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豊後大野市朝地町綿田地区で発生した地すべりへの対応について
天野伸治

キーワード:大規模地すべり、応急対策、3次元安定解

1.はじめに
綿田地区は大分県豊後大野市朝地町綿田地内に位置し、平成29 年5 月16 日に地区内の宅地で亀裂が確認された。
伸縮計による移動量は、発生当初は1㎜ /h 程度であったが、その後も降雨に関係なく加速し、5 月26 日には時間移動量が22.8㎜ /h に達するなど、水田や民家敷地、市道路面等に多数の亀裂が発生、被害が拡大した。
ここでは、この地すべりへの応急対策、調査解析及び地すべり防止計画について紹介する。

2.地すべりの概要
(1)地形概要
地形は北から南に傾斜する緩斜面で、中央に過去の地すべりによって移動したものと推定される、標高400m 程度の分離小丘(離れ山)が存在する。小丘を境に北側は圃場整備の水田、南側は未整備の水田、分離小丘の部分には民家2 戸が存在する。
西側には平井川が流れており、砂防指定地に指定され砂防堰堤及び流路工が整備されている。南側の水田部では昭和39 年に幅約80m、長さ約140m の地すべりが発生し、地すべり防止区域に指定されている。

(2)変状状況
5 月16 日に住民の通報により宅地内に亀裂を確認したが、地盤伸縮計による計測を開始した5月23 日頃から、亀裂が一気に拡大し、5 月26日には時間移動量が22.8㎜ /h となるなど、観測開始から2 週間の平均移動量は約200㎜/日、累計移動量は約2600㎜となった。その後、徐々に収束していったが、発生から約2 ヶ月間でブロック内に設置した移動杭の移動量は3500㎜~4000㎜となった。
その間に頭部及び側部では高さ3 ~ 4m の滑落崖や幅約5m の陥没帯が発生している。西側側方の平井川では押出しとはね上げにより、砂防堰堤の左岸側袖部が上方へ座屈破壊されており、両岸の袖部の高さが約6m の比高差になるほど隆起している。
末端部は押出しにより平井川の砂防施設(流路工、床固工) や市道橋の座屈破壊により河道閉塞が生じている。
地すべり変状はブロック全周に連続しており、頭部、側方、末端で典型的な地すべりによる変状現象が確認できる。

3. 応急対策
(1)地すべり監視システム
地すべりの滑動が活発であったため、伸縮計、雨量計の警報基準値を設定し、地すべりの動きを遠隔地でリアルタイムに観測、監視するシステムを構築した。
①地盤伸縮計、雨量計
伸縮計は地すべり頭部に5 基、末端部に1 基、雨量計は地区内に1 基設置し、自動観測した計測値をリアルタイムでWEB で監視するとともに、計測値が警報基準値(伸縮計:4㎜ /h または2㎜/h が2 時間以上、雨量計:20㎜ /h または80㎜/ 日)を超過した場合に、関係者にはメールで、現場には赤色灯及びサイレンで警報を通知した。
② WEB カメラ
地すべり頭部、末端部が監視できるWEB カメラを3 台設置し、リアルタイムで現地の状況を監視した。

(2)ハード対策
①雨水浸透防止工
雨水や地表水が直接地下に浸透することを防止するため、亀裂をブルーシートで覆うとともに亀裂周辺に波板を設置した。
②横ボーリング工
地すべり発生当初は滑動が活発でブロック内への立入が制限されたため、ブロックの外側から27 本(L=1,721m)、地すべりの動きが沈静化してきた7 月からはブロック内で8 本(L=528m)の横ボーリング工を実施した。
毎日定時に排水量を測定したが、梅雨期には70 ~ 80./分、7 月の九州北部豪雨時には約600./分の排水効果があった。
③ディープウェル工
ブロック北側の背後斜面からの地下水の流入を防止する目的で、ブロック頭部においてディープウェル工を2 箇所( l =31m、32m) で実施した。排水量は梅雨期でNo.1 が10./分、No.2は120./分であった。
④仮排水路工
地すべり末端部の押し出しによる平井川の閉塞が懸念されたため、地すべり地を迂回する仮排水路工を大型土のうにより整備し、河川の氾濫及び地すべり末端部の浸食防止を図った。

4.調査・観測
現地踏査と移動杭及びGPS による地表変動調査の結果、地すべりブロックは東西方向に幅約250m、南北方向に長さ400m で、北北東から南南西の方向へ向かって移動していることが判明した。
測線は移動方向の北北東-南南西方向に、地すべりブロック幅が約250m と大きいことから、ブロック中央に主測線を設定し、副測線を65m間隔で3 本設定した。
ボーリング調査は各測線上に60m 間隔で18本実施し、各調査孔においてパイプ歪計、水圧式水位計による観測及び地下水検層を実施した。
当地すべり地は安山岩、礫岩、流紋岩の基盤岩の上位に火山灰質粘性土、強風化凝灰角礫岩(自破砕安山岩)が分布しているが、パイプ歪計設置後2 ~ 3 日で基盤岩とその上位の層の境界付近でリード線が切断されるなど大きな変動が計測されており、その境界をすべり面と判断した。すべり層厚は頭部で約15 ~ 20m、中央の分離小丘部で約50 ~ 55m、末端部で約15 ~ 25m になる。

地下水位は北東部が高く、南西部の平井川側が低くなっており、地下水は北~北東部からブロック内に供給され、南西の平井川に向けて流出しているものと考えられる。流動面はすべり面と地下水面付近に確認された。
地すべりの素因としては、当該地は過去にも地すべりが発生しており、強風化凝灰角礫岩と基盤岩の間にすべり面となる粘土、シルト層が挟在していたことや北側の集水地形から地下水の供給が豊富なこと、誘因は1 週間前の連続雨量(5 月12 日~ 13 日103㎜)が考えられる。

5.地すべり防止計画
(1)安定解析
今回は地すべりの規模が大きく、すべり層厚も左右非対称ですべり面も複雑な形状を示していることから、二次元安定解析では安定度評価が難しく対策工費も大きくなりやすいため三次元安定解析を用いた。また、抑制工の計画に当っては、平面二次元地下水流動解析を用いて地下水排除工の効果を判定した。

①抑制工
抑制工は地下水位が比較的浅く、地すべり層厚が50 ~ 55m と厚いことから、集水井工を計画した。
北~北東部の集水地形から流入してくる地下水を排除することを目的として、ブロック外縁部に集水井10 基、中継井1 基、各集水井から放射状に20 ~ 40 本/基(L=40 ~ 80m /本)の集水ボーリング及び排水ボーリング11 本を計画した。
また、地すべり滑動が活発であることから、施工時の安全及び将来的な安定を確保するため、ブロック外の安定した地盤に集水井を配置した。
この計画により二次元地下水流動解析を行った結果、最大で20.3m、平均5.0m の地下水位の低下が見込め、安全率はFs=1.092 となった。
②抑止工
計画安全率PFs=1.2 を確保するために地すべりブロックを3 領域に区分し、鋼管杭( φ 500、φ 508、l=15.0 ~ 39.0m) を配置した。

(2)対策工事
①集水井工
平成29 年12 月に着工し、出水期前の5 月末には集水井10 基、中継井1 基及び集排水ボーリングの施工が完了した。
②鋼管杭工
平成30 年4 月から鋼管杭の工場製作、7 月から現地で杭の建て込みに着手した。

6.おわりに
地すべりブロック内への立入が制限されるような大きな変動を示す中、調査、観測、設計、応急対策及び恒久対策工事に迅速に尽力いただいた関係各社に改めて厚く御礼申し上げたい。

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