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唐津伊万里道路の工事現場におけるICT土工の取り組みについて
小栁幸弘

キーワード:西九州自動車道、Iコンストラクション、ICT土工

1.はじめに
西九州自動車道は福岡市を起点として、唐津市~伊万里市~松浦市~佐世保市を経由して武雄JCT( 長崎自動車道) に接続する150㎞の一般国道の自動車専用道路(高規格幹線道路)であり、九州北西部の地域経済の活性化、高速定時性の確保に大きく寄与する道路である。H29 年3 月現在105㎞(約70%)を供用している。

唐津伊万里道路は、西九州自動車道の一部を構成する道路であり、佐賀県北西部に位置し、一般国道202 号の代替路線として、九州北西部~福岡都市圏における相互交通の利便性の向上、高速定時制の確保により輸送時間が短縮され、企業の発展、雇用拡大、観光客の誘致など、唐津・伊万里市域の産業経済、観光文化の振興・活性化に大きな効果が期待されている。
平成27 年2 月に南波多谷口IC までを開通し、最後となる当該区間は成29 年度の完成に向け、現在鋭意工事中である。
平成28 年度より新たに、I-construction の一環として取り組むこととなったICT 土工工事について報告する。

2.ICT土工工事の概要
(1)ICT土工工事の実施状況
唐津伊万里道路の現場における活用工事件数は9 件で、実施状況を表- 1 に示す。

3.伊万里東府招IC箇所のICT土工工事の状況
以下に、伊万里東府招IC 箇所の『佐賀497 号府招長田地区東改良工事(以下「長田東」という)』及び『「佐賀497 号府招長田地区西改良工事(以下「長田西」という)』のICT 土工について述べる。

3.1 工事箇所の平面図、横断図を下記に示す

3.2 ICT土工の流れ
長田東(UAV + MC) と長田西(LS + MG)の実施状況を下記に述べる。

(1)測量機器のキャリブレーションと精度確認
①UAV(ドローン)
使用するカメラの性能・精度(ズレ・歪みがないか)の確認試験を実施後、検証点の精度確認を行った。

②LS(レーザースキャナ)
TS(トータルスレーション)とLS による計測を行い、座標値の差により検証点の精度確認を行った。

(2)3 次元起工測量
①UAV(ドローン)
カメラ・UAVの性能により異なるが、長田東の現場では飛行高度40m、地上風速5m以下で実施した。

②LS(レーザースキャナ)
長田西の現場では18 箇所にLS を据付けて測量を行った。

③表-2にLSとUAVについて比較する。

(3)点群処理
起工測量により取得したデータを、処理ソフトを使用して点群処理(不要データを削除する作業)を行い3D化した。

(4)3 次元設計データの作成
設計図書(平面図・横断図・縦断図等)や線形計算書等を基に3 次元設計データを作成を行った。

(5)3 次元設計土量の算出
長田西では、起工測量結果及び3次元設計データから、点高法・4 点平均法により設計土量の算出を行った。

(6)ICT油圧ショベルによる施工
日々施工前に、GNSS(観測衛星)の精度確認作業を行ってから、長田西はMG(マシンガイダンス)、長田東はMC(マシンコントロール)により、土砂掘削及び法面整形(土砂、軟岩Ⅰ)を行った。

(7)出来形管理
・長田西では第3 法面整形後、小段排水の張コンクリートを打設するため、LS による出来形管理測量を3 回行った。

・長田東では、切土法面部(第2・3 法面)及び掘削平場面での2 回、UAV による出来形管理測量を行った。その結果を下記に示す。

・出来形管理図表(ヒートマップ)作成には、UAV 空撮後5 日間程を要するが、従来の出来形測定・管理図表作成に要する人員・時間に対して1 割程度削減となっている。また、ヒートマップ1 枚で出来形管理結果を説明することができる。

(8)出来形確認検査
従来施工ではテープやレベル等を用いて測量を行い掘削幅や高さ、法長等を確認していたが、ICT 施工では、現地でGNSS ローバーを用いて任意の点を測定し、3 次元設計データと実測値の標高差が規格値内であるかを確認すればいいため、出来形の検査が容易になった。

4.従来工法とICT施工の比較
(1)長田地区における従来工法とICT施工の比較を下表に示す。

2)ICT施工のメリットとデメリット
ICT 施工のメリット、デメリットを表に示す。

(3)今後の普及(標準化)に向けた問題点
・十分な知識を持った技術者が少ない。
・唐津伊万里道路の現場では、起工測量から数量算出、出来形の計測まで、1 社を除きほぼ外注頼りである。各社で、測量機器を購入して、人材を((ICT のノウハウをもった人材が1 名ないし2 名程度))育成し、自社で行えるように環境を整えていく必要がある。
・施工業者より、工事発注時の3 次元データ提供等が求められており、設計業務においての3 次元化設計データ作成が課題である。

6.おわりに
今、若者の建設業離れや、今後、熟練技術者が大量に退職して行くことが予想される中、ICT 土工等の活用により、工程・品質・出来形管理の向上を図り、作業員の省力化及び作業能率の向上等により、生産性を上げ、最終的には利益向上へつなげることが求められている。そして、3K とも5K とも評される建設産業へのイメージを払拭し、若者が夢と希望を持って就職できるような職場環境に変えていくためにもI コンストラクションの推進は重要である。昨年は県内や長崎の高校生を始め、国土交通政務官や、佐賀・長崎県知事等多数の方を現場案内しICT 活用工事をアピールすることができ、一定の評価をいただくことができた。

最後に、ICT 活用工事の各施工業者の皆様には、現場見学会等に積極的に協力いただきありがとうございました。また、本論文の寄稿に当たり、データの提供やアンケートへのご協力等に心より謝意を表します。

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