一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
九州河川協力団体連絡会議の深化と進化
~河川協力団体制度創設10年を迎えて~

国土交通省 九州地方整備局
河川部 河川環境課
課長補佐
藤 岡 慎 介

キーワード:河川協力団体、地域連携、地域活性化

1.はじめに
平成25年6月に河川法の一部が改正され、「河川協力団体制度」が設けられ、河川の維持、河川環境の保全などの河川の管理につながる活動を自発的に行っている民間団体等を「河川協力団体」として法律上位置づけられることとなりました。河川管理者と河川協力団体が充実したコミュニケーションを図り、互いの信頼関係を構築することで、河川管理のパートナーとして活動を促進し、地域の実情に応じた河川管理の充実を図ることを目的としています。
九州では、河川協力団体との連携が法改正から10年を迎えた今も、取り組みがより深く更には新たな展開へ進んでいます。それらの取り組み状況について紹介します。

2.九州地方整備局管内における河川協力団体の指定と活動
九州地方整備局管内では、令和5年3月末までに43団体を指定しています(図- 1、表- 1)。

図1 九州管内河川協力団体活動位置図

表1 九州管内河川協力団体一覧(R5. 3末時点)

それぞれの河川・地域の特徴を踏まえ、河川協力団体の継続した活動が精力的に行われています(写真- 1)。

写真1団体の活動一例(左上:河川清掃、右上:外来種除去、下:環境学習)

3.九州河川協力団体の深化
(1)九州河川協力団体連絡会議の設置
九州では、この法改正がなされる以前より、河川をフィールドに活動している市民団体の皆さんと河川管理者等との連携が活発に行われていました。
その積み重ねもあり、河川協力団体間の情報共有・発信及び提言や、九州としての行動目標など調整することを目的とした『九州河川協力団体連絡会議』の発足(平成27年2月)につながったものと考えています(写真- 2)。
これは、各河川それぞれで河川管理者と河川協力団体とで連携するだけに留まらず、九州全体として一堂に会し意見交換を行うことで、より連携が進み適切な河川管理と地域の活性化につながるものです。
昨今の新型コロナウイルス感染症防止により令和元年・2年度は開催できませんでしたが、web等を活用し、直近では令和5年2月に第7回目を数える九州河川協力団体連絡会議と九州地方整備局との意見交換会を開催しました(写真- 3)。
会議を開催し、九州各地での団体の活動を報告発表することで、会議に参加した団体の今後の活動の参考になったり、日頃の活動での悩み事の相談をするなど様々な効果があります。
また、九州として次年度への行動目標を掲げることで、各流域で河川管理者と河川協力団体が同じ目標に向かって連携できることや九州全体で同じ目標に向かって取り組んでいることの連携感が生まれます。

写真2 九州河川協力団体連絡会議発足

写真3 九州各地の団体の皆さんと意見交換

(2)九州河川協力団体の『深化』
九州では自然災害が多い地域であり、令和2年7月では甚大な豪雨被害を経験しました。この九州河川協力団体連絡会議によって日頃から協力団体の横の繋がりがあったことで、様々なサポート・支援など行われたと聞いています。
これらのことを経験し、各流域単位での連携にとどまらず「九州河川協力団体連絡会議」として、九州全体として繋がり・助け合うことが出来ないかという声を受け、日頃の活動で苦労している6つの視点を軸に、次世代メンバーを中心に『チーム』を設置し令和3年より本格始動しました。
各テーマに特化したチームを立ち上げ、そのテーマに関心のある方なら「いつでも・だれでも」参加出来る制度を作り、「流域」、「団体」を超えた九州河川協力団体連絡会議の「横の繋がり」を広める仕組みを構築しています。それぞれのチームには、リーダーを専任し、この九州河川協力団体連絡会議の副代表として兼務しており、九州の協力団体としての活動の方向性を議論する場に参加したり、チームを活用し各地の団体へ共有したりと、横断的な体制の構築にもつながっています。

■チームの紹介
【水防災チーム】
水防災について情報発信・啓発活動を行うチーム。大規模な災害後には被災地支援も行います。

写真 水防災チーム

【Irodori チーム】
女性視点で川を楽しむ、活動・参加しやすい環境づくりを担うチーム。
「こどもサミット」を開催。

写真 Irodoriチーム

【かわとも事務局チーム】
九州の河川協力団体等の活動情報誌の企画・編集を行うチーム。
流域の首長等へも配付し、地域の方々の活動を知ってもらう機会にもなります。

写真 かわとも事務局チーム

【River Crew チーム】
次世代の人材発掘、継承、育成に向けた啓発活動を行うチーム。地域で活動してある様々な方にも参加してもらうことで、新たな協力団体や連携した活動を促している。

写真 River Crewチーム

【九州川のワークショップチーム】
九州の川で活動する仲間の活動報告・情報交換の場として、九州「川」のワークショップを毎年開催・支援していくチーム。

写真 九州川のワークショップチーム

【リバークリーンチーム】
ゴミ拾いや水環境の活動を推進するチーム。九州一斉の清掃を呼びかけるなど、九州内のネットワークづくりの仕組みづくりを取り組んでいる。

写真 リバークリーンチーム

これらのチームと各地が繋がり活動することで、地域活動に活力を与え、これまでの活動がより深く強くなっています。
また、令和4年度からは、”流域” 単位での一層の連絡協力体制を強固にするために流域連絡会議方式とし、新たな流域世話人を設置して、流域内の調整役として活動も開始しました。
年2 回の流域会議開催を目指しており、河川管理者との連携強化だけではなく、多方面で活動している団体や民間企業との連携につながることを期待しているところです。

4.九州河川協力団体の『進化』
昨今の気候変動による豪雨の強大化など叫ばれており、流域のあらゆる関係者で立ち向かう『流域治水対策』が全国でも呼びかけられています。
これを受け、九州河川協力団体連絡会議としても、「気候変動とは」・「流域治水対策とは」について研修会・講習会を開催し、参加された方々も『自分事』として捉え、それぞれの流域で議論が活発化し始めました(写真- 4)。

写真4 協力団体への講習会開催

写真5 協力団体の皆さんと作成した教本

災害が多い九州であり、近年でも未曾有の災害を直面していることもあり、河川協力団体としても「流域治水について河川協力団体として何かできないのか」との思いを受け、令和5年2月には九州河川協力団体連絡会議 中村代表と九州地方整備局 藤巻局長による” 全国初となる”『流域治水の推進へ』協働宣言を行い、河川協力団体と河川管理者とで一緒に流域治水の推進に向けた啓発など取り組んでいくことを宣言しました(写真- 6)。

写真6 整備局長と団体代表とで協働宣言

これを受けて、早速、河川管理者と一緒に地域の方の理解を深めるためのシンポジウムを開催するなど、これまでの河川内での活動に限らず、流域へと活動の目が広がり、河川協力団体も更に発展・進化しています。

写真 川内川サミット

5.これから
災害が多い九州ですが、一方で川の恵みも多く受けており、より豊かな川へ・更に安心できる川へ思いを繋ぎ、河川管理者と河川協力団体とでこの取組や思いを次世代にも繋ぐことが大事だと考えています。
このためにも、九州全体としての繋がりが、これまでの10年を糧に、これからの10年以後も持続・継続・進化できるように、九州地方整備局としても一緒に取り組んでまいります。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