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コロナ禍における交通への影響について

国土交通省 九州地方整備局
道路部 道路計画第二課
課長補佐
柿 木 文 彦

キーワード:コロナ禍、道路交通、公共交通、移動手段

1.はじめに
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止により、九州管内においては、福岡県で令和2 年4月7 日、佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県では令和2 年4 月16 日に第1 回緊急事態宣言が発出され、5 月14 日までの間、不要不急の外出自粛要請などが行われた。
これにより、自動車をはじめとする各種交通機関に大きな影響を与えた。
そのため、コロナ禍における道路交通や公共交通への影響を確認するとともに、移動手段の変化を把握した。

2.コロナ禍における交通への影響
(1)道路交通への影響
緊急事態宣言下において、政府からの要請として、「人と人との接触機会を7 割~ 8 割削減」、「出勤者数の7 割削減(テレワークなどの推進)」、「帰省や旅行をはじめとした県外への移動の自粛」、「接待を伴う飲食店などへの外出自粛」などの目標が掲げられた。
そのような中、九州管内の国が管理する幹線道路のトラフィックカウンター(道路に備え付けられている交通量の自動計測装置)を用いて、第1回緊急事態宣言の前後期間における1 週間毎の交通量を前年同時期と比較して変化を確認した。
結果として、直轄国道平均(58 箇所平均)の平日の交通量は、3 月初旬頃から徐々に減少を始め、4 月第4 週目には小型車が最大約2 割減少、大型車が最大約1 割減少した。
緊急事態宣言が解除された後は交通量が徐々に増加し、6 月末頃には前年同時期の交通量まで概ね回復していることが確認された(図- 1)。

図1 直轄国道の交通量の推移【平日】

休日についても同様に、交通量の変化を確認した結果、3 月初旬頃から交通量が徐々に減少を始め、4 月第3 週目には小型車が最大約3 割減少、大型車が最大約2 割減少し、6 月末頃には交通量が概ね回復していることが確認された(図- 2)。

図2 直轄国道の交通量の推移【休日】

以上の結果より、道路交通については、政府が掲げた目標(7 割~ 8 割削減)に対して、それほど多くの影響は見られなかったものの、「平日(月~金)」に比べて「休日(土・日・祝)」の交通量の減少率が大きい傾向が見られたことから、生活に欠かせない通勤や買い物などの日常活動よりも帰省や旅行などの余暇活動において外出自粛が多く行われたことが想定される。
また、「大型車(物流車両など)」に比べて「小型車(乗用車など)」の交通量の減少率が大きい傾向が見られたことから、生活・産業活動に必要な物資の輸送やインターネット通販などの物流需要の増加により、大型車の減少が比較的少なかったことが想定される。

(2)公共交通への影響
一方、九州運輸局が公表した「新型コロナウイルス感染症による九州の公共交通事業者への影響」より、鉄軌道やバスの公共交通について、1ケ月毎の輸送人員を前年同時期と比較して変化を確認した。
結果として、鉄軌道(JR 九州、西日本鉄道、地域鉄道)や一般路線バスの輸送人員は、3 月から急速に減少して4 月~ 5 月では最大約5 割減少、高速バスの輸送人員は最大約8 割減少しており、道路交通と比べて減少率が大きい傾向が見られた(図- 3、4)。

図- 3 鉄軌道の輸送人員の推移

図4 バスの輸送人員の推移

以上の結果より、公共交通については、政府が掲げた目標(7 割~ 8 割削減)に対して、高速バスで同程度の減少が見られ、帰省や旅行、ビジネスなどによる県外への移動(広域的な移動)の自粛が多く行われたことが想定される。
また、緊急事態宣言が解除された後(6 月)においても前年同時期の水準まで回復していない状況が見られ、道路交通とは異なる傾向にあることが分かった。
これは、公共交通が自動車と比べて人と人との接触機会が多いことから、これらの状況を避けた行動の変化の表れであることが想定される。

3.コロナ禍における移動手段の変化
(1)調査概要
コロナ禍における道路交通と公共交通の変化に相違が見られたため、第1 回緊急事態宣言期間中における移動手段の変化を把握するためのアンケート調査を実施した(表- 1)。

表1 アンケート調査概要

アンケート調査は、福岡県の地方生活圏中心都市である福岡市、北九州市、久留米市、飯塚市の20 歳以上の住民を対象として、外出する目的毎(①通勤・通学、②買い物、③食事(外食)、④娯楽・習い事、⑤通院・デイサービス、⑥観光・レジャー、⑦出張・打合せ・営業)に「平常時(コロナ前)」と「第1 回緊急事態宣言期間中」の移動手段の変化とその理由を確認した。
結果として、合計1,697 名からアンケートの回答が得られた。

(2)調査結果概要
第1 回緊急事態宣言期間中の移動手段は、平常時(コロナ前)と比べて「鉄道・電車」や「バス」の公共交通の割合が減少する一方で、「自動車・タクシー」や「自転車」、「徒歩・その他」の割合が増加している傾向が見られた。
また、生活を行う上で欠かせない①通勤・通学や②買い物、⑤通院・デイサービスでは、「移動していない」という割合の増加が比較的少ない一方で、⑥観光・レジャーや⑦出張・打合せ・営業では、「移動していない」という割合の増加が比較的多く、外出自粛の傾向が強く見られた(図- 5)。

図5 移動手段の変化 ①通学・通勤 ②買い物

図5 移動手段の変化 ③食事(外食) ④娯楽・習い事 ⑤通院・デイサービス ⑥観光・レジャー ⑦出張・打合せ・営業

図5 移動手段の変化(キャプション)

移動手段を変えた理由は、「三密回避」が大半を占め、公共交通利用における人と人との接触機会を回避したことが分かった。
その他、「行き先(外出先)を変えた」ことによる理由も挙げられている(図- 6)。

図6 移動手段を変えた理由

以上の結果を踏まえ、今後は、“ 外出回数” や“ 外出先” などの変化についても調査し、コロナ禍における人々の行動変容を把握した上で、道路交通や公共交通への影響との関連性を詳細に分析する必要がある。

4.おわりに
本調査により、コロナ禍における道路交通と公共交通への影響度合いの違いや移動手段の変化とその理由が明らかとなった。
特に、三密回避を主な理由として、移動手段が公共交通から自動車へ転換していることが想定されるため、新型コロナの影響が収束した際は、道路の交通渋滞を悪化させないためにも、自動車から元の公共交通へ戻すためのTDM 施策(交通需要マネジメント施策)を推進していくことが重要であると考える。
また、公共交通は、地域の生活や経済を支える重要なインフラであることから、公共交通を維持・確保するための施策についても合わせて推進していく必要がある。
今後は、本調査の結果をもとに、今後の交通動向も踏まえて更に詳細な調査を行い、関係機関と連携・調整を図りながら、官民学が一体となって、効果的かつ具体的な対策を検討していきたい。

参考 福岡地域の緊急事態宣言時における交通状況(旅行速度 平日夕(17~19時)の平常時、緊急事態宣言時(1回目)、緊急事態宣言解除後(10月)の変化

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