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第12回国際土質基礎工学会議に参加して

九州大学工学部土木工学科
 助教授
烏 野  清

1 はじめに
1989年8月14日から18日まで,ブラジルのリオデジャネイロにおいて第12回国際土質基礎工学会議が開催された。この会議は4年に1度開催され,土質・基礎の全分野に関連する国際会議である。九州からは日本学術会議の派遣として山内豊聰九州産業大学工学部長が出席されていた他,佐賀大学理工学部の三浦哲彦教授が参加されておられた。私も今回,この会議に参加する機会を得たので,会議およびブラジルの印象等について簡単に報告させて頂く。

2 会議の内容
2.1 発表論文の概略
今回の会議においては,5つの特別講義と以下に示す30のディスカッションセッションが設けられた。
 1. 強度と変形に関する室内試験の最近の動向
2.SPT,CPT,圧力計試験と現場試験の最近の動向
3. ダム基礎に関する設計パラメータの選定
4. 沿岸の調査と基礎
5. 軟岩中の空洞に関する施工時の問題点
6. 熱帯地方の土の工学的特性と設計時の評価
7. 崩壊性と膨潤性をもつ土
8. 粗粒土の地盤工学的特性
9.地下構造物に関する設計パラメータの選定
10.地盤工学における可能性
11.模型実験
12.アンカーとインジェクトパイル
13.大口径杭
14.杭の打込み性
15.杭の静的・動的試験
16.送電塔の基礎
17.補強土の斜面と壁面
18.グラウトおよびその他の地盤改良法
19.凍土
20.隔壁とスラリー壁
21.地すべりの制御とその方法
22.風化岩と残留土の斜面の安定性
23.フィルター(天然材料とジオテキスタイル)
24.軟弱地盤上の道路と土構造物
25.地盤沈下
26.有毒排棄物の環境制御
27.地震応答に及ぼす地域条件による地震の影響
28.作業基準
29.専門的慣習
30.規約と基準
今回の国際会議には上記に示す各ディスカッションセッションに対して,49カ国,475編の論文が発表された。日本から約100名,各国から1,000名以上の参加があった。
表ー1に各セッション毎の発表者の地域別人数を示す。発表論文の多い国としては,フランス48編,アメリカ47編,ブラジル33編,日本およびイタリア25編,西ドイツ24編,イギリス19編となっている。通常の国際会議に比べて,アメリカおよび日本の論文数が少ないように思われる。この会議では各国の国際学会会員の人数に比例して,掲載ページを割当てることから各国に比べて国際会員の少ない日本では,7倍程度の狭き門であったと聞いている。このような現状をふまえ,日本の土質工学会では次回の国際会議までに国際会員数の増加を図るため,年会費の変更などの対策を講じている。皆様の御協力をお願い致します。
表ー1中のセッション14と27の下段に示す数字はそのセッションで別冊として発行した論文集の掲載論文数を示す。応募原稿の多いセッションでは別冊の論文集を作製することで,セッションの充実を図ったものと思われる。
地域別にみると,ヨーロッパ,北アメリカの発表論文件数が多く,各セッションをみると,実験を主体とした1,2,7,11,17,18,26の項目において発表数が多い。

2.2 ディスカッションセッション
5つのディスカッションセッションが同時刻に開催される関係上,自分に関係するセッションしか参加できない。各セッションの詳しい内容に関しては,土質学会誌に報告される予定なので,ここでは私の研究に関連する,セッション14について報告したい。
セッション14は東京理科大学の藤田圭一教授をチェアマンとする杭の打込み性に関するセッションである。ここでは今回,非常に興味ある試みが国際学会で初めて実施された。
表ー2に示す鋼管杭4本およびコンクリート杭2本に対して,すでに静的載荷試験および動的試験が実施されており,静的極限支持力および動的挙動等が得られている。これらの試験結果を伏せて,杭長および杭径等の諸元,地盤の柱状図と各層の士質の特性,深さ方向のN値の分布,動的試験におけるハンマーの重量と落下高さおよびクッション材,ひずみ測定の位置等のデータを提供し,各国で杭の支持力を研究し,その推定式を提案している研究者に,これらの試験杭の支持力を推定してもらおうというものである。この企画に参加した研究者はAoki(ブラジル),Bentero(イタリア),松本(日本),Appendinoの4名である。

