一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
大淀川水系大淀川河口部における河岸崩壊について
九州地方整備局 岩崎征弘
1.概 要

大淀川は源を鹿児島県末吉町の中岳に発し、都城盆地を経て中流山間の狭窄部を流れ、宮崎平野に出て支川本庄川を合わせ日向灘に注ぐ、幹川流路延長107km、流域面積2,230km2の九州屈指の河川である。大淀川では、平成17年9月台風14号により基本高水流量(柏田地点;9,700m3/s)相当の洪水(9,470m3/s)が発生し、全川的に計画高水位を上回る水位となり、甚大な被害が発生したことから、激甚災害特別緊急事業の採択をうけ、平成21年度末までに内水対策や築堤・掘削を実施することとしている。
このような中、平成20年6月22日に、柏田地点で約2,800m3/s(平均年最大流量;約3,500m3/s)の氾濫注意水位に満たない小洪水が発生した際、大淀川右岸1K000付近で昭和44年に施工された低水護岸が延長90mにわたって崩壊した。
当該地区は激特洪水時にも何も災害が発生しなかったことから、予想しなかった事象であり、その原因究明と再度災害防止対策が急務となった。当該地区は大淀川河口部にあたり、被災護岸の前面には日向灘からの吹き寄せで発達したと考えられる河道内砂州が存在する。
そのために河道内砂州をフラッシュできない小洪水時に護岸前面で急速流が発生したことにより、護岸基礎部が侵食され崩壊したものと推定された。そこで、平面二次元流況解析により上記被災シナリオを検証した上で、水制工による護岸近傍の流水制御および河道内砂州フラッシュ対策の検討及び施工を行った。
本報告は、その検討概要について取りまとめたものである。

2.河岸崩壊の状況

平成20年6月22日(日)の正午(12時)頃、大淀川右岸1K000付近(宮崎県田吉地先)の低水護岸(施工:昭和44年)が延長 約90m、幅 約5~10m、高さ 約5mにわたって崩壊した。
平成20年6月21~22日の降雨は連続雨量101㎜、1時間最大雨量36㎜/hr(宮崎観測所)であった。また、最大流量は基準地点柏田で約2,800m3/sと平均年最大流量約3,500m3/sよりも小さく、水防基準観測所である宮崎の水位は氾濫注意水位にも達しない、当該地点水位は高水敷にものらない水位であった。
当該地区は平成17年9月出水(激特洪水、柏田地点;9,700m3/s)時に、TP3.65m(高水敷上約1.65m)の水位となったものの何も災害が発生しなかったことから、予想しなかった事象であった。

3.現状分析(当該地区の河道・外力特性)
3.1 河岸高水敷及び河床の構成材料
崩壊護岸背後地である高水敷の構成材料は、砂質土であり比較的に崩れやすい土質であるといえる。また、河道低水路河床の構成材料は平均粒径D60=0.24㎜の細砂を主成分としていることから、洪水時には大きな河床変動が発生する可能性が高いといえる。

3.2 河道横断形状の経年変化
昭和47年~平成20年までの河岸崩壊地点(1K000)の河岸崩壊部前面の洗掘状況を整理した(図-3 参照)。断面の経年変化が大きく、特に河岸崩壊した右岸部は平成年代に入り河岸底部の侵食が進行していることがわかる。尚、測量結果によると今回の被災前は平成15年が最も侵食が大きく、今回の被災後はさらに約2.5m大きく侵食を受けていたことがわかる。

3.3 出水の規模(年最大流量との比較)
昭和44年~平成19年までの柏田基準地点の年最大流量と平成20年6月出水流量を比較した(図-4 参照)。
平成20年6月出水流量;約2,800m3/sは平均年最大流量;約3,500m3/sの約8割の流量であり、特に近年の出水流量と比較してかなり小さな流量であった。

3.4 砂州形状の経年変化
昭和62年から平成20年までの河道内砂州及び、河口砂州形状の経年変化を整理した(写真-3 参照)。
昭和62年以降に河口砂州がフラッシュされ、河岸崩壊箇所前面の横断方向に河道内砂州が形成されるようになった。なお、平成17年出水によりこの砂州はフラッシュされたものの、平成20年には再度形成されている。

4.現象(メカニズム)の推定

上記の現状分析を踏まえて、現象(メカニズム)の推定を行う。
4.1 河口砂州が発達していた時期
河口砂州が十分発達していた時期は、河道内砂州に対して河口部からの侵入波浪の影響はない。そのため、導流堤上流端から流入した流れによって形成される渦(図-5中の黄色矢印)によって、下流側に伸びる砂州が形成されたと考えられる。
4.2 河口砂州が消滅した後
河口砂州の消滅は、上流からの流出土砂の減少や河口周辺の開発に伴う沿岸漂砂バランスの変化等に起因するものと推定されるが、量的な因果関係は明らかでない。河口砂州が消滅すると、河口部から侵入した波浪が、河道内砂州の先端部で砕波するようになり、結果として下流側に伸びていた砂州を上流側に押し上げることになる(図-6 参照)。
河道内砂州の形状は、上流側からの搬送土砂の量と、河口から侵入する波浪のエネルギーとの関係により、一定した形状を保つことがなくなり、複雑な挙動を示すようになる。

