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久留米地区維持修繕工事における新たな試み(凍結抑制舗装)
吉村博秋

キーワード:国道3号、多機能型排水性舗装、凍結抑制舗装、新技術

1.はじめに

近年、冬期における道路管理は大雪や路面凍結の影響により交通障害等の被害が発生しているところである。久留米維持出張所が管理している国道3 号及び210 号においても、冬期道路の通行確保のために、昼夜を問わず気象情報を的確に把握し、凍結防止剤散布等を実施して、路面凍結によるスリップ事故防止を図り、安全・安心な道路環境の確保を実施してきた。特に、国道3 号は北九州市を起点とし鹿児島市に至る九州の主要幹線道路であり、熊本県に通じる福岡県八女市立花町上辺春地区は、標高300m の山間を通っている(図ー1)。このため冬期には通行確保のため、凍結防止剤散布が欠かせないところである。また、一方においては、道路維持管理予算の厳しい現状や建設作業員の高齢化・作業環境の劣悪の中、安全・安心な道路環境の確保に苦慮している。このような現状を踏まえて、今回、凍結防止剤効果が持続し凍結防止剤散布回数の軽減を目的として、舗装補修箇所において多機能型排水性舗装の施工について述べる。

2.施工箇所の冬期路面管理概況

3 年間の冬期における凍結防止剤散布状況は表ー1及び写真ー1のとおりである。
気象協会から発出される雪氷予測等を基に準備体制を取り現地確認をしながら事前の凍結防止剤散布を行っている。しかしながら冬仕様に対応していない車両が大半であり、3 年間の間も路面凍結によるスリップ事故等が発生し、その処置において通行止めも実施している。

3.工事概要

今回の施工箇所は前述のとおり冬季の積雪、凍結がある。また、近隣に砕石工場があり、大型ダンプが頻繁に出入する交差点を含んでいるため、特に凍結防止材の持続性の上に加え耐流動性、骨材飛散抵抗性にも着目し対応を図った。

3-1 多機能型排水性舗装(FFP)の特性

多機能型排水性舗装(以下FFP)は特殊改質アスファルトを採用した合材配合とシニックスクリードを装着したアスファルトフィニッシャによる敷き均しにより以下の特性を有する。
・1層施工で排水性機能と防水機能の2 つの機能を持っている。
・耐流動性と骨材飛散抵抗性に優れている。
・凍結防止剤の流出が少なく凍結防止剤の持続性が高くなる(写真ー2)。
・路面を粗面(縦溝粗面)に仕上げることでブラックアイスバーンの解消が図れる。
・縦溝粗面効果による視認性の向上。
・路面の上部は空隙が多いので、密粒度の舗装より、タイヤ路面騒音値が低減される。
・排水性舗装と同等のキメ深さが得られる。

3-2 道路の構造・路面の状況

現状の交差点部(写真ー3)については、大型ダンプのねじりによる表層の骨材飛散が著しい。当初設計では、密粒度ギャップ改質Ⅱ型5㎝の切削オーバーレイの予定であったがFFP5㎝の切削オーバーレイとした。

3-2-1 FFP の構造

従来の排水性舗装は、2 層構造(排水性舗装+基層(粗粒度アスコン))が一般的なため、図ー2のように浸透水の影響で下部の舗装およびジョイント部の品質劣化が進行し、また寒冷地では、空隙部に残留した水の凍結膨張が原因で舗装の破損がみられる。FFP は、1 層構造で、表面付近は排水機能、下部はSMA(砕石マスチック舗装)の防水機能を持っているため、図ー3のように防水層部が水の浸透を遮断し下部舗装の品質劣化を防ぎ排水性舗装に比べて舗装体内からの破壊の懸念が少なく、舗装上部の10㎜~15㎜厚の排水層の空隙が凍結抑制剤の残存率を高め、凍結抑制効果持続時間を大幅に改善する構造になっている。また、高性能改質アスファルトを使用することにより、耐流動性、骨材飛散抵抗性に優れている。

3-2-2 FFP の路面状況

排水機能向上を目的として施工時において機械的に粗面仕上げとなるようアスファルトフィニッシャを改造している。舗装表面は、この専用アスファルトフィニッシャによる敷き均しにより舗装表面に縦溝が形成され(写真ー4、写真ー5)、排水機能の確保、タイヤ路面騒音の低減、走行時の視認性向上、また積雪寒冷地に於いては、路面凍結によるスリップを抑制する。FFP の最大の特徴である縦筋は、写真ー5のとおり凹凸は微細なもので2 輪車の走行に於いて影響を及ぼすものでは無い。

3-3 工事内容

工事名  久留米地区道路維持修繕工事
受注者  建設サービス株式会社
施工者  株式会社ガイアートT・K
施工日  平成24 年12 月18、19 日
    (夜間施工)
施工場所 福岡県八女市立花町上辺春地先
施工面積
 切削オーバーレイ 上り 435㎡
 切削オーバーレイ 下り 340㎡

4.施工
4-1 施工特性

施工特性として、FFP は写真ー6のようにシニックスクリード(フィニッシャのタンパー部分に40㎜間隔でビットを装着)を装備したアスファルトフィニッシャを使用し敷き均す。特殊改質アスファルトを使用していることから適切な混合物の温度管理が要求され、製造段階及び施工時には細心の注意が必要となる。
また、下部構造体の品質による影響が大きい事から、強度のあるアスファルト舗装版やコンクリート版上の施工を推奨する。