図ー1に鋼管杭No.2の荷重一沈下曲線における予測値と試験結果を比較して示す。各研究者の予測手法の違いにより,結果にかなりのバラツキがみられる。図ー1においてはApの曲線が最も試験結果に近いが,他の杭では大きく異なるなど,全ての杭に対して良い予測結果を示した人はいなかった。

表ー3は静的極限支持力の予測値と試験結果を比較して示したものである。杭全体の支持力に関しては各研究者とも3割以内の誤差で推定しており,特にブラジルのAokiは5本の杭に対して,かなりの精度で予測している。しかし,杭先端と周囲の分担力に関しては,誤差が大きいようである。杭の支持力の推定においては,杭形状,地盤の特性等の種々のパラメータが複雑に関連することから,正確に支持力を推定することが,いかに難しいかがわかる。また,各研究者の予測式において,最も重要な要因となるパラメータがそれぞれ異なっており,かならずしも提供を受けたデータだけでは充分でなかった場合も考えられ,今後のデータ収集および予測式の改善が期待される。
世界中の研究者が集まる国際会議という場で,各研究者のこれまでの成果を用いて,共通のデータより杭の支持力を推定し,競い合うということは非常に興味ある企画であり,今後の国際会議における一つのやり方として,高く評価されるものと考える。

3 ブラジルの印象
会議の開催されたリオデジャネイロは世界三大美港の一つとされるだけあり,急峻で円錐形をした岩山,白い砂の海岸線とそれに平行に建設されているホテル群,青い海と空,これら全てが一体としてかもしだす景色は,素晴らしいものである。南半球に位置することから,8月は最冬の季節にあたるが,リオデジャネイロは気候的に日本の初夏程度であり,とてもしのぎやすい。したがって休日には多くの市民が,かの有名なコパカバーナあるいはイパネマの海岸で日光浴やサッカー,ビーチバレーを楽しんでいた(写真一1)。

しかし,国民の貧富の差が大きく,生活環境が極端に異なっているようである。したがって,街中の治安となると全く悪く,会議出席者の中にもバック,カメラの引ったくりやピストルを持った強盗にビデオカメラを盗られたりの事件が発生し,参加者の中ではかなりの不満が見られた。通常,観光客が街中を散歩する場合,カメラ,バッグ等は持たず小額紙幣のみを持って数人で行動し,目的地までの往復はタクシーを利用するのが最も安全であるとのことであった。
入国前にブラジルのインフレに関する話には聞いていたが,貨幣価値の低下には驚かされた。たとえば,我々が滞在した8日間に1ドルが3.8~4.2ニュークルザードに変動した。ブラジルは過去2回の貨幣の切り下げにより,紙幣がクルザード,クルザードス,ニュークルザードの3種類存在し,数字の桁数が大きい程価値が低いことから,短期間の滞在においては単位を覚えるのに苦労した。したがって,街中にはコインが存在せず,旧紙幣がコインの役割をしている状態である。
食物ではパパイヤ,パイナップル,スイカ等の果物が豊富であり味もなかなかなものであった。また,多くの人種が集まっているため,世界各国の料理があり,1人20ドル出せば十分である。ブラジル料理としては,各種の前菜と牛・豚・鳥の肉の焼いた料理があるが,その1人前の量の多さには圧倒された。
ブラジルの人々の生活サイクルは全く日本人と異なり,2~3時間の昼休み,夜8時頃から夕食,その後深夜まで酒を飲んだり,散歩したりで騒々しい。学会貸切りでブラジリアンショーを観たが,開宴10時,終宴12時であった。肌の色が種々異なる美しい女性がサンバを激しく踊る様は素晴らしいものであり,夏のリオのカーニバルの盛大さが目に見えるようで楽しい一刻であった(写真一2)。この踊りの途中にあるショーで,佐大の三浦先生が舞台中央に引っ張り出され,全く臆することなく堂々と渡り合い,会場から大喝采を受け,一夜の内に全会議参加者に顔と名前を覚えられてしまった。楽しい思い出である。
会議およびブラジルの印象を思いつくまま書きました。機会がありましたらぜひブラジルにお出かけ下さい。

参考文献
(1) Preliminary Report on Questionnaire Survey,
(2) Drivability of Piles
(1)(2)ともProceedings for the Discussion session 14. Twelfth international Conference on Soil Mechanics and Foundation Engineering/August 13~18,1989,RiodeJaneiro/Brazil.

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