九州管内におけるCCIモデル工事と代表例
九州地方建設局企画部
技術管理課基準第一係長
技術管理課基準第一係長
佐々木 敏 裕
建設省福岡国道工事事務所
建設監督官
建設監督官
池 田 勝 美
1 はじめに
「公共投資基本計画」にそって,今後住宅社会資本整備の一層の拡大を図っていくこととしているが,これらの実行を担当する建設産業でも,建設技能工を中心に“高齢化と人手不足”という深刻な問題も抱えている。特に30才未満の若年者の占める割合(昭和63年度)は17%であり,全産業22%と比べても低く(図ー1),また新規学卒者の建設業への入職率は近年4%台で推移しており,これは建設就労者数が労働人口の9%を占めることからすればかなり低率であり,高齢化が急ピッチで進んでいる。その上,今後若手労働人口の減少から,ますます高学歴化に進むことが予測され,若者の就業意識の変化等から建設業への入職者が極めて少なくなる恐れが十分にある。
建設生産現場は,工事毎に移動する特性から労働環境投資がなされにくく,また作業内容も過酷なことから,3K・6Kの言葉が建設業の代名詞のように言われることになった。
他産業に負けない条件作り,つまりトータルとしてのイメージアップが今後求められるところである。賃金,休日をも含めた労働条件,働く職場の環境条件の改善が緊急課題である。また建設事業自体への社会的な評価を得ることも今後の建設事業の円滑な推進や建設従事者の社会的評価を高める重要な事項であり,これらの手だてを含め若者に建設産業で働くことの魅力を感じさせると共に,地域社会との関係を通してダイレクトにイメージを好転させる具体策の一つが建設現場のイメージアップであり,6Kの改善に向け取り組むべき重要なテーマである。
九州地建においてもこれらに対処するため,平成2年度よりCCIモデル工事を実施している状況であるが(平成2年ー16件,平成3年ー18件,平成4年ー24件),今回平成3年度久留米大橋架替工事の事例紹介するものである。
2 モデル工事の取り組み
CCIモデル工事を実施するにあたり,施策を検討した結果,次のような基本方針をたてた。
(1)イメージアップのための設備づくり
① 働く人に魅力ある職場環境づくり
② 周辺住民の理解と親しみを得る事業づくり
③ 建設事業の広報活動
3 イメージアップのための施策づくり
基本方針を基に,イメージアップの具体的な計画をモデル工事推進部会に図り,次のような内容で実施した(写真ー1~4)。
(1)働く人に魅力ある職場環境づくり
① 現場事務所のデザインアップ
事務所は,ブレハブでなく,ユニット式とし,各事務所の一体化を図り看板等で事務所の美装化に務め,スッキリしたイメージとした。
② 場内の環境整備
a 場内の清潔さを保持するため各所にゴミ箱や灰皿を備え,またロータリー花壇やフラワーポット等で美しい場内整備を行った。
b 清潔で利用しやすい水洗トイレや洗面所の設置を心がけ,冬期工事であるため,特に洗面所には,朝夕の手洗い温水器を設け,作業員の好評を得た。
c 駐車場についても工事関係者と見学者用に区分した。
③ 作業員休憩所の整備
特に作業員のための職場環境整備を実施することが重要である。このため休憩所に作業員が昼休みに横になれるよう畳を入れ,娯楽設備としてテレビ,新聞,雑誌等を備えた。また,コーヒー等もすぐ飲めるように流し場を設置するなど,快適な環境づくりに気配りを行ったため,作業員から好評を得た。
(2)周辺住民に理解と親しみを得る設備づくり
① 現場事業所の周辺整備
現場事業所の外柵は,周辺住民にソフトなイメージを与えるため植栽で生垣や竹垣および凝木風の看板を利用した標語やイラストなどで整備した。また,周辺住民に理解を得るため完成予想図の看板を掲示した。
② CCI展示室
〈展示内容〉
◦「これからの土木」をフロー化したCCI広報パネル
◦久留米大橋のあゆみ,橋の架替えの目的などのパネル
◦久留米大稿の完成までのフロー図や,イラスト図を入れた工事写真のパネル
◦建設機械のミニBFをはじめ各種のミニチュアや,キャブ事業の模型等の展示
◦橋づくりに使用している材料の展示
◦筑後川に架かる他の橋梁写真
◦工事記録等のビデオコーナー設置
◦見学展望台の設置や建設機械に穀しんでもらうための体験コーナーの設置
(3)建設事業の広報活動
① CCI活動の広報活動
周辺住民に建設事業をより理解してもらう目的で,町内会へのチラシ配布や,CCI看板および学校訪問など積極的に見学案内を行った。見学者数は,一般見学者で,380名,団体見学者で,小・中学生680名,高校生320名,建設従事者190名,その他260名,全体で約1,830名もの多数の見学者が訪れ,説明会は延べ26回に及んだ。
また,新聞等の報道機関からも,取材を受けPRの一翼を担っていただいた。
② 広報活動の内容
地域に密接した建設事業を推進する目的で,周辺住民や小・中学生へ,現場事務所に設けたCCI展示室にて久留米大橋の歩み,工事の目的,内容のパネルや見学展望台からわかりやすく説明し,工事への理解,橋のできるまでの過程を認識してもらった。
4 CCI活動の反響
(1)一般見学者の反響
周辺住民の反響を得るためアンケート調査(261名)を実施した結果,見学者の男女別は,男性約69%,女性約31%で,年令別では30~40代が最も多く,また職業別では,会杜員,公務員が54%,自営業が13%,主婦が22%,学生,その他が11%であった。
この結果,期待以上に女性の見学者が多くまた,子供連れの家族も多く見受けられた。
(2)イメージアップ活動への意識
◦モデル工事のPR看板は,木目板を使用し柔らかいイメージをあたえることにより,多くの見学者を引きつけた(図ー2)。
◦土木に対するイメージは悪いが,CCI活動により,かなりイメージの改善を図ることができた(図ー2,図ー3)。
◦CCI活動により,建設事業に対する理解が得られ,今後も積極的にイメージ改善が必要であることを示唆している(図ー4,図ー5)。
◦一般見学者の目からも「これからの土木」に対し大きな関心を持ち,より具体的な改善策を期待されていることがわかる(図ー6,図ー7,図ー8)
5 あとがき
今回,CCIモデル工事を実施した結果,職場環境の改善について働きやすい職場として現場職員や作業員からかなり好評を得た。
一方,CCI展示室を通して建設事業のイメージアップを周辺住民や関係者へ,如何にPRするかが最も重要であり,幸いにも見学者を通して多くの方々から賛同を得て期待以上に見学者(1,830名)が訪れ大きな反響を得ることができた。このことから,建設事業に対する認識を,この「小さなCCI活動」から大きな成果として得られたことを実感した。
これからも,地域に,より密接したCCI活動を進めることは,これからの建設事業のイメージの向上を図る有効な手段であり関係業界代表者を含めた委員会の中で,今後のあり方等をさらに検討していくこととしている。