一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
国道212号三光本耶馬渓道路の整備効果
甲斐猛

キーワード:中津日田道路、整備効果、地方創生

1.中津日田道路の概要
中津日田道路は、大分県中津市から大分県日田市に至る延長約50㎞の地域高規格道路であり、大分自動車道や東九州自動車道と連結することで福岡市や北九州市などとの循環型ネットワークを形成し、生活、産業、観光面において活力のある中津日田地域の地域づくりに大きく貢献する道路です。

2.三光本耶馬渓道路の事業目的及び概要
三光本耶馬渓道路は、中津日田道路の一部を構成する道路であり、物流の効率化や災害に強い道路ネットワークの構築等を目的としています。
(区間)大分県中津市三光西秣~大分県中津市本耶馬渓町落合
(延長)12.8㎞
(道路規格)第1 種第3 級
(車線数)2 車線
(設計速度)80㎞ /h
(事業着手年度)平成19 年度

現在、三光本耶馬渓道路の工事は着実に進捗しています。「中津IC ~田口IC( 仮称)」(延長2.8㎞)間は、平成30 年度供用を目指して、トンネルや改良工事等を施工中です。

3.沿線地域の現状
(1)人口
三光本耶馬渓道路が通過する中津市の人口は、約84,000 人であり、ほぼ横ばいで推移しています。

(2)生活
中津市の世帯当たり自動車保有台数(1.84 台)は、大分県平均(1.83 台)、九州平均(1.68 台)を上回っています。また、通勤通学時における移動手段の約7 割は自動車であり、その依存度は年々高まっています。

4.中津日田道路の開通区間の整備効果
中津日田道路は、これまでに一部の区間が供用しており、既に沿線地域で整備効果が発現しています。
以下に、その整備効果の一部を紹介します。

(1)物流の効率化(中津三光道路、中津道路、中津港線)
東九州自動車道の豊前IC ~宇佐IC 間の供用(H27 年3 月)とほぼ同時期に、中津三光道路(伊藤田IC ~中津IC)と中津港線①(臨港道路)が供用したことで、既に供用していた中津道路と中津港線②の交通量は2 倍以上に増加しています。特に大型車は、3.2 ~ 3.7 倍と高い伸びを示しており、物流の効率化に寄与しています。

(2)リダンダンシーの確保(本耶馬渓耶馬渓道路)
平成24 年7 月に発生した九州北部豪雨により、大分県北西部において河川の氾濫や土砂災害などの甚大な被害が発生しました。
中津市耶馬渓町の国道212 号においても道路崩壊により38 日間の通行止めとなりましたが、本耶馬渓耶馬渓道路が迂回路としての機能を発揮し、災害に強い地域高規格道路として、地域の生活や産業を支援しました。

5.三光本耶馬渓道路の整備効果
(1)災害に強い道路ネットワークの構築
中津日田道路に並行する国道212 号は、法面崩壊等の災害による通行止めが多く、多数の道路防災点検要対策箇所が存在します。また、平成24 年7 月の九州北部豪雨では多くの箇所で通行止めが発生しました。
本路線の整備により、国道212 号の災害時における代替路を確保し、災害に強いネットワークが形成されます。

(2)経済活動と物流の効率化の支援
中津市や日田市及びその周辺には自動車関連をはじめとする製造企業が多く立地しています。
中津市と日田市を結ぶ軸は、重要な物流軸であり、国道212 号は、「中津市周辺~日田市・鳥栖市」などを往来する貨物車両が利用しています。

大分県は、木材の生産量が全国5 位であり、近年、原木の移出・輸出量が増加しています。一方、中津港ではH26 年より原木の移出・輸出を開始しており、日田市をはじめとする県西部からの木材の出荷を担っています。三光本耶馬渓道路を含む中津日田道路の整備により、日田市から中津港へのアクセスが向上し、国内外への木材供給の増加に対応します。

このように、三光本耶馬渓道路を含む中津日田道路の整備により、物流軸の強化が図られ東九州自動車道や重要港湾中津港と一体となって各産業の経済活動及び物流の効率化を支援します。

(3)交通安全性の向上
三光本耶馬渓道路に並行する国道212 号は、線形不良箇所が点在しており、これが起因と想定される正面衝突事故が多く発生しています。
本路線の整備により線形不良箇所の回避が可能となり、交通安全性の向上が期待されます。

(4)広域観光の振興支援
本路線の近隣には、青の洞門や一目八景等の観光地が点在しており、紅葉シーズンには観光交通による渋滞が発生しています。
本路線の整備により、国道212 号に集中する観光交通が分散することで渋滞が緩和され、観光振興につながることが期待されます。

(5)地域医療活動の支援
沿線地域の救急搬送は必ず国道212 号を経由するため搬送時間が大幅にかかり、道路線形不良箇所も点在していることから、傷病者への負担が大きい状況です。
本路線の整備により、第3次救急医療施設「新別府病院」までの時間短縮・速達性向上が図られ、救命率の向上など住民の安全・安心が確保されることが期待されます。

6.おわりに
三光本耶馬渓道路は、中津日田道路の一部を形成する道路であり、経済活動や物流の効率化を支援するとともに、災害に強い道路ネットワークを構築し、安全・安心の向上に貢献するものであり、地元自治体等からも支援を頂いています。三光本耶馬渓道路が有効かつ最大限に整備効果を発揮できるように、引き続き地域と一体となった整備を行っていきます。
最後に、今回の執筆にあたり貴重な資料や情報の提供をいただいた皆様に感謝申し上げます。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