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「第5次土木研究所研究五箇年計画」の概要
一国土マネジメントの適切な展開に向けて一

建設省 土木研究所企画部
 地下開発研究官
永 山  功

1 はじめに
建設省土木研究所は,1921年に内務省土木試験所として発足して以来,河川,道路,下水道等土木技術に関する数多くの研究開発を行い,その成果に基づく社会資本の形成を通じて我が国の社会・経済の発展に貢献してきた。この間,研究活動をより効果的,効率的に進めるため,1982年に「第1次土木研究所研究五箇年計画」を策定した。以来,第2次から第4次の研究五箇年計画を策定し,その研究活動を推進してきたが,今年度(平成11年度)からは新たに「第5次土木研究所研究五箇年計画」を策定し,その方針に基づいて研究活動を進めることになった。ここでは,その概要について述べる。

2 第5次土木研究所研究五箇年計画の位置づけと特徴
大量消費型経済の終焉,地球規模の環境問題の顕在化,国際標準化の流れ,情報化社会の到来など,わが国の社会・経済は,いま歴史的な一大転換期を迎えている。また,国民の意識も多様化し,経済的な豊かさに加え,精神的な豊かさが生活の重要な要件になってきている。さらに,来るべき少子高齢化社会を控え,社会資本整備のあり方,整備の仕方も改めて問い直されている。
このような状況において,建設行政は,需要に応じて不足した社会資本を整備する従来型の「国土建設」から,既存社会資本を有効活用してソフト面での対応も含めて総合的な施策を講じる「国土マネジメント」へと政策の転換を行っている。これを受け,土木研究所には,国土マネジメントの展開に向けた施策上の課題を総合的に解決するための研究開発が要求されている(図ー1)。「第5次土木研究所研究五箇年計画」は,このような社会の一大転換期において,21世紀における真に豊かな社会の実現を目指して土木研究所が進める活動の基本的方向を示すものである。

3 土木研究所の使命と役割
本五箇年計画では,土木研究所の使命と役割を次のように位置づけている(図ー2)。
(1) 国土マネジメントに係わる国の中核的研究機関として,行政との密接な連携の下,国土マネジメント政策の展開に必要な研究開発の体系を提示し,その研究休制を構築していくこと(研究開発の体系と体制のコーデイネーション)。
(2) その中で,関係諸機関との連携を保ちつつ,自ら行うべき研究を実施し,国土マネジメント政策の展開に貢献すること(研究活動)。
(3) これらの活動によって得られた知見や成果を基に,関係諸機関に対して技術支援を行うこと(技術支援活動)。

4 土木研究所が行う研究
以下,土木研究所が行う上記三つの活動のうち,研究五箇年計画の主要部分をなす研究活動について,その概要を述べる。
土木研究所が行う研究は「プロジェクト研究」と「基盤研究」に分けられる。
「プロジェクト研究」は,土木研究所として組織横断的,重点的に取り組むべき研究である。プロジェクト研究は,①国民のニーズおよび行政のニーズが高いこと,②総合的な視点に立った取り組みが必要なこと,③技術水準が高く,土木研究所でなければ実施できないこと,さらに,④本五箇年計画における実現可能性などを考慮して設定されている。プロジェクト研究は.社会的,行政的な緊急性とその実施体制を考慮して,順次「重点研究プロジェクト」として採り上げられ,実施される。本五箇年計画では,28課題がプロジェクト研究に設定され,このうち,平成11年度までに実施されている重点研究プロジェクトは12課題である(図ー3,4)。
「基盤研究」は,それぞれの事業分野における技術課題を解決し,円滑な事業の執行に資するために実施する研究であり,プロジェクト研究のベースとなる研究でもある。本五箇年計画では,それぞれの事業分野に対応して,環境,河川,下水,ダム,砂防,道路,材料・施工,構造・橋梁,建設マネジメント,地震・防災の10分野を設定して研究を実施する。

5 研究の実施体制
以上の研究を実施するにあたっては,社会のあるべき姿を長期的に展望し,解決すべき課題を的確に把握することが重要である。このため,幅広く意見を聞き,意見を交換する場を設けるとともに,産・学・官の連携を強化し,それぞれの役割を考慮して効果的,効率的な研究体制を構築することとしている。

6 おわりに
土木研究所は,社会のニーズを的確にとらえ,それに応えるために必要な新技術を開発していく使命を担っている。このためには,本研究計画を着実に実行するだけでなく,社会の変化に機敏に対応し,常に時代を先取りした研究が行えるように,適宜計画を見直していくことも必要である。また,円滑かつ効果的な研究を行うためには,関係機関との連携が不可欠である。今後とも,関係各位のご支援をお願いしたい。
なお,「第5次土木研究所研究五箇年計画」の全文は,建設省土木研究所のホームページ(URL:http://www.pwri.go.jp)で閲覧することができる。
詳細を知りたい方は,参照いただきたい。

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