九州縦貫自動車道基山パーキングエリアにおける
高速バストランジット構想
高速バストランジット構想
福岡大学 工学部 社会デザイン工学科
教授
教授
井 上 信 昭
1 はじめに
九州は高速バスの先進地域と言われているが、運行中の路線の多くが福岡空港を含む福岡市に起点を持ち、その運行本数は総じて非常に多い。このため九州の高速バスは、福岡市と九州内の主要都市との移動にはとても便利な公共交通手段であるが、福岡市以外の都市相互の移動には利便性が低く、利用価値の小さい公共交通手段の位置付けでしかない。この実態は、都市間のバス需要を背景としており、採算性を前提とする限り、福岡市以外の都市相互に利便性の高いバス路線の導入は期待できない。
しかし、高速バスの福岡市一極集中型の多様な系統・高頻度の運行特性、および図-1に示すように九州の高速道路が鳥栖ジャンクション(JCT)でクロスして福岡市と九州各地を結ぶというネットワーク特性により、太宰府インターチェンジ(IC)と鳥栖JCT間の18km区間にはひっきりなしに高速バスが走り、さながら高速バス銀座となっている。
そこでこの区間にある基山パーキングエリア(PA)において、上下線のバス停をつなぐ施設を整備して、高速バス相互のトランジットを可能にすれば、九州の高速バスは全く違った姿を示す。すなわち、現在の路線網のままでも、福岡市以外の都市相互を結ぶ高密度・高頻度の高速バス路線網を実現できるのである。
本稿では、この高速バストランジット構想を提案するとともにその整備効果を分析する。
2 基山PAの高速バストランジット構想の提案
2-1 提案の背景
(1)九州の高速バスの概要
表-1は、九州と全国の高速バスの主要指標を示す。全国に占める九州の事業者数や系統数の割合に比べ、運行回数の割合は19.8%、輸送人員は16.4%と非常に大きく、九州の高速バスが地域の幹線旅客交通に果たす役割の大きさが伺える。
表-2は、九州の高速バス事業に関する主要指標の時系列変化を示す。高速バス事業者数は1990年以降一定数を示しているが、運行系統数は近年、減少傾向にある。しかしその運行回数と輸送人員は、安定した増加傾向を続けている。その結果、高速バス事業の運送収入が九州全体の路線バス事業に占める割合も増加を続け、近年は20%近い状況にある。高速バスがバス事業者の大きな収入源となっていることが伺える。
また九州ではバス事業者が協力して、高速バスサービスの拡充に努めていることも大きな特徴である。ここ数年でも以下のような先進的な取り組みが行われ、そのサービスは非常に魅力あるものになっている。
① 2005年3月1日から、九州の高速バス会社の予約システムが一元化されるとともに、定額で北部九州5県の全高速バスが3日間乗り放題の”SUNQパス”が導入された。
② 2006年3月24日から九州全体の高速バスロケーションシステムがスタートし、4月1日には”SUNQパス”の全九州版が登場した。
③ 2007年4月20日には、高速バスと一般路線バスを網羅したインターネット利用の”九州のバス時刻表”がスタートした。
“SUNQパス”は、2005年8月に韓国でも発売されたが、2006年度の累積発売枚数の実績(28,817枚)のうち韓国での発売が22%を占めており、外国人観光客の便利な移動手段となっている※。このため2007年7月からは台湾での発売も始まっている。
(2)九州の高速バスの特性
九州の高速バスは運行本数も多く、バス事業者が連携して行う施策も多様で、利便性の大きい公共交通手段であるが、路線は福岡空港を含む福岡市への一極集中構造である。表-3は、九州の高速バスの運行本数を、福岡市に発着点を持つか否かで分類したものである。
まず夜行を中心とする長距離路線(広島以遠)は、福岡市発着が18便、福岡市以外発着が12便の合計30便に過ぎず、大部分は九州内あるいは九州⇔山口間の路線である。その内訳は福岡空港を含む福岡市発着が全体の62.9%を占めており、福岡への一極集中が顕著である。福岡市以外の路線では、地方の拠点となる県庁所在都市相互でもわずか42.5便であり、大部分は自県内を中心とする最寄り空港へのアクセス路線が中心である。
