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国道218号北方延岡道路(蔵田~北方)開通効果について
赤塚真吾

キーワード:北方延岡道路、ストック効果

1.はじめに
北方延岡道路は、九州横断自動車道延岡線(九州中央道)全体計画約95㎞の一部を形成し、宮崎県延岡市と熊本県嘉島町を東西に結ぶ自動車専用道路です。
平成18年2月に舞野IC~延岡JCT、平成20年4月26日に北方IC ~舞野ICが開通し、今回蔵田~北方ICが開通したことで、北方延岡道路延長13.1㎞が全線開通となりました。

北方延岡道路は延岡JCTで東九州道と連結することで宮崎県北の高速ネットワークが形成され、これまで高速道路空白地帯であった宮崎県北に新たな高速時代をもたらしました。
北方延岡道路の全線開通により、これまで唯一の幹線道路であった国道218号に災害や事故等が発生した場合の代替道路としての機能が確保されるとともに、物流の効率化及び地域の発展等が期待されます。
本稿では、北方延岡道路が宮崎県北地域にもたらしたストック効果(直接効果、間接効果)について紹介します。

2.北方延岡道路の交通量の変化
蔵田~北方間の開通後の交通量変化については、1週間後~3ヶ月後にかけて開通前に比べ断面交通としては、6%~ 19%の増加が確認されました(図-3)。

これは、国道218号の交通量が北方延岡道路に転換されたことや、延岡JCTで連結している東九州道が平成27年3月21日に大分~宮崎間が全線開通し、高速ネットワークが完成したことが要因と推察されます。

3.直接効果
1)時間短縮効果
今回の蔵田~北方間の開通により、延岡市から近年観光客が増加している「高千穂峡」で有名な高千穂町までの所要時間が5分短縮され、北方延岡道路未整備時と比較すると約22分短縮されました。
東九州道の開通と併せて、高千穂方面への観光客が増加傾向にあり、周遊観光にも大きく貢献しています。

4.間接効果
1)観光への効果
宮崎県北には、高千穂など自然豊かな魅力ある観光地が存在し、北方延岡道路と東九州道の開通により、宮崎県内のほか県外からのアクセス性が大きく向上したことで、広域的な観光が可能となり、観光客数が増加したと言えます。
開通後初のGWでは、昨年度より大幅な観光客数の増加が確認され、なかでも高千穂峡は初めて10万人を突破し、昨年度同時期より1.5 倍の伸びとなり、秋のSWでも10万人超えと多数の観光客が訪れています。
また、アウトドア体験者の増加や、イベント時の来客数についても県外からの訪問が大きく伸びています。
さらに、チキン南蛮や海産物、鮎等の食を求めて来られる方も増加し、中でも延岡市の風物詩となっている「鮎やな」(写真-1)については、初の2万人を突破し、昨年度同時期より約1.5 倍の伸びとなりました。

2)産業支援
蔵田~北方間開通日と同日に「道の駅」北方よっちみろ屋が合わせてオープンしました。
「道の駅」北方よっちみろ屋は、北方延岡道路に直結する国道218号沿いにあります。
開通後3ヶ月の入り込み客数は、昨年同時期と比較すると約1.5倍となりました。
観光客だけでなく、近隣の市町村からの買い物客も増え、また、宮崎市~高千穂町への高速バスの休憩所としても利用されていることも要因の一つだと思われます。
産業に関しては、「道の駅」北方よっちみろ屋の活性とともに、地元生産者への経済効果が現れています。
また、「道の駅」よっちみろ屋だけでなく、国道218号沿いの「道の駅」青雲橋、「道の駅」高千穂においても同様に入り込み客数が増加しています。

3)医療支援
高千穂町は、医師の数が年々減少し、医師不足が深刻化していました。
今回、北方延岡道路が全線開通したことで、7月から延岡市の医師が、高千穂町で土日当直勤務することが決定しました。
この担当医師は、「全線開通した事で高千穂町への通勤を決意した」と派遣へのきっかけが開通による時間短縮であることを明言され、地方への医療支援の効果も確認されました。

5.おわりに
今回の開通で九州横断自動車道延岡線約95㎞のうち、北方延岡道路13.1㎞、約14%の区間が完成しました。
北方延岡道路の開通だけで、時間短縮、産業の向上、医療支援で効果が早くも見え始めています。
今後、時間の経過とともに物流効率化や災害・緊急時の利用状況、企業立地等のさらなる効果の発現が期待されます。
今後も、継続して関係自治体や民間団体と連携しながらストック効果を調査し、また、それらを幅広く発信していくことにより、未整備区間の事業化の必要性を訴えていきたいと思います。
最後に、本稿を執筆するにあたり貴重な情報をくださいました関係自治体や民間団体、資料を作成していただいた㈱建設技術研究所の皆様に感謝の意を表します。

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