一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
「安心」「活力」「発展」の実現に向けて
ー『おおいたの道構想21』大分県中長期道路整備計画を策定一

大分県 土木建築部 道路課長
蓮 見 有 敏

1 大分県の概要
大分県は九州の北東部に位置し,総面積は6,338㎢で東西方向に119km,南北方向で106kmに及んでいます。
地形的には,臼杵市と熊本県八代市とを結ぶ地質構造線によって南北に分けられ,北部地域は火山岩が多く,南部地域は古生層や中生層が広く分布し,石灰岩が多く見られます。
この複雑な地層が多様な地形と豊かな自然を生み出しており,「九州の屋根」と呼ばれるくじゅう山群をはじめ,由布・鶴見,祖母・傾等の山々が連なり,県土の約7割が林野で占められています。このように山間部の多い本県では,道路トンネル数が488箇所(市町村道を含む)と全国一位となっています。
また,海岸線は潮流の激しい豊後水道に面し,南北200kmに及ぶリアス式海岸特有の入り組んだ海岸線をなし,実に変化に富んだ美しい自然景観を誇っています。さらには,阿蘇くじゅう・瀬戸内海の2つの国立公園をはじめ,県土の約3割が自然公園等に指定されているなど豊かで多様な自然環境にも恵まれています。
気候は総じて温暖湿潤ですが,年平均気温は県都大分市で17℃,観光地の湯布院で13.5℃,県西部の日田市で15.9℃など,地域間でかなりの差があります。
人口は,昭和60年をピークに減少傾向にあり,平成12年の国勢調査では約122万人となっています。このうちの約36%が県都大分市に集中し,地方部では過疎・高齢化が進んでおり,県内全市町村に対する過疎地域市町村の占める割合は全国一位(44/58=75.0%)となっています。
観光面では源泉数全国一位,湧出量全国第二位を誇る温泉資源や,その他豊富な観光資源に支えられ,年間約5,400万人の観光客(平成14年度観光動態調査)が本県を訪れていますが,伸び率は横ばい傾向にあり新たな施策展開が必要となっています。

2 道路の現状と課題
本県の国県道は,国道16路線と県道236路線,合計252路線,約3,600kmの延長があり,整備状況は改良率で約7割となっており,ほぼ九州平均にはありますが全国に比べると低い状況にあります。
また高規格幹線道路については,九州を東西に結ぶ九州横断自動車道長崎大分線(大分自動車道)が全線供用(一部暫定2車線)されていますが,九州東部を南北に走る東九州自動車道は,津久見までの27kmのみ供用された状況であり,一刻も早い全線供用が県民の悲願となっています。
県内の地域高規格道路としては中九州横断道路中津日田道路,大分空港道路,大分中央幹線道路の4路線が計画路線に,豊後伊予連絡道路,宇佐国見道路が候補路線に各々指定されています。
このうち大分空港道路は,平成14年3月の日出バイパスの供用により全線供用しており,その他の計画路線についても,早期供用に向け現在事業を推進しています。

3 『おおいたの道構想21』 大分県中長期道路整備計画の策定
このような中,今後の行政の広域化や,広域観光への対応,さらには少子・高齢化に対応した医療福祉サービスの向上などの本県を取り巻く社会経済情勢の変化に対応した道路整備を進めていくため,平成19年度を目標年次とする『おおいたの道構想21』を昨年度策定し,公表しましたのでご紹介いたします。

この計画には大きく3つの特徴があります。
1つ目は,計画の策定段階から県民の意見を積極的に反映したことです。
県民や市町村長へのアンケートや,ホームページ等によるパブリックコメントを実施し,多くの方々から貴重なご意見をいただきました。さらには,県内に在住し各界でご活躍されている12名の有識者からなる「懇談会」をのべ3回開催し,いただいたご意見・ご提言を計画に積極的に反映しました。
2つ目は,整備目標として「成果」を重視したアウトカム指標を設定したことです。
例えば「県内60分エリアの拡大」という施策では現在,県都大分市まで約106万人の人々が概ね60分で到達可能ですが,これを平成19年度までにさらに約7万人の人々が到達可能となるような道路整備を進めるといった整備目標(アウトカム指標)を17指標設定しています。
3つ目は,「地域住民との協働」「既存ストックの有効活用」「行政の透明性の確保」など,これからの道づくりの進め方の羅針盤となる『道づくりの進め方の改革・改善』を設定したことです。
「豊ちゃく2004」(後述)の公表,有料道路を利用した社会実験の実施,1.5車線的道路整備の試行などは,これに基づいたものであり新たな施策としてすでに展開しております。
なお,『おおいたの道構想21』については,http://www.pref.oita.jp/17100/kousouでご覧になれます。

4 『とよちゃく2004』 大分県版ちゃく2プロジェクト2004の策定
次に,平成16年9月に策定・公表しました『豊ちゃく2004』についてご紹介いたします。
これは『おおいたの道構想21』で掲げた4つの将来ビジョンを確実に進めていくために,また【道づくりの進め方の改革・改善】の中の「道路整備効果の早期発現に向けて」および「道路行政の透明性の向上に向けて」の具体的な施策として策定したものです。
内容といたしましては,向こう5ヶ年の間で供用を目指す箇所として,国土交通省九州地方整備局の「ちゃく2プロジェクト2004」に掲載されています直轄事業15箇所に,県事業60箇所を加え「大分県版ちゃく2プロジェクト2004」として県民の皆さんに事業スケジュールや,期待される整備効果等を具体的に示したものであります。
本プロジェクトの公表により,事業に関する情報を県民の皆さんと共有することで,地元の協力体制の確立等のコンセンサスを得ることができるものと期待しています。さらに来年度以降も県庁のホームページ等を通じて得られた県民の皆さんからのご意見・ご感想にも配慮しつつ,内容の充実に努めたいと考えています。
なお『豊ちゃく2004』については,http://www.pref.oita.jp/17100/toyochaku でご覧になれます。

5 おわりに
長期的な景気の低迷等による,県税収入の減少や地方交付税の大幅な削減など,本県を取り巻く財政状況も危機的な状況にあることから,本県では昨年「大分県行財政改革プラン」を策定し,財政再建団体への転落の回避に向け,ー丸となって取り組んでいるところです。
このような厳しい状況ではありますが,施策の選択と集中を図り,重点的な施策に対しては機動的,集中的に取り組むなど知恵を振り絞って将来に夢と希望を持つことができる道路整備を着実に進め,県政の基本課題である「安心」「活力」「発展」の実現を目指したいと考えています。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