このように九州の高速バスは、福岡市と九州や山口の主要都市との移動にはとても便利である一方、福岡市以外の都市相互の移動には極めて不便な状況にある。しかし、このような現状の路線網は需要を背景としたものであり、大幅な路線変更は不可能である。
図-1に示すように九州の高速道路網は、九州縦貫自動車道と九州横断自動車道を骨格とし、そのクロスポイントは福岡市から直線で30km弱の鳥栖JCTである。幸いなことに福岡市を起点とするほとんどの高速バスが、福岡都市高速道路を経由して九州縦貫自動車道に乗り、鳥栖JCTで大分県、熊本・宮崎・鹿児島県、そして佐賀・長崎県、の3方向に分岐する。
図-2は、この鳥栖JCTを通過する高速バスを対象に、方向別の路線数や運行本数をまとめたものである。鳥栖JCTの北側区間が”高速バス銀座”と呼ぶに相応しく運行本数が多いこと、そして福岡市と九州各県を結ぶ高速バスが系統数、運行本数とも多数あるのに対し、佐賀県・長崎県と大分県、佐賀県・長崎県と熊本県等を結ぶ高速バスは極めて限られていることが分かる。
したがって、鳥栖JCTの北側に位置する基山PAに上下線のバス停をつなぐ施設を整備して、福岡市と九州の各都市を結ぶ高速バス相互の乗り継ぎ(トランジット)をさせれば、 福岡市以外の都市相互を結ぶ高密度・高頻度の高速バス路線網を実現できることになる。
2-2 基山高速バストランジット構想の提案
(1)基山PAの位置とトランジット施設
図-3に、福岡市の南にある太宰府ICと鳥栖JCT間の位置を示す。基山PAは、高速バスが分岐する鳥栖JCTの北5.2kmの位置にあり、この間の所要時間は4分前後であり、往復しても10分未満である。
この基山PAに図-4のような上下線のバス停を結ぶ施設を整備して、異なる高速バス路線の乗り継ぎを実現するものが、本稿で提案する高速バストランジット施設である。現状では、例えば大分市から熊本市の移動では、両市を結ぶ高速バスの直行路線がないため、高速バス利用は不可能である。しかし基山PAでトランジットができれば、まず運行本数の多い大分発福岡行きの路線に乗って基山PAで下車し、同じく運行本数の多い福岡発熊本行きの路線にトランジットすれば、高速バスによる移動が可能になる。この場合、鳥栖JCTから基山PAの間は往復することになり、乗り継ぎの時間も必要になる。しかし、直行路線のない現状に比べれば、大変なサービス改善となる。
基山PAのバストランジットができるようにすれば、乗り継ぎによって福岡市以外の九州各県の主要都市相互を結ぶ高速バス路線網が形成されることになり、広域的なバスサービスが飛躍的に改善される。さらに、九州と本州や四国との長距離路線のサービスまでも改善され、新しい需要を誘発することが期待できる。
(2)トランジットと移動のパターン
基山PAで高速バストランジットを行うパターンは、図-5に示すような4つに分類できる。
① 東・西型
・大分県内の主要都市と佐賀県、長崎県内の主要都市間の移動のため、トランジットするパターン
② 西・南型
・佐賀県、長崎県内の主要都市と、福岡県南部(久留米市、大牟田市)、南九州三県(熊本、鹿児島、宮崎)の主要都市間の移動のため、トランジットするパターン
③ 東・南型
・大分県内の主要都市と福岡県南部、南九州三県の主要都市間の移動のため、トランジットするパターン
④ 全域型
・小倉、福岡、福岡空港という北部九州の3ヶ所の都市・拠点と、上記①~③に示す全ての主要都市間の移動のため、トランジットするパターン(例えば、熊本から福岡空港に行くため、まず便数の多い福岡行きに乗り、複数の路線が集まって便数が増える基山で福岡空港行きにトランジットする。)
図-6は上記に示した基山PAでのトランジットパターンに応じた旅客の移動パターンを示しており、①~③は上り線で降車して下り線のバスにトランジットするのに対し、④は上り線から上り線、あるいは下り線から下り線へのトランジットである。④の全域型は乗り継ぎのためのバス停が同一であるため、現状施設のままでも十分可能である。したがってその周知さえ進めればかなりの需要が見込めるものと思われる。
