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「伊万里市わがまち・わが家の防災マップ」の取組について
~防災マップづくりで広がる地域の防災意識~
中島英幸

キーワード:防災マップ、防災訓練、伊万里市

1.はじめに
伊万里市は、佐賀県の西北部にあって、東松浦半島と長崎県北松浦半島の接合部に位置し、伊万里湾が深く入り込んだ天然の良港を擁しており、古くは、「古伊万里」の積出港として栄え、今日では伊万里湾に造成された工業団地に多くの企業が立地するとともに、東アジア諸国との貿易が活発に行われるなど、伊万里湾を中心とする中核的な機能を備えた都市として発展してきました。
市の人口は約5 万6 千人で、面積255.25.を有し、市域の大部分は中山間地が占めており、東部地域には一級河川・松浦川、徳須恵川及び市街地中央部を流れる二級河川・伊万里川、西部地域の二級河川・有田川等を主流に多くの河川が流れ込む地勢を有しています(図- 1)。

2.「わがまち・わが家の防災マップ」作製に至る経緯
(1)自主防災組織の発足
本市では平成17 年7 月1 日に市内182 行政区すべてにおいて自主防災組織(地区防災会)が発足しており、現在も組織率は100%を維持し、平成28 年4 月現在862 名の地区防災委員が選任されています。
地区防災会の主な活動は、
・住民参加による避難訓練の実施
・研修会の開催
・地区内の災害危険箇所の点検
・避難行動要支援者の避難支援等関係者確認
などであり、地域の状況に応じてそれぞれ独自に実施されています。
しかし、平成22 年頃には、地区防災会が発足して5 年以上が経過し、地区防災会の活動の活性化並びに地区防災委員の資質の向上に向けた取り組みをどのようにして行うかが本市の課題となっていました。

(2)東日本大震災に学ぶ
平成23 年8 月に群馬大学の片田敏孝教授を講師にお招きし、防災講演会を開催しました。その講演で片田教授は、災害時は自ら状況を判断し、率先して避難することが大切だという話をなされました。これを受け、市では、どうしたら災害時に市民の皆さんが自ら考え、避難をしていただけるかという観点から検討を行い、地域住民の皆さん自らが作製する防災マップ「わがまち・わが家の防災マップ」の作製を推進することとしました。

3.「わがまち・わが家の防災マップ」作製事業の概要
(1)目的
地域の状況を熟知している行政区(自治会)が、地域の状況を改めて調査し、危険箇所や避難経路等を表示した防災マップづくりに取り組み、その防災マップを各家庭に備え、避難に役立たせることにより災害から住民の生命を守ることを目的としました。

(2)対象地域
市内全行政区(182 区)
(平成24年度から平成26年度までの3か年事業)

(3)作製スケジュール
① 6 月上旬
行政区から各2 名に出席いただき、国土交通省九州地方整備局武雄河川事務所、佐賀県伊万里土木事務所から防災マップの作製方法について指導を受ける説明会を開催(写真- 1)。
また、作製される際の参考としていただくため、2 年目からは前年度に防災マップを作製された行政区の代表者より、作製にあたって工夫した点や苦慮した点などを発表していただきました(写真- 2)。

② 6 ~ 7 月
それぞれの行政区において、区長、地区防災委員、消防団員、民生委員、婦人会、子ども会、老人会等に参加を呼びかけ、作製委員会を立ち上げ、防災マップの試作、まち歩きを実施

③ 8 月上旬
中間点検会を開催し、進捗状況を確認するとともに、指導・助言を行う

④ 8 月~ 10 月
地元作成の手書き原稿を市において電子化

⑤ 11 月~
地元による電子化原稿の確認

⑥ 12 月~
各町にて印刷、ラミネート加工

⑦ 1 月末
配布にあたっては、市民の方に使い方などの説明をして配布していただくことが重要であるため、防災マップの活用方法について、区長を対象に配布前説明会を開催(写真- 3)。
また、2 年目からは、前年度に防災マップを作製された行政区より、防災マップを活用した防災訓練の事例紹介も合わせて行いました(写真- 4)。

⑧ 2 月~
各区において全戸配布 ※防災マップ完成例(図- 2)

4.「わがまち・わが家の防災マップ」の特徴
①市内すべての行政区で取り組まれていること
② 1 枚のマップに水害、土砂災害、津波災害の想定区域を表示しているほか、地元で把握している危険箇所、過去の災害箇所なども記載していること
③住民自らの手で調査し、作製していること
④近くに市の指定避難所がない場合は、区内の神社や寺院、民間企業の倉庫、病院、区役員宅などに許可を得て、自治会独自で避難所を指定されていること
⑤作製にあたっては、区長、地区防災委員、消防団員などが一体になって取り組まれていることなどです。

5.「わがまち・わが家の防災マップ」を活用した防災訓練
市では、防災マップの実効性を検証していただくため、住民参加による避難訓練の実施をお願いしています(写真- 5、6)。

(1)防災訓練の内容等
・実施日は市で基準日を設定し、一斉に実施
 ※この日に都合がつかない地区は別日で実施
・訓練の災害想定、参加者数、避難所などは、それぞれの地区で決定
・訓練の内容は、住民避難訓練を基本とし、初期消火訓練やAED 講習、防災講演会などを地区の状況に応じて実施

(2)年度ごとの防災訓練の実施状況

6.「わがまち・わが家の防災マップ」作製による効果
①地域住民同士で危険箇所や避難所を話し合って作製され、地域の特性にあった防災マップとなっており、地域住民に対して危険箇所や避難所などを広く周知することができた。
②避難所や避難経路を検討する中で、避難行動要支援者の対策が講じられるなど地域全体の防災力向上が図られた。
③行政区が主体となって行う防災訓練を呼びかけるきっかけとすることができた。

7.表彰
平成28 年3 月18 日、国土交通省九州地方整備局長より、防災マップを全行政区において作製したことは全国的にも珍しく先進的な取り組みであり、地域住民の被災を最小限にするための効果的な取り組みと評価いただき、市内の行政区を代表して伊万里市区長会連合会が国土交通省九州地方整備局長表彰を受賞されました(写真- 7)。

8.おわりに
「わがまち・わが家の防災マップ」の作製については、初めての取り組みでありましたので、防災マップ作製支援をされている武雄河川事務所と土砂災害危険箇所の指定をなされている伊万里土木事務所の協力をいただき、全国的にも珍しい全行政区で防災マップを作製することができました。
この場をお借りして、両事務所の皆様には感謝を申し上げます。
防災マップは、作製したら終了ではなく、地域の状況変化に対応させて見直しを行うことが重要です。
例えば、佐賀県では、土砂災害警戒区域の指定がなされており、本市においても、防災マップを作製した後に指定された区域があります。
こうした防災に関する新たな区域指定や道路の新設、住宅地の開発などがなされた際や、防災訓練を実施した際の住民の意見などを反映させて、防災マップを更新していく必要があります。
市では、今後も地元の要請に応じ、市において電子化データの修正を実施し、地域防災力の向上の一助となるよう継続的な支援を行って参りたいと考えております。

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