4-2 配合

上表の目標値を確保すべく、配合計画を行なった。
骨材の性状によりプラント毎に配合は異なるが当工事におけるFFP の配合を表ー3~表ー4に示す。FFP は排水機能と防水機能の2 つの機能を持つため、表ー3の骨材配合比を見ても分かる様に粗骨材(6 号砕石)石粉の配合比率が多い。

本来ならば配合を決定するにあたって2.36㎜の通過率を中央値の22.5%付近に設定するが、透水量を確保するため、やや下限値の20.0%とした。As 量もマーシャル安定度試験でのOAC は、4.9%であったが加圧透水試験を行った結果透水し、As 量5.2%では、平均で1.0 × 10-7㎝/secを下回るため、排水機能、防水機能を満足できるOAC としてAs 量は5.2%とした。
4-3 施工機械
施工機械は、シニックスクリードを装備した専用アスファルトフィニッシャを使用すること以外は一般的な舗装と同様でマカダムローラ(10~12t)、タイヤローラ(8~20t)を使用する。
4-4 試験施工
施工に先駆けて、目標値が確保されることを確認するために試験施工を行なった。温度管理が重要なポイントとなるため、実際と同条件で合材を運搬し、施工を行った。温度低下の確認、舗装完了後の密度、浸透水量、路面のキメ深さなどの確認を行い、混合物出荷温度目標178℃、初期締固め前温度目標170℃、初期転圧回数11 回と決定した。
4-5 本施工
本施工では、試験施工の結果を基に合材の出荷温度に注意を払うとともに、合材運搬は温度低下を最小限にするため、麻シートと保温シート(G シート)の二重シートとした。
転圧機械については、マカダムローラ、タイヤローラを使用する通常の施工方法であるが、マカダムローラによる転圧時の合材温度と転圧回数が品質を大きく左右することから転圧回数の管理は指導員を配置し徹底した。
施工の状況を写真ー7に示す。

また、アスファルトフィニッシャにより機械的に舗装表面を粗面に仕上げるため、品質にも影響を及ぼす人力施工部は極力少なくなるように計画した。結果として平均コア締固め度99.7%を確保し、路面のキメ深さ、浸透水量、すべり抵抗値については表ー5に示すとおり目標値を満足することができ、良好な施工を行う事ができた。
完了後を写真ー8に示す。

5.追跡調査
目視確認では、流動及び骨材の剥離、飛散は見られなかった。
当工事におけるFFP の施工直後及び施工7 ヶ月後の追跡調査(写真ー9)の結果を次の表ー6~表ー10 に示す。

5-1 路面のキメ深さ測定
測定結果(表ー7)より施工直後の平均値が1.496㎜であったのに対し、7 ヶ月後の平均値は1.422㎜とほぼ同等の数値が維持されていた。この結果より、施工直後と同等のキメ深さが確保されている。

5-2 現場透水試験測定
測定結果(表ー8)より施工直後の平均値が1134m/15sec であったのに対し、7 ヶ月後の平均値が780m/15sec となり、施工直後に比べ7 ヶ月後の値は大きく下回る結果となった。また、施工直後の目標値である800m/15sec をも下回る結果となった。これには空隙詰まりによる影響も考えられるが今後の路面性状の変化を注意深く観察していきたい。

5-3 すべり抵抗試験(BPN)
ポータブルスキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定結果(表ー9)より、施工直後のBPN20 平均値が64 であったのに対し、7 ヶ月後のBPN20 平均値が67 となり、若干ではあるがすべり抵抗値が上がる傾向を示した。この結果より、7 ヶ月経過時でも施工直後の目標値であるBPN2060 以上を満足しており、すべり抵抗については良好な状態を維持していると言える。

また、DF テスタによる動摩擦係数の測定結果(表ー10)より、速度60㎞ /h における動摩擦係数μ 60 の施工直後の平均値が0.33 であったのに対し、7 ヶ月後の平均値が0.38 となり、BPN20同様、若干ではあるがすべり抵抗値が上がる傾向を示した。この結果より、BPN20 同様のことが言え、すべり抵抗については良好な状態を維持していると考えられる。
施工直後及び追跡調査結果より、当現場におけるFFP の路面性状は、路面の粗さ試験及びすべり抵抗試験については施工後7 ヶ月を経過しても引き続き施工直後の目標値を満足していることが確認できた。しかし、現場での浸透水量については、施工直後の目標値800ml/15s を下回る結果となった。これは空隙詰まりによる影響も考えられるが、個々のデータでは目標値を上回る結果が得られているものもあり、また、路面の粗さについては施工直後とほぼ同程度の性状を維持できていることから、今後定期的な追跡調査を実施し路面性状の変化を注意深く見ていきたい。

6.結びに
今回の新技術(FFP)施工後約1 年が経過したが、交差点部を始め骨材飛散もなく良好な路面状態を保持している。また、施工直後に冬期の凍結防止剤散布(事前)を数回実施した。その時の路面状態においては凍結防止剤の持続性が見受けられたが、積雪や凍結状態での明確な効果は見られず検証できなかった。はじめにも述べたように、国道210 号の大分県境付近においても冬期の通行確保が必要不可欠であり、多機能型排水性(FFP)の試験施工を計画中である。
最後に、近年の異常気象の中、今年も冬期を迎えるに当たり、FFP の耐久性並びに諸機能の有効性について、その検証が早く待たれるところである。
また、今回の執筆にあたり、貴重な資料及び情報提供をしていただいた建設サービス㈱並びに㈱ガイアートT・Kの工事関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。

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