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土木研究所研究五箇年計画

土木研究所道路部交通安全研究室
主任研究員
(前土木研究所企画部企画課
建設専門官)
酒 井 洋 一

1 土木研究所研究五箇年計画策定の経緯
自然環境の保全,豊かな生活環境の創造などをはじめ,社会資本整備に対する国民のニーズが多様化している。一方,高齢化の進展に伴って技能労働者の減少など,建設事業をとりまく環境は厳しくなってきている。これらの状況のもとで,より効率的で質の高い建設事業を推進していくためには,建設技術の研究開発に一層精力的に取り組んでいくことが必要である。建設省としても「21世紀を展望した建設技術研究開発のビジョン(平成6年7月29日答申)」を受けて,建設省技術五箇年計画を策定しているところである。
このため,土木研究所では,平成5年度に環境部,材料施工部の設置などの組織改編を行い,より総合的に研究できる体制を整備したところである。さらに,多岐の分野にわたる課題に,計画的,積極的に取り組むために,21世紀初頭の建設技術を想定した「土木研究所五箇年計画(第4次,平成6~10年度)」を策定した。

2 土木研究所の役割と基本方針
土木研究所においては,これまで社会資本の整備を技術面から支援するため,様々な技術の基本概念を構築するとともに,その技術を実現する手法(設計法,調査法,評価法等)を研究し実用化してきた。また,成果を全国的に普及するための基準化や標準化に取り組むとともに建設事業を推進していく上での技術指導を含めた技術的支援を行ってきた。また,わが国の技術の海外移転のための支援等についても積極的に貢献してきた。
今後は,これらを踏まえ以下のような研究方針に基づいて研究を推進していく。
(1) 建設省が所管する施策および事業(社会資本整備等)を推進するため政策的視野に立脚し,技術的課題を見いだして解決する。
(2) 全国的かつ統一的な見地から技術的課題を解決し,設計・指針・基準等の策定を含めた実用的な技術システムを構築する。
(3) 将来の建設技術を先取りする研究および総合化するための研究を実施する。
(4) 他分野における新技術・新材料等の先端技術を建設事業へ取り入れていくための評価・適用技術に関する研究を実施する。
(5) 国際的役割を果たすため,先進的な国際研究協力や海外技術移転に関する研究を実施する。

3 土木研究所における研究の流れ
土木研究所における研究の分野および流れを以下に示す。
◦研究分野
社会資本整備を推進して行く上で必要となる技術に関して,以下のような分野について研究する。
・解析法,評価手法,計画手法,調査法,試験法,設計法……方法論
・施工法,維持管理法,適用評価,機器開発,システム開発……個別および組み合せ技術
◦研究の流れ
土木研究所における研究の流れを以下に示す。

なお,技術システムを構築するための研究手段は以下のとおりである。
・自ら研究を積極的に推進する。
・他分野等の先端的かつ専門的な知見や技術の導入のためには,大学や民間との研究連携を図る。
・研究連携に際しては,他部門に対して研究開発の方向性や具体的目標を明確に提示する。
また,技術システム構築に際して大学や民間との研究連携を図る場合には,以下に示すような役割を期待している。
学:・技術開発の基礎となる分野での研究
  ・長期的な方向性や技術のあるべき姿の探求
  ・このような研究の蓄積を基にした,技術開発の目標水準に関する助言や評価
民:・目標達成のための要素技術の研究
  ・各種技術を個別の状況に適用していくための研究

4 構 成
研究五箇年計画の構成は次の通りである。
第1章 近代日本における土木技術の歩み
第2章 近代土木技術の発展を支えた土木研究所の成果と役割
第3章 研究の基本的方向
第4章 五箇年の重点研究方針
第5章 研究計画の推進方策および成果の普及方策
参考資料ー1 研究課題例(68分野,76課題)
参考資料ー2 研究課題一覧表(約620課題)
約620の研究課題を研究面から8つの目的に分類するとともにわかりやすい項目(2~3項目)で整理した(図ー1)。なお,参考資料ー1には,重点的な研究課題について,最終的目標とその効果および五箇年間の目標をイメージ図とともにわかりやすく示した。

5 研究課題例
五箇年で取り組む課題の内,代表的なものについて,以下に紹介する。
◆高品質堤防に関する研究(国土保全および防災)
河川堤防に対する多様な要望を満たすべく堤防の機能を向上させる技術の構築(図ー2)。
五箇年目標:既存の堤防の強度評価手法の確立,強度向上のための対策工の提案

◆火山防災対策に関する研究(国土保全および防災)
火山噴火災害,特に火砕流に対するソフトおよびハードな対策を提案(図ー3)。
五箇年目標:火砕流予測手法およびハザードマップの作成,対策工の提案

◆超長大橋の設計施工技術に関する研究(国土の均衡ある発展)
海峡横断等の超長大橋の建設を可能とする耐風設計法の確立(図ー4)。
五箇年目標:超長大橋の耐風安定性を向上させるケーブルシステムの提案

◆歴史的・文化的土木施設の保存活用に関する研究(環境の保全・回復・創造)
個性的で文化の香り高い地域社会の形成の核となる土木施設の評価・活用(図ー5)。
五箇年目標:全国の歴史的・文化的社会資本の評価保存活用マニュアルの提案

◆省資源・省エネルギー型国土建設技術に関する研究(資源エネルギーの有効利用)
エネルギー消費量を削減する資材工法の開発により地球温暖化防止に寄与(図ー6)。
五箇年目標:エネルギー消費CO2発生量把握システム,省エネルギー型工法の提案

◆次世代道路交通システムに関する研究(新たな社会資本整備の展開)
道路と自動車が一体となった安全で効率的な道路交通システムの確立(図ー7)。
五箇年目標:車間側方コントロールシステムの実用化

◆高強度コンクリート部材に関する研究(施工および建設材料の高度化)
橋梁の桁の小断面化や施工の省力化のための軽量なコンクリート部材を実現(図ー8)。
五箇年目標:高強度コンクリート設計基準の提案

◆新たな建設技術評価手法に関する研究(建設事業のマネジメントの合理化)
工事価格の他,工期・品質・安全性などの要素について総合的に評価する手法の確立(図ー9)。
五箇年目標:技術総合評価方式における技術評価手法の確立

◆長寿命橋梁に関する研究(社会資本の維持管理・更新技術の合理化)
道路橋の維持管理作業・費用等を大幅に低減する長寿命橋梁の設計法の確立(図ー10)。
五箇年目標:ミニマムメンテナンス橋の提案

6 研究五箇年計画と研究の実施体制
以上のような研究五箇年計画を着実に推進するために,研究の実施体制・支援体制および成果の普及体制を充実する。また,時々刻々変化する杜会情勢や種々のニーズにも柔軟に対応していくための体制を整えていく予定である。具体的には,研究をより円滑に推進するための研究計画委員会や研究成果をより客観的に評価するための体制を整備する。

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