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九州地方建設局における道路技術五箇年計画の取組みについて
~21世紀を目指した新たな可能性への挑戦~

建設省九州地方建設局道路部 
道路計画第一課長補佐
藤 並 之 生

1 目的
これまでの道路整備を支えてきた技術の蓄積を踏まえつつ,新たに挑戦していかなければならない分野における主要技術の開発・導入プログラムを策定し,道路新技術の積極的な開発・導入・普及,および技術の総合マネージメントを促進することにより,一層効率的な道路整備の推進と,渋滞・交通安全等の基本的課題や,環境・省エネルギー問題,「ゆとり」や「美しさ」といった新たなニーズヘの適切な対応を図ることを目的とする。

2 計画内容
◉ 道路整備の新長期構想,第11次道路整備五箇年計画の主要技術として,全国テーマは74課題で,うち九州地建に関係するものが12課題と九州地建独自のものが6課題で合計18課題となっている。
◉ その長期的な開発・導入目標を踏まえつつ,第11次道路整備五箇年計画期間内における開発,導入,普及のプログラムを策定した。

3 計画の位置付け
◉ 道路新技術の開発・活用による一層効率的な道路整備の推進を図るための計画である。
◉ 建設技術研究開発の全省的な検討を踏まえつつ,幅広い層の意見・提案を反映して策定した。
◉ 大学,民間等の各界の協力を得ながら一体となって推進する。

4 特 徴
◉ 第11次道路整備五箇年計画の発足に合わせて,初めて策定した。
◉ これまでの道路整備を支えてきた主要技術の役割・効果を検証した。
◉ 今後取り組むべき主要な道路技術とその効果,五箇年における開発等の目標を明示した。
◉ 技術の具体的イメージを,ビジュアル等によりできるだけ分かりやすく提示した。
◉ 道路新技術の開発・導入推進方策について,取り組むべき方向を提示した。

5 意見ヒアリング等
◉ 道路新技術会議(委員長:中村英夫東京大学教授,平成3年9月設置)において,重点的に取り組むべき道路技術等について審議した。
◉ 全国各地域の有識者560名を対象に道路新技術の優先度等についてアンケート調査を実施(平成4年10月)
◉ 全国各地域の有識者750名を対象に策定に際しての意見・提案をヒアリング(平成5年5月)

6 道路技術開発の基本的方向
新技術の開発·導入を積極的に推進するため,21世紀を目指した道路技術開発の基本的方向として以下の7つを置き,新たな可能性への挑戦を行うこととした。
(1)渋滞・交通安全に対する新たな挑戦
(2)環境保全・省エネルギー・省資源への新たな挑戦
(3)ゆとり,美しさ,人への優しさといった新たなニーズヘの挑戦
(4)安心して利用できる道路ネットワーク形成への新たな挑戦
(5)将来への飛躍,未来の夢を実現するための挑戦
(6)一層効率的で無駄のない道路整備・維持管理の追及
(7)広範な技術を総合化して効率的活用を図るトータルマネージメントの促進

7 推進体制
推進体制は,全国では,行政外部の視点からのチェックを行える機構として,「道路新技術会議」を設置し建設本省内部にテーマ毎のプロジェクトマネージャ一体制を整え学識経験者や外郭団体,各業界等の協力を得て,道路技術行政を推進していく(図ー1)。

九州地区においては,「道路技術開発委員会」とテーマ毎の分科会を設け,「九州地建技術管理委員会」と連携をとりながら道路技術行政を推進していく(図ー2)。

8 道路技術五箇年計画の計画概要(九州関係分)

9 主な技術テーマ(例)
(1)生態系に配慮した道路技術
道路建設における調査計画,設計施工,維持管理の各段階で自然環境保全を図るため,①切盛土部の面積の縮小,②動物用横断施設,③自然への影響の少ない照明,④動植物の生息環境の創出等の適切な対策手法の開発を行う(図ー3)

(2)排水性舗装
排水性舗装は,表層透水性アスファルト混合物を有する舗装であり路面に滞留した水を排することにより雨天時車両の走行安全性を向上することができる機能舗装である(図ー4)。また,表の空隙に機械音を取り込んだり,タイヤのポピング音を低減することにより騒音を低減する効果もある(図ー5)。

(3)免振橋梁技術
免振設計とは,構造物をゴム支承等の水平方向の剛性が軟らかい装置により支持して長周期化を図るとともに,ダンパーによりエネルギー吸収性能を向上させて,構造物の地震時の振動を低減し,「より安全」な橋梁の建設を可能にする設計法である(図ー6)。このため,非常に大きな地震が生じたとしても,橋にはほとんど損傷を生じさせないような設計も可能になる(図ー7)。

(4)道路周辺における災害防止工法
いつでも安心して利用できる斜面災害に強い道路ネットワーク整備のため,落石に対しては施工性および耐衝撃性に優れた落石覆工の開発を行う。
さらに斜面災害の中でも規模が大きく覆工では対処不可能な岩盤崩壊を対象としたのり面災害防止工法とその設計・施工技術の開発を行う(図ー8,図ー9)。

(5)道路交通情報の高度化
道路管理者,道路利用者が各種道路状況(気象,路面状況,交通状況等)を正確に把握し利用するため,道路交通情報システムの収集処理系,提供系において画像処理,赤外線,リモートセンシング,マルチメディア等の新技術を応用する(図ー10)。
併せて,システムの拡張性やデータの整合性,広域交換性を確保するためインターフェイス等の標準化を推進する。

(6)舗装管理システム(PMMS)
舗装管理システムは,舗装の維持,修繕,管理に関する行為を最も合理的に行うためのシステムである。舗装に関する情報の収集・蓄積を行い,その情報に基づいて,限られた予算を最も効果的に使用する補修計画の策定を行う(図ー11,図ー12)。

10 今後の方針
以上のような技術テーマについて,前半で示した推進体制のもとで,第11次道路整備五箇年計画内で目標とする水準まで技術開発を進め,道路の調査・計画,設計・施工,維持・管理にいたるあらゆる段階で積極的に導入,普及の実現を図っていく。

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