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「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」
の具体的取り組みについて

九州地方建設局
企画部 技術管理課

建設省は,わが国の建設コストの縮減に向けての「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」およびその主要十施策について,取りまとめを行い,平成6年12月1日に公表されたところである。この建設費の縮減の視点を紹介するとともに,九州地建として取組むべき具体的な課題等について紹介するものである。また,地建内に「建設コスト評価委員会(仮称)」を設置し,「よりよいものをより安く,安全に」をモットーに積極的に取り組むこととしている。

1 背景とその意義
「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」は,過去の一連の不祥事の反省から不正の起きにくいシステム構築に向けて,一般競争方式の本格的採用などの歴史的改革を推進する基をなす「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」の策定と相前後して策定されたところである。
この両行動計画は,今後の公共事業の進め方に対し,大変大きな意味を持つものであり,着実に実施されるべきものである。
さて,「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」は,平成5年度に設置された学識経験者からなる「公共工事積算手法評価委員会1)」において,公共工事の積算の仕組み等に関する検討がなされ,現行の積算手法は妥当である旨の評価を受けたところであるが,その際に,内外価格差問題を踏まえ,わが国と諸外国の建設費の実態調査を行い,その縮減方策について検討を進める必要があるとの指摘がなされたことによる。
このような背景のもとに,建設省内に「内外価格差検討委員会」(委員長:建設事務次官,副委員長:技監)を設け,また,同時に設けられた「内外価格差調査研究会」の調査・研究結果を踏まえ,また,「積算評価委員会」(委員長:秋本勝彦 元会計検査院事務総長)から検討方針等に関して提言および助言を頂きながら,検討が進められ,「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」(以下,行動計画と言う。)が策定された。
今後は,この行動計画に基づき,公共工事の建設コストの縮減に資する各種施策を展開していくこととなるが,このことは,21世紀にむけ社会資本整備を行う上で極めて重要な課題である。
また,公共工事の入札・契約手続においても,競争性の高まりを健全かつ適切な建設コスト意識への誘導や技術提案総合評価方式の導入等,建設コストにかかわる部分を多く持っていることを十分認識しなければならない。

1)公共工事積算手法評価委員会は,平成6年度「積算評価委員会」となった。

2 行動計画にみる建設費の縮減の必要性
(1)わが国と諸外国との価格差の実態把握
① 労働生産性と価格差
日米間の産業部門別の労働生産性の格差と価格の格差との関係は,一般的には,生産性が高い産業分野ほど価格の差は小さい(図ー1)。

② 建設費を構成する労務,資材,機械損料
為替レートにおける日米欧の単価の比率には違いがある(表ー1)。

(2) 建設サービスの内外価格差の原因
日米の建設業の価格差は,用いる尺度によって値が大きく異なる。価格差そのものよりも,価格差が生じる原因を調査し,分析することによる建設費の縮減方策を検討することが重要である(表ー2)。

(3)建設システムの差異の分析
① 資材の取引形態の差異
日米の流通段階での主な差異は,日本では,通常,商流(商取引の流れ)と物流(資材の流れ)が分離しているが,米国では,一致している(図ー2)。

② 機械の損料等の差異
機械の基礎価格は,ほぼ日米同一であるが,耐用時間,年間使用時間,残存率,維持修繕費ともに日本が低い。
機械損料の差異低減の可能性については,建設機械の年間使用時間および耐用時間が短いことが,格差の原因となっていることから,稼働率を向上させる努力が望まれる(図ー3)。

③ 発注工事規模
発注規模は,一般に日本と比べて大きくなっている。(米国:カリフォルニア交通局全工事1.73億円/件,日本:直轄国道全工事0.97億円/件)
④ 工事工期
工事工期は,米国では,各機関の長期計画に基づいて,全工事のおおむね80%以上が複数年度契約であるが,日本においては,直轄国道で複数年度契約は,約43%(H5)とかなり高い比率であるが,1件当りの平均工期は約6月と短い。
発注規模の大型化,複数年度契約の拡大は,施工方法の改善,資機材調達の容易化,工事の平準化等を通じて,建設コスト低減に大きく寄与すると考えられる。
⑤ 安全,環境への配慮
米国では,自己責任の原則が徹底しており,社会の責任を重く見る日本とは,対象的である。
(4)公共工事の建設費の縮減の必要性
わが国と諸外国の公共工事の事業実施システムを比較すると,わが国の事業実施システムには,次のような建設費を押し上げる特性が見られる。
① 資材等の複雑な流通機構
② 建設機械の低い稼働率
③ 安全および工事中の騒音・振動等の周辺環境対策の水準の高さ
④ 中小企業の受注確保等にも配慮した工事の発注規模
次のような状況に対応するため,建設費を押し上げる特性を絶対不変の条件と考えずに可能な限り改善に努めるとともに,実態に即した見直しを行うことにより,より一層の建設費の縮減に取り組むことが必要である。

3 公共工事の建設費の縮減の視点
建設費の構成要素としては,資材費,労務費,機械費等であるが,このうち資材費は,建設費に占めるシェアも大きく,また貿易材としての性格が強いので,第一の視点として資材費の低減を考える。

また,建設費の縮減のためには,生産性の向上が重要であることから,これを第二の視点とする。
さらに,建設費の縮減の大きな原動力であった技術開発を第三の視点とする。

4 九州地建における具体的な取り組み課題
(1)地建版の行動計画の策定
行動計画の主旨を踏まえ,より一層積極的かつ円滑な取り組みを図るため,地建内に「建設コス卜評価委員会(仮称)」を設け,地建版の行動計画を作成するとともに,以後のフォローアップ等を行うこととしている。各事務所においても,同様の体制を確立し,安全性・品質の確保を前提とし,技術開発と一体となった建設コストの縮減に取り組むこととしている。
また,建設コスト問題は,設計段階から施工段階まで幅広く横たわっているので,設計段階から,しっかり取り組むことが必要である。
(2)海外資材活用モデル工事の試行
九州における輸入建設資材の在庫状況は,東京・大阪に比べて,品目数が極めて少ないのが現状である。しかし,資材費は,建設費に占めるシェアが大きく,複雑な流通機構にインパクトを少なからず与えるためには,ぜひとも海外資材の活用が不可欠と言えるので,積極的な取り組みが求められている。
(3)コンクリート2次製品の設計・積算の合理化
工事現場における施工の省人化,省力化に対応して,コンクリート構造物のプレハブ化等を推進し,施工の安全性および品質の確保を図ると共に,合わせて建設費の縮減に努めるため,官・民合同による「コンクリート2次製品設計・積算合理化検討委員会」を設けて次の検討を行う。
 ① コンクリート2次製品の仕様と規格の標準化
 ② コンクリート構造物のプレハブ化
 ③ 既存製品の長尺化,大型化
 ④ コンクリート2次製品の生産性の向上
また,設計,積算の簡素化のため,標準図面集,施工単価の導入を図ることとしている。

5 おわりに
建設費の縮減は,設計・積算から施工までの全ての段階で一人一人がコスト意識を持ち,積算上の工法にも十分配慮しながらたゆまぬ努力が必要と考える(文責:森弘光)。

参考文献
わが国の建設サービスにおけるコスト縮減に向けて
 (全日本建設技術協会 H6.12)

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