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令和2年7月豪雨からの災害復旧について
~国道210号の1日も早い復旧に向けて~

国土交通省 九州地方整備局
大分河川国道事務所   
総括保全対策官  
久 賀 隆 弘

国土交通省 九州地方整備局
大分河川国道事務所   
道路管理第二課 保全対策官
大 林  彰

1.はじめに
国道210号は、福岡県久留米市を起点として大分県日田市、観光地湯布院を経て大分県大分市を終点とする重要な幹線道路である。国道210号は令和2年7月の梅雨前線の活発な活動により観測史上最大雨量となった令和2年7月豪雨及び令和3年8月の約1週間にわたる大雨によ、2年にわたり大きな災害が発生した。
特に令和2年7月豪雨では、大分県内の国道210号は数十箇所にわたり寸断され、また、平行する大分自動車道においても災害が発生し、県内の日田市、玖珠町、九重町、由布市を始め多くの地域で河川氾濫や土砂流出など大規模な災害が発生し甚大な被災を受けた。
これら2年の被災状況並びに令和5年3月末の工事完了に伴う国道210号全線の片側交互通行規制解除に向けた大分河川国道事務所の災害復旧の取り組みについて報告する。

2.令和2年7月豪雨
(1)気象状況
令和2年の九州北部の梅雨入りは6月11日と平年より約1 週間遅い梅雨入りで、6月の1 ヶ月雨量は414mm(日田)と概ね平年並みであった。しかし、7月に入り日本付近に停滞した前線の活発化による影響で、暖かく湿った空気が継続的に流れ込み、各地で大雨をもたらした。
これに伴い全国各地で多くの人命や家屋への甚大な被害のほか、ライフラインや地域の産業等にも大きな影響を与えた。特に熊本県南部では、4日の未明から翌朝にかけて局地的に猛烈な雨となり、球磨川流域では観測史上最多雨量や最高水位を記録し甚大な被害が発生した。
大分県においても2020年7月5日から雨が降り始め、翌6日2時30分に日田市に大雨警報が発表された。その後も激しい雨が続き、大雨警報発表地域は順次拡大し、11時40分には土砂災害警戒情報が発表され、避難勧告等が多くの地域で発令された。その後、6~8日にかけて梅雨前線の活動が活発となり、数時間にわたって広範囲のほぼ同じ場所に停滞し大雨をもたらす線状降水帯が形成された(図-1)。

図1 7月7日 23:30の大分県の雨量データ

この雨で国道210号付近の多くの雨量観測所で観測史上最大雨量を観測し、特に野上雨量観測所(玖珠郡九重町)では累計雨量が600mm、最大時間降水量84mm/h を観測した。野上雨量観測所での7月の月平均雨量は369mmであり降り始めから僅か52時間で月平均雨量の1.6 倍もの雨量を観測したことになる(図- 2)。
気象庁の観測データにおいても、日降水量は椿ヶ鼻で437.5mm /日、玖珠で294.0mm /日、また、7月の月間雨量は日田で1,034mm、玖珠で893mmと観測史上最高を記録している。

図2 野上雨量観測所降水量

(2)国道210号被災状況
6日2時30分の日田市での大雨警報発令により大分河川国道事務所では、注意体制(道路)を発令し防災体制を確立した。同日18時30分頃に九州高規格道路管理センターからの連絡が災害発生の第1報となり、その後、国道210号の至るところで被災を受け通行止めが発生した。 
玖珠郡九重町野上地区(86k000 付近)で通行止めを開始し、非常体制を発令した。その後も雨は強さを増し、7日6時に最大時間雨量84mm/hを記録した。CCTV 映像では大雨により土砂流出が多く確認され、また、至るところで水深20㎝程度の冠水が発生し、現場確認に困難を極めていた。これらの状況を受け5時45分から全面通行止めの区間を玖珠郡九重町粟野(74k700)~道の駅ゆふいん(93k700)まで延長した。さらに7時20分には日田市川下(33k900)~玖珠郡玖珠町戸畑(64k600)の区間においても全面通行止めを行い、直轄国道を最長約50kmにおいて全面通行止めにするに至った。現地確認調査班からの報告、地元警察署や一般の利用者からの通報により少しずつ被害が明確になり、国道210号は日田市や九重町を中心に50箇所以上の被災が確認された。
主な被災内容としては大雨に伴う土砂流出及び法面崩壊、河川の増水に伴う路面冠水や河川洗掘、河川吸い出しによる路面陥没などで、特に被害が大きく、大規模な応急復旧及び本復旧が必要とされる箇所は16 箇所であった(図- 3)。

図3 国道210号被災箇所及び通行止め位置図

(3)赤岩地区の被災状況
①被災状況
最も規模が大きな被害となったのが、日田市天瀬町赤岩地区(61k200)で発生した護岸擁壁の倒壊による大規模な路体流失である。被災発見は集中豪雨後の7月7日11時頃道路の陥没が発見され、陥没規模は長さ7m、幅4m、深さ8mであると確認された(写真- 1)。

