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九州中央自動車道高千穂日之影道路
(日之影深角ふかすみIC~平底交差点)開通
~地域の夢と希望をつなぐ~

国土交通省 九州地方整備局
延岡河川国道事務所
工務第二課長
中 島 勇 一

キーワード:九州中央自動車道、広域ネットワーク、整備効果

1.はじめに
九州中央自動車道は、熊本県嘉島町を起点とし、熊本県御船町、山都町、宮崎県五ヶ瀬町、高千穂町、日之影町を経て延岡市に至る95㎞の自動車専用道路です。
九州縦貫自動車道と九州東部の各県を結ぶ東九州自動車道を連絡することで九州の東西軸を強化し、循環型の高速ネットワークの形成を目指す九州の一体的発展に貢献する道路で、沿線地域の観光支援、安全・安心な生活環境の確保、災害時の救援活動や医療活動の支援などに役立つ重要な道路です。
本稿では、延岡河川国道事務所で整備を進めている(仮称)五ヶ瀬西IC ~延岡JCT 間の事業の歩みと整備効果、開通式典の状況について報告する。

2.九州中央自動車道(仮称)五ヶ瀬西IC~延岡JCT間のこれまでのあゆみ
北方延岡道路(延長13.1㎞)が平成27年4月開通、高千穂日之影道路の雲海橋交差点~日之影深角IC(延長2.8㎞)が平成30年11月に開通している。
また、蘇陽五ヶ瀬道路が令和2年に事業化、高千穂雲海橋道路が令和3年度に事業化したところである。そして令和3年8月に高千穂日之影道路の日之影深角IC ~平底交差点間(延長2.3㎞)が開通し、高千穂日之影道路全線(延長5.1㎞)が開通した(図- 1)。

 図1 事業個所位置図

3.九州中央自動車道の整備効果
九州中央自動車道の整備による効果は、北方延岡道路や高千穂日之影道路が開通したことにより、国道218号のみを利用した時に比べ、延岡~高千穂間の移動時間が約30 分短縮され、アクセス性向上に伴う観光振興の支援や安心な暮らしに向けた救急医療環境の向上が期待される。
高千穂町では、東九州自動車道を介した東側からのアクセスが改善されたことで、特に大分・宮崎方面からの交通が増加している(図- 2)。

 図2 高千穂町~延岡市間の所要時間(平日)

(1)県北地域の周遊観光を促進
宮崎県北地域は高千穂峡などの観光資源が豊富で、移動時間が短縮したことで近隣周遊観光が後押しされ、周辺のキャンプ場の利用者も増加している(図- 3)。

 図3 観光地間の所要時間が短縮し、周遊観光が活性化

(2)通学児童の安全性向上
通学路として利用されている国道218号から大型車の交通量が減少し、風圧により通学児童がよろめく危険性が軽減し、安全・安心が確保された(図- 4)

図4 通学路から大型車の交通量が激減し児童が安全に通学

(3)県北地域の救急医療活動に貢献
県立延岡病院では救命率向上を目指して、ドクターヘリが運航困難な悪天候や日没後も出動可能なドクターカーを導入し、医師が受診するまでの時間を短縮する事で、脳疾患や心疾患患者等の早期治療が期待される(図- 5)。

図5 医師の診療・治療を受けるまでの時間が短縮し、重症・重傷患者の救命に貢献

(4)県北地域の木材供給を促進
現道の国道218号は急なカーブや急勾配箇所が多く運搬時に木材の落下リスクが高かったため、低速運搬を余儀なくされていたが、木材の落下リスクが軽減され、木材取扱量の増加が期待される(図- 6)。

図6 搬送時の落下リスクがある現道から所要時間の短縮も図れる自専道に経路転換し、木材供給を効率化

(5)木材の海外輸出や国内の安定供給を支援
西臼杵郡3町(五ヶ瀬町、高千穂町、日之影町)の木材出荷拠点となっている五ヶ瀬林産物流センターの木材は、熊本方面へ6割、延岡方面へ4割が国道218号を利用して運搬しており、細島港や八代港から輸出の促進や国内の安定的な供給が期待される(図- 7)。

図7 木材細島港や八代港からの輸出の促進や国内の安定的な供給

(6)県北地域に新たな住環境が形成
所要時間が短縮し生活利便性が向上したことで、日之影町では新規民間アパートの造成や子育て支援など移住・定住促進の取り組みを推進し、移住需要が高まっている(図- 8)。

図8 宮崎県北地域への移住・定住の促進

(7)地域特産品の安定出荷を支援
宮崎県は焼酎の出荷量が全国1位で、良質な水源を確保可能な県北地域に酒造メーカーが集積している。年末年始などの凍結やチェーン規制時にも安定的な出荷が期待される(図- 9)。

図9 出荷量が全国1位の焼酎を安定出荷

(8)大規模災害時の救護・輸送ルートを確保
九州中央自動車道に平行する国道218号や国道445号は過去10年間で20 回の全面通行止めが発生した。
今後発生が懸念される南海トラフ巨大地震や激甚化する自然災害時の九州東進作戦(緊急輸送ルート) を支援し、信頼性の高い道路ネットワークの構築が期待される(図- 10)。

図10 大規模災害時の救護・輸送ルートを確保

4.開通式典
今回の開通は、地域の方々のご理解ご協力、建設業界、自治体のご協力のもと工事を円滑に進めることができたことである。地域の方々と喜びを分かち合うため、新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮し、規模は縮小しての開催となったが、ご尽力いただいた地元国会議員、宮崎県、五ヶ瀬町、高千穂町、日之影町、延岡市、関係機関、期成会関係団体、経済団体、地元関係者、工事関係者、地元代表者等ご参加いただき、開通式典を行った。
式典の状況は報道協力により地元の方々のみならず多くの方に伝わったのではと感じている。

写真1 鋏入れ式の状況 

写真2 パレードの状況

5.終わりに
今回において、高千穂町と日之影町が高速道路で結ばれた。
九州縦貫自動車道と東九州自動車道をクロスリンクさせる九州中央自動車道は、九州全体の広域ネットワークを充実する上で非常に重要な路線であるものの、整備率は約3割と道半ばである。
九州中央自動車道は、観光活動の活性化、広域的な物流活動や暮らしの安全・安心の確保、新たな地域づくり支援、沿線地域の産業振興などへの寄与が大きく期待されることから、引き続き関係機関と協力し、早期の全線開通に向け尽力していきたい。
今回の開通は地元関係者、自治体、建設業界等の方々のご支援、ご協力のおかげであり、皆様に深く感謝申し上げたい。

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