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西鉄大牟田線連続立休交差事業の計画と施工について

福岡市土木局長
押 川 隆 男

1 はじめに
西鉄大牟田線は,福岡市の都心(天神)を起点に市域南部(大橋,井尻方面),さらには福岡県南部(久留米・大牟田方面)を直結する本市都市交通体系の中でも重要な役割を担った基幹鉄道である。このうち市域南部の副都心(大橋)地区については,昭和53年度に3.2km区間の連続立体交差化を完成しているが,起点側都心部の福岡~平尾間は平面交差で残されており交通上大きな障害となっている。そこで昭和55年度より連続立体交差化の調査を進め,昭和57年度に事業採択を受け,現在,高架橋の基礎工を施工中である。
本事業は,踏切による交通問題を解消するとともに沿線地区の健全な発展を促進する目的で,福岡市の都市計画事業として施行しており,この事業の完成により都心(天神)~副都心(大橋)間4.9kmが連続高架化となる。以下その計画と施工について紹介する。

2 事業概要
(1)事業の沿革
西鉄大牟田線(福岡~平尾間)連続立体交差化の計画がされた時点では,市内の交通量の増加は著しく,とくに都市計画道路博多駅六本松線と交差する薬院踏切での交通渋滞が激しく,朝夕のラッシュ時間帯には1時間に30分以上もの交通が遮断されている状況であった。また,薬院駅周辺地区は,都心西南部の新しい核として位置づけられているにもかかわらず鉄道による地域の分断,土地の高度利用化の遅れ等により充分な都市機能が発揮できていない状況でもあった。これらの課題を解決するため連続立体交差化が計画に移された。

(2)事業の概要
① 高架区間   福岡駅~薬院駅~平尾駅
② 延  長   1,700m 高架部 1,605m   盛土部 95m
③ 線路数    複線
④ 踏切除去数  9箇所
⑤ 交差道路   14路線  国道 1路線   市道 13路線

3 計画概要
(1)高架方式
鉄道の高架方式としては,仮線方式,新線方式及び直上高架方式が考えられる。仮線方式と新線方式では,それらを現在線の左右いずれの側に施工するか,また単線ごとに施工するか,複線で施工するかが問題となる。したがって高架方式の選定にあたっては,これらの組合わせにより経済性,施工性等を考慮のうえ選定することとなる。
本事業の場合,施工箇所が都心部であり商業業務施設,住居が連たんしていること,鉄道に沿って側道(4~5m)の設置されている区間が多いこと。起終点部の福岡駅,平尾駅は既に高架となっており,これらの駅に取付ける線形になること等を考え比較検討の結果,施工中及び完成後も既設側道が利用でき用地買収面積を最小限にとどめることができ,早期実現性の高い直上高架方式を採用することとした。

(2)高架構造
鉄道高架は大別して橋梁形式と盛土形式とがある。これを分類すると橋梁形式は,①ラーメン形式,②単純桁形式,③連続桁形式,④フラットスラブ形式等であり,盛土形式は,①盛土式,②擁壁式等となる。また,それぞれについて構造的あるいは材質的に分類するとさらに細分化される。
高架構造形式の選定にあたっては,経済性,施工性,高架下の利用,景観等を考慮し比較検討の結果,以下の形式を採用した。
① 直上高架区間
RC3径間ラーメン構造を基本とする。
(イ)駅部  2線4柱式
(口)一般部 2線2柱式
② 終点取付区間
終点部の平尾駅付近は,現在盛土高架構造であるため,ℓ=95m区間について擁壁式高架構浩とし新線より現在線へ20%の最急勾配で取付けることとした。以下,一般部,駅部の標準断面は次図のとおりである。

(3)基礎杭
基礎杭の選定にあたっては,構造物の特性,地形地質,施工環境,各工法の特長,工期等を総合的に検討し選定した。
① 構造物の特性
鉄道施設を有するラーメン高架橋の基礎となるため,鉛直荷重が約250t程度になり杭径は1.0~1.2mとなる。
② 地形,地質
地質調査の結果,土質は粘土,レキが不均一な状態で堆積している。N値も3~20とバラツキが多いが,深度20mをこえるとN値は深度とともに漸増し30m付近の砂礫層で充分な支持力を有することから杭長は30~40m程度となる。
③ 施工環境
鉄道に沿って4~5の側道が設置されているものの,商業施設,住居等が連たんしており生活道路として不可欠となっており,施工にあたっては最少限の規制にとどめる必要がある。
これらの条件を考慮して基礎杭の選定と施工法を検討した結果,基礎杭は経済的で施工実績も多い場所打ちコンクリート杭の剛結基礎形式とし,施工法については,リバースサキュレーション工法,オールケーシング工法,アースドリル工法について比較検討を行い,リバース工法を採用することとした。

