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公共工事における民間技術の活用の取り組みについて

国土交通省 九州地方整備局
 企画部 技術開発調整官
山 元 茂 継

1 はじめに
真に豊かな「人・地域・国」の実現に資するため,住宅・社会資本の整備にあたり,建設コストの縮減,安全・安心の確保,環境保全等の建設分野を取巻く諸課題の解決を図る必要がある。これらの課題を解決するためには,民間等で開発された優れた新技術を公共事業において積極的かつ円滑に活用していくことが有効である。九州地方整備局では,新技術の活用のために様々な活動を行っており,本文はその概要について紹介する。

2 公共工事における技術活用システムの運用
国土交通省においては公共工事の品質の確保とあわせて,技術力に優れた企業が伸びる環境づくり,公共事業に関連した民間分野の新技術開発の取り組みの促進を図るため,技術活用のテーマ及び技術の評価等について有識者から意見を戴くことを目的として新たに本省及び地方整備局に設置する第三者委員会を活用しつつ,技術の開発・導入に係る取り組みを総合的に実施することにより,技術活用の一層の促進を図る「公共工事における技術活用システム」を構築し,運用を開始している。

2.1 新技術活用促進システム
国土交通省では,事業を直接行う地方整備局が,統一的な基準・体制により,広く民間等からの新技術情報を随時収集し,その現場適性等の確認を行い,有用な新技術の公共事業への円滑かつ的確な活用・普及を図るための諸環境の整備を新技術情報提供システム(NETIS)を利用して行う新技術活用促進システムを平成10年4月より運用している。
このシステムでは地方整備局に設置した「新技術活用評価委員会」において,新技術の成立性,実地条件下での適用性,一般工事での活用の適否に関する評価(適用性等評価)を行い,NETISへの登録を行っている。
また,新技術の工事等への採用の可否に関わる検討と判断は,現場条件と適用性等評価の結果を踏まえ工事事務所等が行っている。
NETIS登録状況(H14.11.7現在)は,全国では3,191技術,このうち九州地方整備局での登録では266技術(一般67技術,試験フィールド61技術,パイロット138技術)となっている。

2.2 技術活用システムの特徴
平成13年度からは,2.1を含む3つのシステムからなる「公共工事における技術活用システム」を運用している。

(1)第三者委員会の設置
新たに構築するシステムにおけるテーマ及び技術の評価等について有識者から意見を戴き,公共事業における技術活用の促進に資する第三者委員会を設置している。

(2)入札契約方式の活用
総合評価落札方式等の企業の技術提案を活用する入札契約方式,特許技術等に対する随意契約,特殊技術・先端技術等を対象とした技術コンペ方式(仮称)等,多様な入札契約方式の活用により,企業の有する技術を現場へ積極的に導入することとしている。

(3)技術情報の一般への提供
国土交通省では,民間等で開発された技術の情報を収集するシステム(NETIS)を省内向けに運用してきたが,平成13年4月1日より,この情報をインターネット(http://www.kangi.ktr.mlit.go.jp/netis/netishome.asp)により一般にも提供することにより,コンサルタントの設計及び施工業者の施工段階においても,新たな技術のより一層の盛り込みが可能となるような環境を整備している。

2.3 技術活用システムの概要
(1)技術活用システムの概要
技術活用システムは,新技術に関する情報の収集・提供,技術の選定方法,契約方式との連携,活用後の評価といった一連の技術活用の方法をシステム化したもので,以下に示す3つのシステムで構成されている。
① 技術指定システム
工事事務所等の現場ニーズに基づき,新技術を活用する場合に適用するシステムであり,新技術情報提供システム(NETIS)を検索し,現場条件に該当する適切な技術を試験フィールド事業やパイロット事業として適用する。
② 工事選定技術募集システム
工事事務所等の現場ニーズに基づき,新技術を活用する部分は技術指定システムと同様であるが,工事選定技術募集システムの場合,NETISで検索しても現場条件等に該当する適切な技術が見受けられない場合に,技術条件を明示して特定の現場を対象に公募することにより新技術を活用するシステムである。この工事選定技術募集システムにより,NETISに登録されていない新技術であっても,現場のニーズに応じて活用が可能となることが特徴である。
③ テーマ設定技術募集システム
前述の2つのシステムが現場ニーズに基づき実施されるのに対し,テーマ設定技術募集システムは環境,安全,コスト縮減等,全国共通のニーズを対象に,第三者委員会(公共工事技術活用評価委員会)において,有益性,実現性,独創性の観点からテーマを選定し,民間から技術を公募するシステムである。選定された技術については,概ね5年間,直轄工事で積極的に活用することとしている。