3 構想の実現により期待できる効果
3-1直接効果
基山PAでの高速バストランジットが実現すれば、表-4のような直接効果が期待できる。
効果計測は、現状(現状のままのトランジット)、トランジット施設を整備したうえで全てのバスを停車させてトランジットする構想ケースの利便性をそれぞれ計測し、その比較によって行った。
(1)ODペア数による直接効果の把握
現状に比べて、構想ケースで上記の効果が発現する都市ペア(現在の高速バスの起終点の組み合わせ)数をまとめると、表-5のようになる。乗り継ぎを前提にすれば、高速バスだけで移動できる都市ペア数が76、その中で運行本数が増加するものが54ペア、JRに比べて所要時間が短縮するものが25ペアと、現在の高速バス路線網のままで、全体の高速バスサービスが大幅に改善されることがわかる。
(2)安い運賃の公共交通の出現
高速バスの魅力の1つが安い運賃である。図-7に九州の主要な都市間のJR、高速バスの運賃・料金を比較したが、いずれの区間においても高速バスの運賃は1~2割安い。2004年3月には九州新幹線が部分開業し話題を集めたが、運賃・料金をみると、福岡⇔鹿児島間で新幹線利用は7800円であり、高速バスの4000円(最割引切符3750円)と比べると、非常に割高である。
九州新幹線はあと3年少々で博多⇔鹿児島が開通する予定であり、福岡市中心の交通における鉄道の優位性は高まる。しかし、福岡市以外の熊本⇔長崎、大分⇔佐賀といった地方都市相互の交通に対しては、新幹線を軸にした鉄道交通は割高というだけでなく、利便性においても必ずしも優位性を確保できない。基山PAの高速バストランジットを実現して、利便生が高く割安な公共交通手段を確保する意味は非常に大きい。
3-2 その他の効果
(1)本州関連の長距離高速バスのサービス拡充
福岡市を除く九州内から本州方面へ向かう長距離高速バス路線(夜行)のうち基山PAを通過するものは10路線あり、その路線概要は、図-8のとおりである。
九州側の起点は、長崎、佐世保(ハウステンボス)、熊本、鹿児島の4市であり、運行本数はいずれも1日1便にすぎない。現在の運行システムでは、この長距離高速バスサービスを利用できる需要は4市とその周辺地域だけであり、市場規模は非常に小さく、採算性も低いはずであり、増便はもとより、もっと多様な地域間を結ぶ路線の新設などは望めない。
しかし、基山PAで九州内の主要都市を結ぶ高速バスとの乗り継ぎが実現すれば、福岡県北部を除く全九州が、九州外への長距離路線を利用できる潜在需要となる。潜在的な利用人口は、せいぜい100万人程度から福岡県北部を除く九州全体人口である1000万人規模に拡大する。その結果、利用客の大幅な増加が見込め、採算性の改善や増便、さらには全国各地の主要都市との間に、路線の新設も期待できる。
(2)公共交通のリダンダンシーの確保
現状では、福岡市以外の九州の主要都市相互を結ぶ公共交通手段は、鉄道だけに頼っている状態に等しい。このため、災害などにより万一、鉄道がストップしたときには、代替手段として一般道路を走るバスを特別に用意する必要がある。しかし、基山PA高速バストランジットが実現すると、多様な都市相互を結ぶ高速バスネットワークが確保されるので、非常時における公共交通のリダンダンシー(代替機能)の確保という意味から、その整備効果は大きい。
(3)九州外からの来島者への九州情報の提供
鳥栖JCTを中心とする高速道路の日交通量を図-9に示す。基山PA前の交通量は九州最多の96千台/日である。仮にバスの平均乗車人数を20人/台、その他車両を1.2人/台とすると、この地点の人数ベースの移動量は14万人に達し、これは福岡市の博多駅や天神駅を上回る。
これだけの移動量がもつ購買力ポテンシャルのかなりの割合が、九州以外からの観光目的等の来島者であると思われる。そうした人々に、九州全体の観光を中心とした最新情報をこの場で提供できれば、その効果は絶大である。あるいは九州各県の食を代表する店舗の出店を行えば、ここでは毎日が”九州の食の祭典”となり、出店者には”自慢の味”のまたとないPRの場となる。