3 直上高架工法
(1)直上高架工法の特長
直上高架工法とは,在来線の「直上」で高架橋を構築する工法の総称で,用地買収面積を最少限にとどめることができる特長がある。このため,いったん仮線を敷設し,あいた在来線跡地に高架橋を構築する仮線高架工法に比べて,用地費の節減と事業期間の短縮が可能であるという長所を備えている。しかし反面,営業線に近接した作業が多く安全面,施工面において難工事となること,そのため工事費が比較的高くつくこと,直上での作業となるため電車の建築限界を確保する必要から出来上がる構造物が多少高めになるといった短所ももっている。また,工事起終点の取付部では一晩のうちに電車を地上線から高架線に切替えが必要で施工上の制約があり,かなりの難工事ともなる。
本工事では,このような長所,短所及び施工条件等を検討した結果,起終点の取付部では仮線工法を,中間部では大型作業台車(ゴライアス)を用いた直上高架工法で施工することとした。
(2)大型作業台車(ゴライアス)の特長
本工事の大型作業台車は,リバース工法による高架橋の基礎杭を安全迅速に施工するために設計製作されたもので,大阪市の連続立体交差事業に使用されたものを譲り受け再使用するものであり次のような特長と利点を備えている。(大阪市の特許工法)
①電車をまたぐ構造で,可動式列車防護フェンスを備えているため,営業線と作業場所とを隔離でき安全に作業ができる。
②台車上を作業基地や材料置場として使用できるため線路両側の道路を占用,使用する幅員や期間を最少限にすることができる。
③台車上にクレーンを搭載しているため,リバース機や鉄筋等資材の積卸しが容易である。
④走行設備(レール)上を自走することができるため,機器の移動がスムーズに行える。(下図参照)

(3)直上高架施工順序
直上高架区間での高架橋の施工順序は次のとおりとなる。(下図参照)
① 着工前の状況
鉄道線路上空の高圧,通信,信号ケーブル等が大型作業台車の通過に支障する状況である。
② 支障物件移設及び土留杭施工
前記支障物件を移設するとともに,線路側,道路側の土留杭を施工する。なお,道路側土留杭は大型作業台車を支持する構造を兼ねる。
③~④ 基礎杭施工
走行レールを敷設後,大型作業台車を組立て基礎杭の施工(リバース工法)を行う。この場合,上下線の一方を施工の後,反対側の杭を施工することとなる。
⑤~⑥ 地中梁,柱の施工
線路方向の地中梁を施工し,順次ラーメン柱の施工を行う。この場合,営業線に近接する作業となるため,大型作業台車を使用し作業スペースを確保しての施工を予定している。
⑦ 上層梁,床版の施工
営業線上での施工となるため,施工した柱を支柱に移動型枠(トラベラー)を設置し,梁,床版の施工を行う。
⑧ 高架切替
起終点部の取付け工事を同時に施工(仮線方式)し一晩で高架線へ切替の後,線路直角方向の地中梁の施工を行う。

(4)基礎杭施エ(リバース工法)
現在施工している基礎杭の施工は次のとおりである。
① スタンドパイプの建込み
スタンドパイプ建込みは,パワーケーシングジャキでパイプを抱え込み,切梁を通して土留杭及び支持杭を反力にして圧入する。
② 掘削
掘削は泥水プラントの調整槽より給水ポンプにてバース孔内に泥水(ベントナイト8%,比重1.04)を給水しつつ,掘削孔内にモーターとポンプを内蔵した泥水押上方式で行う。内蔵モーターにより先端の二翼ビットを回転させて内蔵ポンプにより押上げて,加圧ポンプを経て泥水プラント設備の振動スクリーンヘ送り,土砂と泥水に分離する。分離した土砂はコンベアにて土砂ホッパーに送り排土する。一方,土砂を除いた泥水はプラント内の循環タンクに返り再び循環させる。
③ 鉄筋建込み
籠状に組み立てた鉄筋を大型作業台車上に仮置し,台車上のジグクレーンにより建込みを行う。
④ コンクリート打設
コンクリート打設は,トレミー管(内径250)をジグクレーンで掘削底まで吊り下げ,側道のポンプ車からコンクリートを圧送して,底より順次打ち上げて行く。

5 おわり
連続立体交差事業は,比較的短期間に莫大な事業費を要することから,近年,その事業効果が重視されているところである。
本事業においても,交通の円滑化は勿論のこと薬院駅周辺の再開発構想をはじめとする周辺地域の高度利用化が期待されるもので,本事業の早期完成が強く望まれている。また,本事業で採用した直上高架工法は,都市部の既成市街地での施工条件の制約があるなかで効果的な工法であり,何かの参考になれば幸いである。

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