2.4 実施状況
① 技術指定システム
平成13年度は,当システムにより,九州管内事務所において149件の新技術が活用されている。これを工種別にみると,法面工,道路維持修繕工,河川海岸,仮設工の順に活用が多い結果となっている。
② 工事選定技術募集システム
平成13年度は,【岩盤緑化工法】,【トンネル施工における周辺の水環境対策工法】の2について技術募集を実施した。応募された技術については,第三者委員会への諮問を経て,工法の選定または絞り込みを行っている。
③ テーマ設定技術募集システム
平成13年度は,「環境の保全と創造」をテーマに,建設廃棄物のリサイクル技術,環境の浄化技術,工事騒音・振動の低減技術,構造物や施設の修景技術の4技術の公募を行い,287件の応募から23技術を選定している。
また,平成14年度は,建設廃棄物(木質系廃材)のリサイクル技術,非破壊検査・センシング技術,GIS(地理情報システム)活用技術,建設現場における安全対策技術等のテーマで募集し,263技術が応募されている。

3 技術活用における各種支援等について
3.1 新技術活用支援施策
新技術の活用にあたって,
①新技術の採用にあたって必要となる,仕様書の作成,積算,施工管理等の検討に苦慮している。
②積算,施工管理,施工実態調査などの実績情報の共有,次の工事への反映が十分に行われていない。
等の課題がいわれている。国土交通省としては現場技術者の発注作業を支援し,新技術の活用を促進することを目的として,平成13年度に38技術,平成14年度に40技術について,特記仕様書記載例(暫定),暫定歩掛,施工管理基準(暫定),対象技術の概要を整備している。

3.2 九州各県技術活用バイロット事業
九州地方整備局,九州各県及び政令指定都市と連携し,建設事業に係る新技術について,その現場適合性等を検証することにより,公共事業への有用な新技術の活用促進を推進し,建設技術水準の向上と効率的な事業執行に資することを目的として,九州各県技術活用パイロット事業(NETIS情報に登録された技術を試行し,その現場適合性,効率性,安全性及び経済性等を検証するために行う事業)を平成14年度より実施している。

3.3 技術事務所の支援
各事務所の新技術活用にあたり,技術事務所で資料作成(工法抽出,見積り,歩掛,特記仕様)を行い各事務所における技術活用の支援を平成14年度より実施している。

3.4 特記仕様書記載の充実
設計業務における比較検討段階における新技術の活用や工事の発注段階での新技術の活用の促進及び新技術活用資料(報告書)が工事の完成図書であることの位置付けを明確にするために,平成14年度より業務及び工事の特記仕様書の新技術に係る事項を充実させている。

3.5 新技術・新工法説明会
説明会は民間において開発され,普及促進が期待される新技術等に関する最新情報及び現場ニーズの高い技術を行政・民間技術者に紹介し,新技術の普及活用を図り,建設事業の効率的な執行と建設技術の向上に寄与することを目的としている。
平成14年度は「聞きたい技術から使いたい技術」をテーマとして, 5~6月に九州各県で説明会を行い,約2200名の参加があった。

3.6 技術フェア
技術フェアは官・民の最新の建設技術を一同に集め,技術者の技術研鑽と,建設分野の新しい技術・工法についての広報・周知,活用・普及を図ることを目的に開催している。
平成14年度は,10月2日(水),3日(木)に西日本総合展示場本館(北九州市)で,「安全・安心」,「環境」,「ゆとりの暮らし」,「コスト縮減・生産性向上」,「品質保持・向上」をテーマに開催し,約5900名の来場者があった。

4 新技術の開発・活用の効果について
建設技術の研究開発が促進され活用することにより,品質の向上,コスト縮減等,社会基盤を整備する上でのメリットは非常に大きい。各々の立場での効果の一部を整理すると以下のようなことがある。

5 おわりに
新技術開発及び活用については,発注者自身のレベル向上や情報の発信などを実施しているところですが,有用な技術の活用により,質の高い安全で安心できる豊かな国民生活を実現させるためには,技術開発者・活用者並びに各発注担当者自身の意識を向上させることが重要だと思います。今後もさらに整備局管内の新技術活用・普及に努めていきたいと考えています。

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