基山PAのトランジット施設と一体化して、こうした九州内の情報や特産品の提供の場としての利用がもたらす効果は非常に大きい。
(4)道路施策等への効果
a. 高速道路のサービス享受者の拡大
これまで高速自動車国道の管理者であった国土交通省、そして2006年10月に日本道路公団が分割・民営化されて新しく誕生した3つの高速道路会社には今、これまでに整備した高速道路をいかに有効に利用し効果の最大化を図るか、ということが道路行政上あるいは経営上の最重要課題として厳しく問われている。その一環として国土交通省主導で、全国各地で料金体系の弾力的運用による多様な社会実験が行われているが、その目指すところは、高速道路の自動車交通量の増加である。その結果、マイカーや貨物自動車が直接、間接の効果を享受できる機会が増えることは間違いないが、高速道路の整備効果の把握には今1つ重要な視点が必要である。
それは、マイカーや貨物自動車以外の利用者、すなわち、公共交通手段の利用者にも高速道路の整備効果を幅広く享受してもらう条件づくりである。そしてそれは、質の高い高速バスサービスを提供することによってのみ実現できる。
ここ九州では、既存の高速バスシステムのままでは、そのサービス享受者は福岡市に行き来する高速バス利用者にほぼ限定されてしまうが、基山PAでのトランジットが実現すれば、現在の高速バス路線のままで、福岡市以外の都市相互の移動に高速バスサービスが提供され、高速道路の整備効果の恩恵を九州全域の人々が享受できる。
これからは、全国の中での東京、九州の中での福岡といった広域拠点都市以外の、地方都市相互あるいは地域相互での多様な交流が進むものと思われる。そうした交流の促進には、マイカー交通だけでなく公共交通の果たす役割が今後はより一層重要になる。こうした観点からも、本プロジェクトが果たす役割は、極めて大きいと思われる。
b. 高速道路の上下線のSA、PAの見直し
高速道路のSAとPAは、一定の基準で設置されているため、隣り合う施設相互あるいは本線を介して向かい合う上下線施設の競合が行われず、サービスに対する利用者の不満の声が大きい。公団の民営化により、こうした面での改善は急速に進むものと思われるが、基山PAのように上下線で同じ位置に対峙している場合は、上下線の連絡施設の整備によって、向かい合う施設相互の競合も可能となり、サービス改善が期待できる。あるいは、同じような機能を画一的に収容するのではなく、上下で機能分担をさせることの効果も非常に大きいものと思われる。
さらに、九州横断道のような交通量の少ない区間では、PAといってもトイレだけの休憩機能しかないものが多いのが実状である。こうした地点でも上下線の連絡施設があれば、売店等の経営も成立する可能性がある。このように、上下線のSAやPAを相互に結ぶ施設の整備は、高速道路の付帯機能の見直しの呼び水となる可能性がある。
(5)外国人観光客への公共交通サービス改善
「新ウエルカムプラン21」(外国人観光客誘致倍増計画)等により、我が国は外国人観光客の増加に努めている。それは、観光による地域の振興が21世紀の大きな課題であることを示している。ここ九州は、観光面では我が国の中では先進地であり、今後の地域振興という視点からは、外国人観光客の誘致は国レベル以上に重要な課題である。このため国土交通省九州運輸局や九州の経済団体等でも、近年盛んに外国人観光客誘致の議論が行われている。
その観光需要を送り出す国々としては、13億以上の人口をもつ中国を中心とするアジア諸国が中心である。しかし、いくら近年の経済成長が著しいといっても、これらの国々からみた我が国の物価水準は、大きな璧である。そうした中で、低運賃で多様なサービスを提供できる高速バスが果たす役割は、非常に大きいものと思われる。九州内の高速バスと一般路線バスのほぼ全線が3日間乗り放題という「SUNQパス」の2006年度販売数のうち22%は韓国という実績は、低価格切符の必要性が明確になっている実例である。