写真1 7月7日発見時の被災状況(赤岩地区)

その後、7日夜間から翌8日にかけて54mm/hと2度目の集中豪雨を受け、累加降水量は600mmを観測していた。そして8日13時頃に九州地方整備局保有の防災ヘリ「はるかぜ」により国道210号日田市~大分市の状況調査を行った結果、二度の集中豪雨を受け被害が拡大し、長さ100m、幅16m の大規模な流失となった(写真- 2)。

写真2 7月9日時点の被災状況(赤岩地区)

②対策委員会設立
被災状況の整理や復旧工法の検討を行うため、TEC-DOCTORと防災エキスパート会を招聘した「国道210号災害復旧検討委員会」を設立・開催した。 第1 回検討委員会は7月12日に行われ、被災のメカニズムや応急復旧を行ううえでの留意点について議論された。

③応急復旧
増水した河川の影響により、7月12日から災害時協力協定業者等により応急復旧工事に着手した。先ずは被災箇所が一級河川玖珠川の水衝部である事から衰勢及び瀬替えを行い、施工ヤードを造成した(写真- 3、4)。

写真3 被災直後の河川の流れ(赤岩地区)

写真4 瀬替え完了後の河川の流れ(赤岩地区)

その後、河川の増水により、一部損傷を受けたものの、早期供用を目指し、路体基礎として袋詰め玉石約5,000袋、路体本体として大型土囊約3,200 袋を設置し、路床盛土・路盤・舗装を24時間体制で取り組み、ついに被災発生41日後の2020年8月17日の午前7時に当事務所のパトロール車が先導し全面通行止めを解除し片側交互通行で開放した。
これにより、大分県内の令和2年7月豪雨により被災を受けた国道210号は全区間で通行可能となった。
その後、本復旧工事に向け地質調査、詳細設計等を実施し工事発注に向け取り組んだ。

3.令和3年8月の前線による大雨
(1)気象状況
令和3年の九州北部の梅雨入りは5月11日頃、梅雨明けは7月13日頃といずれも平年より早く、期間降水量も平年の43%と小雨であった。しかし、8月11日から19日にかけ前線が九州付近に停滞し、局地的に猛烈な雨が降るなど令和2年に引き続き九州北部で記録的な大雨となった。大分県内では日田市、玖珠町等で、8月の日降水量が観測史上1位を更新した。国土交通省の雨量観測所(九重町野上)のデータでは8月11日の降り始めから18日までの8日間で559mmを観測した。8月12日は7時37分に日田市他で大雨警報が発令され、その後各地にも発令され、さらに12時までの1時間には53mm/h を記録した。令和2年7月豪雨により雨量による事前通行規制基準を設定した九重町野上地区は13時に日田市天瀬町赤岩地区は15時に雨量が基準値を超過したため事前通行止めを実施した。

(2)被災状況
8月12日の12時までの1時間に53mm/h を記録したその直後の14時15分に大分県玖珠郡九重町尾本地区(81k700付近)の斜面において土砂崩落が発生した(写真-5)。

写真5 土砂崩落の状況(尾本地区)

また、令和2年7月豪雨の被災箇所やその他の箇所において洗掘や陥没等の被害が多くの箇所で発生した。
九重町尾本地区については、同日23時から応急復旧工事に着手し翌13日18時45分に土砂撤去及び大型土囊による土砂流出防止対策が行われ片側交互通行による通行止めの解除を行った。その後も小康状態が続き、翌々日の15日10時10分、13時45分に雨量による事前通行止めを行っていた2 箇所について安全を確認し通行止めを解除した。
日田市天瀬町赤岩地区おいては河川の増水に伴い、本復旧工事着手前に施工ヤードが流失し、再構築を余儀なくされた(写真- 6、7)。

写真6 赤岩地区の施工ヤード(流失前)

写真7 赤岩地区の施工ヤード(流失後)

令和3年8月の大雨による被災箇所についても、令和2年7月豪雨の被災箇所において本復旧工事の本格着手と同時に取組んで来た「国道210号災害復旧マネジメント会議」の中で1日も早い災害復旧に向け取り組むこととなった。

4.災害復旧工事のマネジメント
(1)関係機関との調整
今回の災害については、道路だけでなく河川においても甚大な被害が発生しており、多数の災害復旧工事が同時に発注される状況であったため、河川管理者である大分県と調整し、出水期期間中の復旧作業も考慮し短期間での本復旧工事を行った。一級河川玖珠川ついては、九州でも有数の鮎の産地であり、地元住民だけでなく県外からも遊漁券を買い求める釣り人で賑わう河川である。そのため、復旧作業を迅速に進める上でも地元漁協の協力が不可欠であったため、河川管理者である大分県と合同で災害復旧の説明会を実施し、早期の復旧完了についてご理解を頂いた。
また、本復旧工事においては、河川内からの施工箇所も多く、工事用進入路の盛土材や掘削残土等の処分について綿密な管理・調整が必要であった。建設発生土の利用については、「建設発生土情報交換システム」等を活用し広域的な工事間の土量調整を行う予定であったが、自治体も含めて被災箇所が膨大な箇所で発生しており、システムに反映されていない状況も見受けられた。工事によっては搬入・搬出時期が明確でない箇所もあったため、頻繁に自治体と連絡調整を行い土砂の流用に努めた(写真- 8)。

