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『簡易遠隔操縦装置(ロボQ)が「今年のロボット大賞」受賞』

国土交通省 九州地方整備局
 九州技術事務所 副所長
小 阪 高 志

1 はじめに
毎年のように、日本各地で大規模な水害、土石流、地震、火山噴火などの自然災害が発生している。この自然災害が発生した場合の復旧作業に対応できる安全な技術開発を行う必要があった。国土交通省九州地方整備局九州技術事務所と株式会社フジタは汎用の建設機械の運転席に装着できる簡易遠隔操縦装置を開発し、その技術向上と普及定着を図ってきた。
昨年度、バックホウ用簡易遠隔操縦装置(以下ロボQ)は、沖縄県中城村での土砂災害現場に出動した。そこでの稼働実績が認められ、経済産業省主催の「今年のロボット大賞」優秀賞を受賞した。今回は、その報告である。

2 ロボQについて
2.1 開発経緯
本格的に建設機械を遠隔操作で稼働させることは、平成6年度の雲仙普賢岳での無人化試験施工に始まる。しかし、遠隔操縦可能な専用機械は台数も少なく、その調達、運搬、施工開始までにかなりの時間を必要としていた。この課題を解決するために、ロボQの研究、開発に取り組んだ。
2.2 概要
ロボQは、写真- 1のようにバックホウの運転席シートを取り外し、制御装置やエアーシリンダで構成された10個のユニットを組立てる。これにより、汎用のバックホウを150m程度離れた場所から安全に遠隔操縦することができる。各ユニットは軽量化しており、人で運搬・装着が可能である。これらの装着・調整は、現地で調達されたバックホウを改造することなく、3名にて3時間程度で、容易にできる。
ロボQの仕様を表-1に示す。
2.3 製作・保有状況
ロボQは、現在(平成19年3月未)までに12台の製作をしている。国土交通省九州地方整備局管内に6台、四国地方整備局管内に2台、中国地方整備局管内に2台、(株)フジタで2台保有している。

表-1 ロボQ仕様

写真-1 ロボQ搭載状況

3 沖縄土砂災害へのロボQ出動
3.1 災害状況
梅雨の長雨の影響で、沖縄県中頭郡中城村において、平成18年6月に発生した地すべりは、当初、幅約150m、延長約150m規模のものであった。この後も雨が降り続き、二次すべりが発生し、幅約200m、延長約400mまで規模が拡大した。地滑りは、住宅直下から滑落し、村道坂田線および県道35線が被災した。また、流動化した土砂が下方の住宅へ迫り、2次災害の危険性がある状況であった。
村道坂田線の災害状況を写真-2に示す。

写真-2 村道坂田線災害状況

3.2 ロボQ出動
2次災害の危険性がある中、沖縄総合事務局の出動要請を受けて、九州技術事務所が保有するロボQ3台を現地に運搬し、災害復旧現場へ導入された。
ロボQを搭載したバックホウは、崩落土砂内への水分の侵入を防ぐための仮排水路および仮設道路を施工するために用いられた。ロボQ3台は、5日間の稼動で、仮設道路=1,875m2、排水路=295mを施工した。人命を危険にさらすことなく確実に作業が行われた。

写真-3 ロボQ施工状況

4 「今年のロボット大賞」
4.1 「今年のロボット大賞」とは
経済産業省は、ロボット産業を、世界をリードする新産業の一つに成長させるべく、ロボット実用化に必要な技術開発や安全性確保に取り組んでおり、その一環として、我が国のロボット技術の革新と用途拡大及び需要喚起を促すために、平成18年度、新たに創設された賞が「今年のロボット大賞」である。
4.2 ロボQ受賞
審査における評価基準は、①社会的必要性、②ユーザーの視点に立った評価、③技術的先進性とされている。
ロボQは、前記の沖縄県中城村での土砂災害に導入されたことから、一刻を争う災害復旧への早期対応を実現する社会的実用性の高いロボットとの評価を得て「今年のロボット大賞」優秀賞を受賞した。

5 おわりに
「今年のロボット大賞」の募集要項に、ロボットとは、「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの技術要素を有する知能化した機械システム」と定義されている。ロボQは、今回、これらの機能を有し、建設分野での代表的なロボットと認められ、新聞やテレビで数多く報道された。これは、建設機械技術の高さと建設全体のイメージ向上に多大な貢献をもたらしたものと考えている。
今後も、いざという時に役立つ機械として社会貢献できればと考えている。

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