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国道3号黒崎バイパス 春の町ランプ・陣原ランプの開通報告
~東西方向のバイパスが連結~

国土交通省 九州地方整備局
北九州国道事務所 工務課長
楠 本 茂 人

キーワード:黒崎バイパス、整備効果、開通式典

1.はじめに
国道3号黒崎バイパスは、JR黒崎駅周辺の国道3号をはじめとした沿線地域の渋滞を緩和するとともに、北九州都市高速道路と一体となって自動車専用道路ネットワークを形成することにより、北九州都市圏の交通円滑化に資する延長5.8kmの自動車専用道路である。平成20年10月に黒崎北ランプから陣原ランプ間の暫定2車線開通後、平成24年度までに北九州都市高速道路への接続を含む延長5.2kmが開通している(図- 1、2)。
先般、令和5年3月18日(土)に春の町ランプ及び陣原ランプが開通したことで、国道3号東西方向のバイパスが連結した。
本稿では、今回開通区間の概要、期待される整備効果、開通までの各種取り組み、開通後の交通状況について、報告する。

図1 広域図

図2 位置図

2.開通区間の概要
今回開通した春の町ランプが整備されるまでは、国道3号を福岡方面から走行してきた車両は、そのまま北九州都市高速道路を利用するか、国道3号に戻りたい車両は前田ランプから市道を経由する必要があったが、今回の開通で、国道3号現道にバイパスが連結されることになり、東西方向の通行車両に対するサービスが向上することとなった(図- 3)。
その春の町ランプの工事では、黒崎バイパス本線から北九州都市高速道路及びJR鹿児島本線を跨ぎ、国道3号の中央部に取り付く構造のため、限られた施工ヤードでの作業となった。特に、JR鹿児島本線上での橋梁上部工架設工事では、JRの軌電停止時間中の約90分間での作業が必要となることから、日本に数台しかない3,000t級クレーンによる一括架設を行うなど、大規模な橋梁工事となった(写真- 1)。

図3 春の町ランプ開通前の東西方向の交通

写真1 春の町ランプの橋梁上部工架設状況

3.期待される整備効果
(1)交通混雑の緩和と交通安全性の向上
平成20年10月以降、これまでの黒崎バイパスの開通により、並行する国道3号現道の交通がバイパスへ転換したことで、旅行速度が向上しているほか、交通事故も減少している(図- 4、5)。
今回の春の町ランプ及び陣原ランプの整備により、並行する国道3号のバイパス機能が強化されることで、国道3号現道の更なる交通混雑の緩和や走行性の向上に加え、交通安全性の向上も期待される。

図4 旅行速度の変化(国道3号現道:樋口町交差点→西本町1丁目交差点) 図5 死傷事故件数の変化(国道3号現道:樋口町交差点~西本町1丁目交差点)

(2)自動車専用道路ネットワークの形成による地域産業支援
北九州市は九州でも有数の製造業が盛んな地域であり、これまでの黒崎バイパスの開通に伴い、八幡西区、八幡東区における製造品出荷額は増加傾向にある(図- 6、7、8)。
北九州都市高速道路と接続する黒崎バイパスの整備により、広域物流拠点である北九州港等への安定的な物流道路ネットワークが形成されることで、黒崎バイパス周辺における新たな企業進出にもつながっており、更なる地域産業の発展が期待される。

図6 北九州市内の自動車専用道路ネットワーク

図7 製造品出荷額ランキング(九州) 図8 製造品出荷額の推移(北九州市)

(3)激甚化、頻発化する災害に対する道路ネットワークの機能強化
近年、災害が激甚化、頻発化する中で、黒崎バイパス周辺地域においても浸水被害が発生している。過去には、豪雨等の影響により、前田ランプと市道との接続部や国道3号桃園2丁目交差点付近において道路冠水が発生したことで、車両の通行に支障を来してきた(図- 9、写真- 2、3)。
黒崎バイパスは橋梁や盛土構造のため、国道3号現道が豪雨等で冠水した場合でも通行止めの影響を受けることがないため、安定的に人流・物流を支える道路ネットワークを形成することが期待される。

図9 黒崎バイパス周辺地域の浸水被害発生箇所

写真2 道路冠水の発生状況(黒崎バイパス前田ランプ【H25.7】)写真3 道路冠水の発生状況(国道3号桃園2丁目交差点【H27.8】)