写真8 自治体との残土調整状況

(2)災害復旧マネジメント会議
上記で述べた、関係機関等との調整事項や工事の課題・懸案事項の進捗状況を把握するため「進捗管理表」を作成し、事務所と出張所間の情報共有ツールとして週ごとの進捗管理を実施した。また、毎月1 回は、進捗管理表を用いた「国道210号災害復旧マネジメント会議」を開催し、災害復旧工事の進捗状況や課題・問題等について、主任監督員から報告をもらった。課題・問題点については、本復旧工事の進捗に大きく影響を及ぼすため、その場での回答(ワンデーレスポンス)を行った。なお、回答が難しい場合については、回答期限を設定し、工事工程への影響を最低限にすることに努めた(写真- 9)。

写真9 災害復旧マネジメント会議

5.広報活動
(1)報道機関への情報提供
今回の被災規模は非常に大きく社会的な影響も甚大であることから、被災直後から報道機関へのブリーフィングや記者発表を通じて、被災状況や復旧状況・復旧見込み等について地域住民や道路利用者へ情報提供を行った(図- 4)(写真- 10)。

図4 復旧完了見込みの記者発表

写真10 3月30日 NHK大分「いろどりOITA」より

(2)Twitter、事務所HP、道の駅における情報の発信
災害発生直後から定期的な情報発信を行っており、被災区間の中で一番規模が大きかった赤岩地区の応急復旧が完了するまでは、毎日、Twitterで復旧状況の写真等を更新した(写真- 11)。

写真11 Twitterでの情報発信

併せて、大分河川国道事務所のHP上に特設コーナーを開設し、被災に対する情報や記者発表資料、国道210号周辺の「通れるマップ」、Twitter 日々更新した復旧写真、定点カメラ撮影による復旧状況写真をつなげたタイムラプスなどを掲載した。
また、道の駅慈恩の滝くす、道の駅ゆふいん内に特設ブースを設けて、「通れるマップ」や被災直後~復旧状況のパネルを展示した(写真- 12)。

写真12 道の駅ゆふいん 特設ブース

(3)災害冊子の作成
国道210号の被災直後~応急復旧完了に至るまでの記録として災害冊子(全22 ページ)を作成した。
冊子の作成は、「九州地方整備局 広報実施要領」に基づき指名された「広報官」による広報チーム「こうほう課」のメンバーで作成した。
冊子の内容は、①豪雨の状況②被災の状況③TEC-DOCTOR・防災エキスパート会による支援状況④防災室での職員の姿⑤復旧作業及びその過程⑥現場技術者の作業状況⑦応急復旧完了⑧広報のとりくみ⑨事務所職員の活動状況について掲載(写真- 13)。

写真13 災害冊子の作成

6.おわりに
近年、異常気象による線状降水帯の発生などにより記録的な大雨が全国各地で観測され大規模な災害が発生している。大分河川国道事務所においては令和2年7月豪雨災害において過去に経験したことのない災害が発生した。令和2年の災害復旧が本格化した令和3年8月にも大雨により2年連続の被災を受けた。被災内容は斜面崩壊と河川との並行区間の護岸や擁壁の洗掘の被害が多く見られ、復旧作業は河川内の作業となり、危険な作業環境下における応急復旧・本復旧工事となった。復旧作業中においても河川の増水による施工ヤードの流失、再被災するなど、工事が難航する場面もあった。現場では、地域住民から早期の災害復旧を望む声に応じるべく、施工業者の作業員が一丸となって復旧作業に取り組んで頂いた。大分河川国道事務所においても積極的な関係機関協議を行い、現場の課題を早期に把握・改善するための手法として、災害復旧マネジメント会議を最大限に活用して取り組んだ。施工業者と事務所が一体となって災害復旧に取り組んだ結果、令和2年7月の被災から約2年8 ヶ月ぶりとなる令和5年3月末に全ての片側交互通行規制を解除する日を迎えることが出来た。
令和2年7月豪雨及び令和3年8月大雨により被災した国道210号の応急復旧及び本復旧に携わっていただいた建設会社、コンサルタント、TEC-DOCTER、防災エキスパート会等々の皆様、また協議にご協力を頂いた関係機関の皆様に心より感謝申し上げます。

写真【主な被災箇所の復旧状況】 左 大分県日田市天瀬町赤岩地区(61k200 付近) 右 大分県玖珠郡九重町野上地区(86k000 付近)

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