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社会資本整備重点計画について
小平卓

キーワード:社会資本整備重点計画、ストック効果、戦略的インフラマネジメント

1.社会資本整備重点計画の概要
平成26年7月に策定された「国土のグランドデザイン2050」等を踏まえて、平成27年から概ね10年間の国土づくりの方向性を定めた国土形成計画(全国計画)が改定された。このことを受け、国土形成計画の中長期的な具体的指針を示す計画として、平成27年9月18日に第4次社会資本整備重点計画が閣議決定された。

社会資本整備重点計画とは、社会資本整備重点計画法(平成15年法律第20号)に基づき、国民生活・経済社会・産業活動の基盤を形成する社会資本について、計画期間中、どのような視点に立ち、どのような事業・施策に重点をおくのかといった「整備の方向性」を明確にし、社会資本整備に関する「政策目標」とその実現によって、国民が享受する「成果」を示すとともに、「限られた財源の中で効果的かつ効率的に社会資本整備を実施するための取組」を明らかにするものである。
対象は、道路、交通安全施設、鉄道、空港、港湾、航路標識、公園・緑地、下水道、河川、砂防、地すべり、急傾斜地、海岸等、多岐にわたる。これらの社会資本の効果が最大限発揮されるような整備を実現するために、様々な分野を横串で刺したような計画が社会資本整備重点計画である。
主な計画事項は以下に示す3点である。
・計画期間における社会資本整備事業の実施に関する重点目標
・重点目標の達成のため計画期間において効果的、効率的に実施すべき社会資本整備事業の概要
・社会資本整備事業を重点的・効果的かつ効率的に実施するための措置等
なお、第4次社会資本整備重点計画は平成32年度までの約5年間を計画期間としている。

2.社会資本整備重点計画の特徴
(1)持続的な社会資本整備に向けた基本戦略
第4次社会資本整備重点計画では、社会資本整備が直面する構造的課題として、①加速するインフラ老朽化、②切迫する巨大地震、激甚化する気象災害、③人口減少に伴う地方の疲弊、④激化する国際競争の4点を挙げている。また、これらを乗り越えるための基本方針として、「機能性・生産性を高める戦略的インフラマネジメント」をあげ、3つの方針を打ち出している。

1)集約・再編を含めた既存施設の戦略的メンテナンス
高度成長期以降に集中的に整備した社会資本が一斉に老朽化することにより「荒廃する日本」とならないように、予防保全を基軸とするメンテナンスサイクルを構築・実行し、計画的に修繕・更新等を実施することにより、既存施設の安全性を図るとともに、中長期的なトータルコストの縮減・平準化を戦略的に実現する。

2)既存施設の有効活用(賢く使う取組)
社会資本のストック効果を最大化するために蓄積された既存の社会資本を最大限活用する。また、本来の機能に付加価値を与え、機能を高度化、多様化し、効果的かつ徹底的に社会資本を活用する。

3) 社会資本の目的・役割に応じた選択と集中の徹底
新設・高度化マネジメントは社会資本整備の目的・役割に応じて「安全安心インフラ」「生活インフラ」「成長インフラ」に分類し、その効果が最大限発揮されるように選択と集中の徹底を図る。
また、これらの社会資本整備を支える現場の担い手・技能人材の安定的な確保・育成、現場の生産性向上などに向けた具体的な方策や、社会資本整備を計画的かつ着実に実施し、担い手を安定的に確保・育成するための、安定的・持続的な公共投資の見通しの必要性も明記されている。

(2) 社会資本整備の基本目標
第4次社会資本整備重点計画では、基本戦略として示した「機能性・生産性を高める戦略的インフラマネジメント」の具体化を図り、中長期的な見通しを持った社会資本整備を進めていくため、4つの構造的課題に対応した4つの重点目標とその達成に向けて必要な事業横断的な13の政策パッケージが定められ、重点的に取り組むべき具体的な事業・施策を明らかにしている。
加速するインフラ老朽化に対しては、重点目標1「社会資本の戦略的な維持管理・更新を行う」を掲げ、あらゆる社会資本に共通する課題として、戦略的メンテナンスに取り組む。
切迫する巨大地震、激甚化する気象災害に対しては、重点目標2「災害特性や地域の脆弱性に応じて災害等のリスクを低減する」を掲げ、「安全安心インフラ」の選択と集中により、ハード・ソフトの取組を総動員し、人命と財産を守る事業・施策に重点的に取り組む。
人口減少に伴う地方の疲弊に対しては、重点目標3「人口減少・高齢化等に対応した持続可能な地域社会を形成する」を掲げ、「生活インフラ」の選択と集中により、人口減少下での地域生活サービスの持続的・効率的な提供による生活の質の向上を図る事業・施策に重点的に取り組む。
激化する国際競争に対しては、重点目標4「民間投資を誘発し、経済成長を支える基盤を強化する」を掲げ、「成長インフラ」の選択と集中により、民間事業者等との連携を強化し、生産拡大効果を高める事業・施策に重点的に取り組む。

3.九州ブロック社会資本整備重点計画
現在、広域地方計画に示す地方ブロックの方向性や地域戦略の実現に向け、地方ブロック別における社会資本整備重点計画の策定が進行中である。
九州ブロックにおいても、日本の成長センター『ゲートウェイ九州』、三層の重層的な圏域構造からなる『元気な九州』、巨大災害対策や環境調和を発展の原動力とする『美しく強い九州』を将来像として、九州ブロックにおける効率的な社会資本整備のあり方を検討している。

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