基山PAで高速バストランジットができれば、九州内の多様な周遊観光プランを低価格で実現でき、外国人観光客の誘致にも大きな貢献が期待できる。
(6)国土交通省誕生の目に見える成果の実現
2001年に省庁再編が行われて早、7年が経過しようとしている。このうち国土交通省は、道路という最も基幹的交通インフラの管理者たる建設省と、運輸行政の監督官庁であった運輸省が他の2つの庁とともに合体成立した。交通・運輸行政を総合的に進めることが可能になるという関係者の願いを込めたのか、新省名には”交通”という語句が取り入れられた。
この省庁改革が行政改革の一環として行われたことは周知のことであるが、単なる看板の付け替えではなく、私達の生活に不可欠の交通において、目に見える成果(サービスの改善)が求められている。しかしながら今のところ、九州の中にその実例は見当たらない。そうした中で、この基山PAの高速バストランジット施設は、既に供用中の高速自動車国道に付帯施設を建設し、高速バスのトランジット拠点として運営するもので、旧建設省と旧運輸省が一体となってハードとソフトの工夫をして付加価値を加え、公共交通のサービスを飛躍的に改善することを目指すものである。そうした点でこの構想は、国土交通省の誕生という改革の成果を、国民の目に見える形で示すことのできる最適のプロジェクトと言える。
4 高速バス利用者へのアンケート
このバストランジット構想に対する高速バス利用者の意向を調査した。調査方法などは、表-7に示す。なお、この調査は高速道路関連社会貢献協議会の2006年度助成研究の一環として実施したものである。
主な調査結果は、以下のとおりである。
① 高速バス利用の理由
利用の理由は、平休日を問わず、低運賃と起終点でのアクセスの良さが抜きん出ており、高速バスの特性を明示している。
② 利用可能性
高速バストランジットが実現した場合の利用可能性では、平日、休日ともに”利用したい”が最も多く、平日51%、休日48%を占めており、大きな支持を得ている。
③ 基山PAトランジット施設内の交流機能
基山PAでの高速バトランジットの整備に合わせ、そのポテンシャルを使って上下線の乗り継ぎ横断施設で各県の特産展や食の祭典などの催しが考えられる。このような交流イベントに対して、平日で64%、休日で70%の高速バス利用者が関心を示している。
5 まとめ
本研究では、基山PAにおける高速バストランジット施設の整備効果を、高速バスの利便性の改善について分析し、その効果の大きさや多様性を明らかにできた。さらに高速バス利用者へのアンケートにより、この構想が高速バス利用者からも支持されることを確認した。今後は、個々の効果項目のさらに詳細な分析、そして構想を実現へとつなぐための事業化調査が課題である。
なお現状施設のままでも、高速道路下を走る町道(佐賀県基山町)を経由すればトランジットは可能であるが、迂回が必要(直線50m→190m)なうえ、階段等がバリアフルであるのに加え、基山バス停で停車するバス本数も限られていたため、利用者への周知は皆無に近かった。このため、2007年7月1日からは、全ての高速バス事業者が連携して、ほとんどのバスをここに停車させるようになっている。
これを受けて国土交通省九州地方整備局では、7月1日から8月31日までの2ヶ月間、”高速バスロケを活用した乗り継ぎ社会実験”を行った。現状では移動経路はきわめてバリアフルで、待機環境は劣悪そのものであり、本構想の目指すものからは程遠いが、とにかく1歩前進である。この社会実験の結果については別の機会での報告を期待したい。
なお、本稿は次の2つのレポートを下地にまとめたものである。
1.基山パーキングエリアの高速バストランジット方式の可能性調査、2004年3月、NPO法人タウン・コンパス
2.高速道路の整備効果を公共交通利用者に幅広く享受させるとともに、高速道路上の特定地区が持つ固有のポテンシャルを顕在化させるための施設整備に関する研究、2007年3月、NPO法人タウン・コンパス、高速道路関連社会貢献協議会2006年度助成研究報告書