4.3 河道内砂州地形の違いによる流路への影響
河口砂州が発達していた時期は(図-5 参照)、導流堤の上流端と砂州下端部の流路幅がほぼ等しく、上流側から流入した水塊は砂州の右岸側を迂回して、比較的スムーズな流路が確保されている。
河口砂州が消滅すると、図-7に示すように、導流堤先端部から流入した水塊は、砂州下端部の狭隘部に集中することになり、砂州上を越流するまでは、上流端に比べて数倍以上の流速が狭隘部に作用すると推定される。

4.4 上流からの供給土砂の影響について
写真-4に、大淀川の丸島から上流側の写真を示す。図中に矢印で示した場所は青島海岸と同様の「奇形波食痕:鬼の洗濯岩」を確認することができる。このことは、常時の大淀川の河床には土砂が少なく、基盤岸が露出している場所が見られており、ある程度の大出水がない場合には上流側からの土砂補給を望むことができないことを示している。

図-3に示した河道崩壊断面の横断図から、丸島よりも右岸側の最大深度を読み取り、その前年度の最大流量との比較を行った結果を図-8に示す。
同図より分かることは、1,000m3/sの小さな出水でも3.5m程度の深掘れが認められる。一方、4,000m3/s以上の場合に、最大洗掘深が上記より浅くなっているのは、外力が大きい場合は、最大洗掘深もそれなりに大きいが、流砂量も多く、当然1,000m3/s時以上にピーク時は洗掘されて、出水末期に深掘れ部に堆積したために洗掘深が浅くなっていることが考えられる。

4.5 現象(メカニズム)の推定結果
以上の分析結果について、時系列を追って整理し、現象(メカニズム)の推定結果(被災シナリオ)をとりまとめると以下のようになる。
  1. 河口砂州が発達している時期は、導流堤上流端から流入した流れによって形成される渦により細長い河道内砂州が下流側に向かって発達する。
  2. 河口砂州が消滅すると、河口からの侵入波が砂州先端部付近で砕波し、河道内砂州を上流側に押し上げ、押し上げられた土砂は右岸側に向かって、河道を閉塞するような配置になる。
  3. 押し上げられた河道内砂州により丸島より右岸側の流路が狭くなる。
  4. 河道内砂州がフラッシュされない程度の出水が作用すると、砂州と河岸の間の狭隘部の流速が非常に大きくなり、大規模な洗掘が生じ河岸の崩壊に至る。
  5. 河道内砂州がフラッシュされる程度の流量が作用する際には、上流側からの土砂供給も豊富であることから、対象河床に大きな変化が生じることはない。
  6. 結論として、河口砂州が消滅し、河道内砂州が発達した条件下で、砂州をフラッシュしない程度の流量(3,000m3/s程度)が作用すると右岸崩壊の発生につながる。

5.数値計算による被災シナリオの検証

前述した被災シナリオの推定結果について、平面二次元流況シミュレーション(単層モデル)及び、地形変化シミュレーション(泥・砂混合粒径モデル)を用いて検証した。表-1、2に、計算モデルの概要を示す。
図-9に、地形変化のシミュレーション結果を示す。図より、河岸と砂州に挟まれた狭窄部では侵食域が発生しており、護岸崩壊箇所では浸食が発生したことが容易に推定される。

6.数値計算による対策工の検討

数値計算による被災シナリオの検証が確認された数値モデルを用いて、対策工の検討を行った。対策工は、砂州を乗り越えない程度の洪水が流下した際に砂州先端の侵食を促し、流れを下流に向けるために水制工を用いることとした。検討は、図-10に示すフローに従って実施した。
図-11に、最適案の検討結果を示す。
最適案は、基本案と比較して河岸へ向かう流速が大きく低減するとともに、砂州近傍の侵食効果が増大することが確認できる。

7.維持管理方法
7.1 モニタリング
大淀川下流河口部は過去の実績が示すように、砂州形状が大きく変動する特性がある。今回の河岸崩壊箇所においては、水制工の設置により河岸付近に向かう流速が弱められ、またその要因となった砂州の発達を抑制することが可能となる。
しかし、水制工の効果が発揮されない範囲に砂州が移動・発達した場合は他の箇所で同様な事象が発生する可能性が高い。そこで、河道内の砂州の発達状況を継続的に監視することとする。
図-12に、河道内砂州のモニタリングイメージを示す。

7.2 維持管理措置の発動基準について
通常時は図-12に示す例-1 によりモニタリングを行い、砂州に変化が見られた際は護岸水中部も含めた施設の点検を行う。また、平均年最大流量程度の砂州をのりこえないような洪水が発生する等、砂州に大きな変化(現在の水制の効果発現範囲より外側に砂州が移動)が見られた際は例-1 のモニタリングに加えて例-2 のモニタリングを行う。
その結果により得られた地形情報及び定期横断測量(深浅測量)データを用いて平面二次元解析の地形データの更新を行った上で、平面二次元流況シミュレーション及び地形変化計算を実施する。
発動基準は、今回の河岸崩壊時に河岸に働いた水理量(解析解)を崩壊条件と考え、所与の安全率を乗じたうえで設定する。そして、砂州の発達及び河道形状の変化により、今回と同様な河岸崩壊の可能性がある場合には、必要な対策を講じることとする。維持管理対策としては、砂州の撤去(撤去しても沖合からの吹き寄せで砂州の直接撤去は困難が予想される)や新たな水制工設置による河岸防御及び砂州形状の誘導が考えられる。
(但し、水制工の効果が発揮されない範囲は近年の施工であり、被災個所と比較すると堅固な構造とはなっている。)
以上のモニタリング計画及び維持管理措置の発動基準の設定については、今後の研究・検討課題である。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