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熊本県における総合評価方式の試行について
~国道501号単県橋梁補修(小島橋上部工)工事~

(前)熊本県 土木部 土木技術管理室
熊本県 天草地域振興局 土木部 工務第2課
米 森 賢 也

1 はじめに
熊本県では,県総合計画を踏まえ,建設産業の振興を図るため,建設事業者の自主的な取り組みの方向性や行政の施策の方向性を示した「熊本県建設産業振興プラン」を平成16年3月に策定している。
同プランの中で,民間技術の活用によるコスト縮減や技術力をより重視した競争を進めるため,総合評価方式の検討が明記され,平成17年度からの試行開始が目標として設定された。
その後,平成17年4月に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」や国交省や他県の事例等を踏まえながら,土木部監理課及び土木技術管理室で総合評価方式導入の検討を進めたところである。
今回,熊本県発注の公共工事で,初めて総合評価方式での発注となった「国道501号単県橋梁補修(小島橋上部工)工事」の試行状況について紹介したい。

2 工事概要
国道501号は熊本市の西部を南北に走り,熊本港等の物流拠点を結ぶ主要な幹線道路である。また,緊急輸送道路として,災害時の緊急物資の輸送や,復旧活動の支援において重要な役割を果たす道路である。(図ー1)

白川の最下流に架かる小島橋は,昭和37年に建設された橋長268mの鋼橋で,架設後約44年が経過し,老朽損傷の対策や耐震性能の向上が必要であるため,床版取替補強工事が計画されていた。(図-2) (写真一1,2)

本工事の特徴としては,既設コンクリート床版をプレキャストPC床版に取り替える際などに夜間通行止めが相当期間発生すること,日交通量が約10,000台と多いこと,上流側の橋を通る迂回路が比較的遠いことなどであった。

3 試行対象工事の選定
総合評価方式の最初の試行にあたっては,簡易な施工計画や施工実績・工事成績等を評価する「簡易型」ではなく,技術提案を求める「標準型」での試行が部の方針であった。対象工事の抽出の過程で,本工事は,夜間通行止めによる社会的損失が相当程度発生すると推察され,通行止め日数の短縮を求める技術提案により,総合評価が可能ではないかと考えられた。

また事業主管課の道路保全課や執行機関の熊本土木事務所との協議の過程で,橋梁周辺に民家が密集しているため,騒音・振動の低減対策が求められており,また,河口部においては漁業が盛んで,濁水やコンクリート殻等の落下物防止対策が必要で,それらの対策の技術提案も求め評価すべきということになった。
並行して,入札手続きや審査体制,審査・評価の方法,学識経験者の意見聴取方法などの検討も監理課を中心に進められ,平成18年1月に「熊本県土木部建設工事総合評価方式試行要領」が策定された。

4 落札者決定基準について
試行要領に基づき,総合評価の方法は除算方式によることとした。
・技術評価点=基礎点+加算点
・評価値=(技術評価点/入札価格)
なお,基礎点=100点,加算点=10点満点であり,評価値が最も高い者が落札者となる。
加算点について,「標準型」では工事成績等の企業実績の評価の配点を3点,技術提案の評価の配点を7点として,評価項目の検討を進めた。
その後総合評価審査会(会長:土木部長)を開催し,その場で2名の学識経験者の意見を聴取し,指名審査会を経て落札者決定基準を定めた。評価項目及び評価基準の設定理由は以下のとおりである。

(1)企業実績等の評価項目
試行要領の標準例に拠った。
ⅰ)工事成績評定(満点1.5点)
ⅱ)企業の施工実績(満点0.5点)
ⅲ)配置予定技術者の資格等(満点0.5点)
ⅳ)地域内拠点の有無(満点0.5点)

(2) 技術提案の評価項目
現地状況,工事概要から以下の社会的要請への対応に関する技術提案内容とした。
① 夜間通行止めの日数(標準案77日からの短縮日数)
② 騒音・振動の低減対策
③ 河川内施工時の落下物防止対策

(3)技術提案の評価基準
① 夜間通行止めの日数
・提案日数による定量評価が可能と判断した。
・夜間通行止めによる1日当たりの損失額を「費用便益分析マニュアル」(平成15年8月国土交通省道路局都市・地域整備局)を参考にして算定し,概ね【1日当たりの損失額を入札金額から減額した場合の評価値】=【入札金額は同額で,夜間通行止めを1日短縮した場合の評価値】となるように設定した。(短縮日数1日あたり0.25点を加点)
② 騒音・振動の低減対策,
③ 河川内施工時の落下物防止対策
・定量評価が難しいため,評価基準は定性評価によることとし,技術提案による対策の効果を「優」「良」「可」で判断することとした。

(4)技術提案の各評価項目の配点
① 夜間通行止めの日数
・標準案の77日から短縮可能な日数を.概ね2割程度(16日)と考え,16日以上の短縮提案に対して満点(4点)を与えることとした。
•また,工事期間が短くなれば騒音・振動の発生期間も短くなるという相乗効果が期待できるため配点を比較的高くした。
② 騒音·振動の低減対策,
③ 河川内施工時の落下物防止対策
・②については,床版撤去の際にジベル周辺に残るコンクリート殻をブレーカーで叩き落とす音などが問題であり,低騒音型建設機械等の使用などで音を小さくしたり,仮囲いの強化などで音を漏れにくくする対策など,工夫の余地や費用をかけうる要素が大きいと判断される。
・③については,バキューム装置付のコンクリートカッターの使用やシート防護などの対策を徹底すれば達成可能。追加費用もそれほど高くない。
•よって,②の配点を相対的に増やし,②2点,③1点の配点とした。

5 落札者の決定について
今回の工事は,県の内規により設計金額から指名競争入札となり,平成18年2月8日に10社に指名通知するとともに技術提案の提出を要請した。7社から技術提案があり,総合評価審査会の下,総合評価幹事会(幹事長:道路保全課長)で各社から技術提案のヒアリングを行い,施工の確実性・安全性等の観点から技術提案の採否審査及び落札者決定基準に基づき評価を行った。なお,標準案での入札参加でも可能であり,今回2社が標準案での入札となっている。
提案各社に技術提案の採否を通知後,入札を実施,評価値を算出し,学識経験者に個別に意見聴取(報告)し,指名審査会を経て平成18年3月20日に落札者を決定した。
今回,最低価格入札者を,他の者が技術評価点及び評価値で上回り落札する「逆転現象」が生じている。
落札者の提案は,夜間通行止めの日数短縮が16日で4点満点,また,独自の騒音·振動低減対策も高く評価された。

6 おわりに
今後の施工にあたっては,技術提案どおりに施工されているか,監督・検査で履行確認が必要となる。担保として,技術提案が不履行の場合は,技術提案の加算点に応じた点数を工事成績評定から減点するペナルティーがあらかじめ設定されている。
今回の試行では,手続きが多い中でスケジュールが厳しく関係者には苦労が多かったが,入札参加者から様々な技術提案があり,また最高提案者が落札者となり,公共工事の品質向上が期待できる結果となった。
今後,有効な評価基準をどう設定していくか,評価の客観性をどう高めていくか,「標準型」とともに「簡易型」の試行をどう展開していくかなどが当面の課題となると考えている。
(なお,今回の試行については,試行要領や落札者決定基準等が熊本県HPの「公共工事関連」にリンクして掲載済みであり,URLは以下のとおり。

http://www.pref.kurnamoto.jp/asp/news.asp?theme_no=56&page_flag=kouji&i_news_no=8324

http://www.pref.kumamoto.jp/asp/news.asp?theme_no=56&page_flag=kouji&i_news_no=8581)

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