m3/s)を行い,施設能力(ポンプ規摸7m3/s)を向上。また,迅速かつ機動的な内水対策として,2.5m3/sと0.5m3/sのポンプ車を各1台購入。

b 主なソフト対策
・洪水予報(洪水注意報,洪水警報等)の開始。
・裏山水位観測所における水防基準(危険水位,警戒水位,指定水位)の見直し。
・各防災機関相互の情報ネットワーク構築と水防体制,避難支援体制の強化等。

3 道路関係
(1)西九州自動車道
西九州自動車道は,福岡市を起点として,唐津市,伊万里市,佐世保市を経由し,武雄市に至る延長約150kmの自動車専用道路で,九州西北部の地域経済の活性化,高速定時制の確保に大きく寄与する路線である。
長崎県内では,既に武雄佐世保道路として佐世保大塔ICから武雄南JCTまでの22kmを佐世保道路として佐世保みなとICから佐世保大塔ICまでの5kmを既に供用している。
現在は,佐世保道路の佐世保IC(仮称)から佐世保みなとIC間3kmおよび佐々佐世保道路9kmについて事業を進めており,設計協議,用地買収を精力的に進め,早期の工事着手を目指している。

(2)日見バイパス
日見バイパスは長崎市内の国道34号の交通混雑を緩和し,長崎市の東西方向の交通軸を強化する目的で計画されたバイパスである。昨年11月に大規模構造物を有する区間(新日見トンネルL=1,055m,本河内トンネルL=329m,新妙相寺橋L=332m,本河内橋L=320m等)を含む芒塚~本河内間2.7kmを供用したところである。現在は残る現道拡幅区間の早期供用を図るため,鋭意事業を推進しているところである。

(3)大村拡幅
国道34号の大村市内については,交通混雑が著しく,特に大村競艇が開催時には特に混雑が酷く,地域住民の生活にも支障をきたすまでになっている。大村拡幅はこのような渋滞の解消を目的として事業を推進しており,現在最も混雑が激しい玖島交差点改良を進めるとともに,平成11年度より西本町交差点および大村駅入り口交差点部の改良に着手したところである。

(4)森山拡幅
森山拡幅は国道57号の諌早市東部および森山町における交通混雑の緩和を図る目的で計画された現道拡幅事業である。現在,渋滞が最も激しい尾崎交差点改良を進めるとともに,平成12年度より長野交差点部の改良に着手することとしている。

(5)針尾バイパス
針尾バイパスは,一般国道205号の佐世保市早岐地区における交通混雑解消を目的とし,既に供用している西九州自動車道武雄佐世保道路や,佐世保道路と連絡するバイパスであり,現在崎岡地区における交差点の立体交差化および早岐瀬戸大橋の4車線事業を進めている。
早岐瀬戸大橋の4車線化に伴う上部架設においては,フローティングクレーンによる一括架設を行うことによりコストの縮減を図っている。また,下部工の耐震補強工事に平成11年度より実施しており,プレキャストパネルを用いることにより大幅に水中施工を軽減するPC巻立て工法を適用することとしており,詳細は本号の「一般国道205号早岐瀬戸大橋の橋脚耐震補強の設計と施工について」を参照されたい。

4 おわりに
長崎県の社会資本整備については,全国的な水準から見るとまだまだ遅れており,道路整備や河川改修等の公共事業に対する期待と要望は非常に大きいものがある。長崎工事事務所においては,このような地域の要望に対し,「次世代に誇れる,活力・安全・美しさを兼ね備えた国土」を実現するために,なお一層努力して参りますので,ご理解とご協力のほどよろしくお願い致します。

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