4.開通に向けた各種取組
(1)陣原横断歩道橋橋名板お披露目式
春の町ランプ及び陣原ランプの整備においては、2 車線区間を4 車線化するにあたり、対面通行から上下分離への交通切替を行い、中央分離帯部分等の施工を行う必要があったことから、開通に先立ち、令和4年12月1日より陣原横断歩道橋の利用を開始した。
利用開始にあたって、歩道橋の橋名板文字を書いて頂いた地元の小学生を集め、完成した橋名板のお披露目式を11月28日に開催した(写真- 4)。
当日は、14名の小学生が集まり、自分が書いた文字が飾られている歩道橋の渡り初めを行い、引率された先生からは、子供たちの思い出に残るようなイベント開催に対して、感謝の言葉を頂いた(写真- 5)。

写真4 陣原横断歩道橋の橋名板お披露目式

写真5 陣原横断歩道橋での記念写真

(2)国道3号黒崎バイパス建設促進期成会による現地視察
春の町ランプの完成まで、行政、学生、地域住民など多くの方々に工事状況を見学頂く中、令和4年12月13日には、沿線企業や住民等で構成される国道3号黒崎バイパス建設促進期成会による現地視察を行った(写真- 6、7)。
当日は、期成会の一般会員及び特別会員から20名の方々にお集まり頂き、開通前の春の町ランプをご覧頂くとともに、期成会副会長に揮毫頂いた春の町ランプ橋の橋名板についての披露も実施した。

写真6 期成会による現地視察状況

写真7 春の町ランプ上での記念写真

(3)広報パネルの展示
開通を間近に控えた令和5年3月からは、黒崎バイパスの整備効果等をまとめたパネル展示を市内6 か所で実施した。沿線の区役所や施設だけでなく、黒崎バイパスが北九州都市圏の自動車専用道路ネットワークの一翼を担う道路であることから、重要な交通拠点である北九州空港にもパネルを展示し、開通に向けた機運の醸成を図った(写真- 8)。

写真8 広報パネルの展示状況(左:コムシティ、右:北九州空港)

(4)開通式典の概要
令和5年3月18日には、16時の一般開放に先立ち、北九州市八幡東区のホテルと春の町ランプにて開通式典を実施した。
まずホテルにて、九州地方整備局長の式辞に続き、共催の北九州市から市長の挨拶、国会議員、福岡県知事、福岡県議会議員、北九州市議会議員から祝辞を頂いた後、これまでの工事経緯や地域の方々からの黒崎バイパスに期待する声等をまとめた開通記念動画を放映した。最後に、国道3号黒崎バイパス建設促進期成会会長から謝辞を頂いた(写真- 9)。

写真9 ホテルでの式典状況

その後、春の町ランプに移動して、TEC服を着た地元小学生にお手伝いを頂き、テープカットとくす玉開きを行い、関係者による春の町ランプの通り初めを行った(写真- 10)。 

写真10 春の町ランプ上でのテープカット

5.開通1か月後の交通状況
春の町ランプ及び陣原ランプの開通1か月後の交通状況を調査した結果、黒崎バイパス本線の交通量は、開通前の約3.4万台/12h から約4.2万台/12h と約24%の増加が確認された。また、並行する国道3号現道では、開通前の約2.5万台/12h から約2.0万台/12h と18%の減少が確認されており、主要渋滞箇所となっている国道3号筒井町交差点で発生していた渋滞長は、開通前後で小倉方面が約580mから0mになるなど、バイパスへの交通転換により、国道3号現道の渋滞緩和が確認された(図- 10、11、12)。
更に、前田ランプの交通量は、開通前の約2.1万台/12hから約1.4万台/12hとなっており、開通前には福岡方面から前田オフランプに向かう車両による本線上にあった渋滞が緩和していることも確認されている(写真- 11)。

図10 春の町ランプ・陣原ランプ開通1か月後の交通状況(調査日:令和5年4月20日))

図11 交通量の変化(断面①)

図12 渋滞長の変化(筒井町交差点)

写真11 現地状況(黒崎バイパス本線→前田オフランプ)

6.おわりに
春の町ランプ及び陣原ランプの開通により、国道3号のバイパス機能が強化したことで、国道3号現道の交通がバイパスに転換するなどの効果が発現しているが、周辺道路からの更なる交通転換のためには、国道200号から黒崎バイパスへのアクセスが可能となる黒崎西ランプの整備が不可欠と考える。引き続き、黒崎地域全体の交通混雑緩和や交通安全の向上等に向け、残る黒崎西ランプの整備を進めていきたい。

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