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コンクリート構造物におけるひび割れ対策の工夫
九州地方整備局 本田豊光
1.はじめに

現在、コンクリート構造物の施工にあたっては、膨張剤等の添加剤を混入や誘発目地を導入するなど、各現場で様々なひび割れ対策を実施しており、それなりの効果を発揮しているが、施工コストアップにも繋がっている現状がある。
今回、行合野川橋橋脚(P1、P2)の施工に当たり、従来に比べ簡易で安価な対策法により効果を挙げられるものはないか検討及び施工したので、その結果を紹介する。

2.行合野川橋の概要

行合野川橋は、九州地方整備局佐賀国道事務所が施工する西九州自動車道(唐津伊万里道路)に計画する橋梁であり、今回施工した橋脚は3本とも高さ30mを越える中空壁式橋脚である。(図-1)※行合野川橋の諸元を表-1に示す。


図-1 行合野川橋(下り線)橋梁全体一般図

表-1

3.ひび割れ対策の検討

今回の施工にあたっては橋脚の過密配筋対策として「九州地方整備局土木コンクリート品質評価委員会」(以下委員会と記述)の提言に従い、高性能AE 減水剤を使用する事になっていたため、その他の添加剤については使用しない事になった。
なお温度ひび割れ対策については、委員会では柱頭部をマスコンクリートと位置付けられており、上部工施工事対策となるため、今回の橋脚施工(表-2)にあたっては、施工業者の創意工夫提案によりエアーキャップシートで被覆養生する事とした。

表-2

4.試験施工
4.1 試験施工の内容
橋脚の施工に先立ち、図-2のコンクリート供試体(表-3)を作成し、被覆枚数の違いによる供試体内部の温度変化を測定した。
測定ケースは表-4に示す通りとし、比較として一般的な断熱材である発泡スチロールについても実施した。(写真-1)


図-2 供試体寸法図

表-3 コンクリートの配合(本施工と同じ)

表-4


写真-1 供試体温度測定状況写真

写真はケース①を測定中、その右はケース②、ケース③、右下はケース④
※エアーキャップシート:引越し等の際に使用されるビニール製の梱包材(通称:プチプチ)


4.2 試験施工結果
コンクリート供試体の温度測定期間は、本施工の工程上、平成19年11月22日~12月6日までの15日間とした。
※測定日は現場稼働日(日曜以外)
測定時間は1日3回(8時、13時、17時)
測定結果は、グラフ-1に示す通り1枚と2枚では保温効果に差が見られるが、2枚と3枚では同程度であった。最も断熱効果が高いのは発泡スチロールであるが、表-5に示す通り平均温度は2枚と同程度の結果であった。
この結果より、橋脚施工に際しては経済性を考慮し、エアーキャップシート2枚により被覆養生を行う事とした。


※測定は1日3回実施しているが、全データを表示すると分かり難くなるため、
8時の測定結果をグラフ化した。

表-5

5.橋脚施工について

橋脚の施工に際しては、柱頭部より下の躯体を7ロットに分割し、コンクリート打設を行った。(図-3)
各打設ロット毎に温度計を3箇所設置し、測定する事とした。(図-4)


図-3 橋脚コンクリート打設ロット割り図


図-4 内部温度測定位置図

最初のコンクリート打設は、平成19年12月1日に行い、2週間前後で型枠の脱型と同時に養生シート(エアーキャップシート2枚)を設置し、3月の最終脱型時期に取り外した。
なお、養生シートについては橋脚内側への設置は作業上困難であるため、橋脚外周への設置とした。(写真-2)
内部温度については、試験施工と同様に1日3回、現場稼働日の測定を実施した。(写真-3)

写真-2 養生シート設置作業状況

写真-3 橋脚温度測定状況

6.施工結果について

グラフ-2 及びグラフ-3に示す通り、内部温度は外気温の変化にあまり影響を受けずに推移しており、良好な結果が得られたと思われる。
養生シートを取り外した際もひび割れの発生は見受けられなかった。
施工後、1年以上経過した現在でもひび割れは発生していない。


グラフ-2 P1-1 ロット温度測定結果


グラフ-3 P1-2 ロット温度測定結果

※測定は1日3回、現場稼動日で実施しているが、全データを表示すると分かり難くなるため、
8時の5日毎の測定結果をグラフ化した。


写真-4 平成21年4月現在の状況

7.おわりに

今回のエアーキャップシートによるコンクリート構造物の養生は、どこでも入手可能で安価な材料を使用し、人力施工ではあるが熟練技術も特別な器具等も必要なく容易に施工でき、結果も良好であったため、有用な方法と考えられる。
使用したエアーキャップシート及び比較対象とした発泡スチロールの材料費を表-6に示す。

表-6 材料費比較表(P1 橋脚 H = 30m)

その後、同施工業者の施工した別件橋台工事においても、本シートによる養生を行った結果、ひび割れは発生しておらず良好な結果が得られている。
今回は冬場の施工時期であったが打設時期の違いによる温度変化の状況を把握し、季節毎の最適な養生方法について検証できればと考えている。
最後に、今回の温度ひび割れ対策を実施するにあたり、ご指導を頂いた「九州地方整備局土木コンクリート品質評価委員会」の方々に敬意を表すとともに、提案・施工を実施した㈱丸福建設に感謝申し上げる。

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