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老朽樋管更正GC工法によるコスト縮減
~上新入第2排水樋管の更正にGCライニング工法を採用~

建設省 長崎工事事務所
 技術副所長
前 建設省 遠賀川工事事務所
 管理課長
橋 村 和 敏

建設省 遠賀川工事事務所
 管理課 維持係長
鷺 山  洋

1 はじめに
上新入第2排水樋菅は,遠賀川の左支川犬鳴川左岸2km665に昭和40年9月に設置され,以来30年余を経過しており管体内部には1mm程度のクラックが多数発生し,これより漏水も生じており堤体材料の吸出しによる堤防陥没の危険性が大きい。
その原因は,堤防天端が県道との兼用道路であるため大型車両の通行が多く,長期的な厳しい荷重条件下にあることおよび地質条件による不等沈下の複合的要因によるものと推察される。
当樋管の背後地は人家連担部があることおよび堤防天端は筑豊と北九州を結ぶ主要地方道であることなど,当該樋管の安全性が地域の日常生活や水害防止等に多大な影響を及ぼす非常に重要な施設であり,早急な対策が必要であった。以下にその対策について述べる。

2 対策工法の選定
樋管本体のクラックは全長の2/3にわたっており,対策は次の3工法について経済性,施工性等総合的に検討した。
(1)工法の比較
① ライニング工法
樹脂を含浸したフェルトを熱硬化して函体を補強する工法であり,県道の交通遮断の必要も無く,また本体の補強効果も十分に期待でき恒久的な補強となる。
② 高圧噴射攪拌地盤改良+クラック補修
函体周辺部の地盤改良により函体に作用する曲モーメントおよびせん断力を軽減するとともにクラックの補修を行い漏水を防止する。
地盤改良の経費は①とほぼ同程度であるが舗装の復旧および迂回路を必要とするため経済的には割高となる。まだ恒久的な補強は期待できないことや地下水への影響も懸念される。
③ 開削による全面改築
堤防を開削して全面的に改築するもので通水断面の確保等,技術的には確立されているが,経済的に150,000千円と割高であり,工期も長期間必要となり交通への支障等,地域への影響が大きい。
(2)対策工法の決定
上記の3工法を経済性,地域への影響および安全性等総合的に検討した結果,全てにおいて優れている①のライニング工法を採用することに決定した。
ライニング工法には,GCライニング工法・INS工法・ICP工法・SPR工法等があるが,異型函で大口径の施工実績および断面縮小率等を考慮して「GCライニング工法」を採用することとした。

3 GCライニング工法の概要
GCライニング工法は,従来のライニング工法にGFRP(繊維強化プラスチック)を組合せて,複合ライニングを形成するもので従来の工法よりライニング厚を薄くすることが可能でコスト縮減,ならびに断面縮小率の減少が図れる工法である。この工法は,①既設函渠の材質を問わない ②断面の変化および形状を問わない ③直径0.8mから2.5mまで施工が可能 ④耐久性・耐蝕性の向上が図れる等の特徴を有する。GCライニング工法の施工方法は既設函渠に予めGFRPの補強板を設置し,その後に熱硬化性樹脂に浸したライナーバックを水圧により反転挿入し,温水(80℃)により加熱する。このときGFRPの樹脂面とINSライナーの樹脂面が融着して強力に一体化され剛性の高い複合ライニングを形成することになる。

4 上新入排水樋管の更正概要
当樋管は2.5m×2.5mで延長19.7mの1連で内空断面積が6.2m2の排水樋管である。
更正は、厚11mmのGFRPと31.5mmのライナーバックの計42.5mmでライニングするもので、更正後の断面は5.2m2となり,約84%に減少するが粗度係数の低下(n0.013→0.010)により流下能力は9%程度向上することとなる。
なお設計にあたっては,既設樋管の強度は,ライニングの形状を維持するための拘束効果を考慮してライナー厚を算出した。
更正断面を図ー2,完成写真を写真ー1に示す。

5 まとめ
今回当事務所では大型ボックスの補修に「GCライニング工法」を試行的に採用したが,日本でも初めてという大型断面における当工法の適用であったため,仮設備,施工の進め方において手戻りもあり,ライナー表面の仕上がりに一部シワの発生もみられたが,機能上,特に問題となるものではない。供試体の強度等は十分な値を得ており,全体を通してみると,大幅なコスト縮減,工期の短縮,又地域住民への影響等において,当初の目的は十分達成されたと思われる。
今後,厳しい財政事情の中で地域に責任のある河川管理を進めていくためには,工法の中身を十分吟味しつつ新工法の採用に積極的に取り組むべきと考える。

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