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アルバカーキへの旅

福岡県土木部次長
権 藤 一 夫

(一)今,福岡県においては盛んに国際交流の推進ということでいろいろな企画が試みられています。そして地方が直接世界の各地と結びつく時代となり地方の国際化は今後ますます進みますが,このことは地域経済や住民に新たな刺激を与え地域に活力をもたらす契機となります。
また,国際交流の内容は物や資本中心から人の交流とそれに伴う文化,情報など多方面の交流へと発展しております。昭和60年3月茨城県筑波研究学園都市で開催された科学万博も国際化の大きなイベントだったと思います。特に我が家にとってはこれがきっかけとなって長男が国際結婚をすることになりました。実は私の長女が科学万博の政府館にコンパニオンとして採用され同じ職場でアメリカ国籍のジェネス・ジョンズと働くことになり,この科学万博を長男が見に行った事からジェネスとめぐり合う事になった訳です。そして科学万博も終りに近づいた9月末,長男とジェネスは婚約しました。
科学万博も終り,10月末ジェネスは両親が住んでいるアメリカヘ婚約の報告と結婚の準備のため帰国しました。両親も快く承諾し急遽ジェネスの生れ故郷であるアルバカーキ市で結婚式をあげることになりました。
その為,私共夫婦もアメリカヘ招待され結婚式へ参列することになり,アルバカーキヘと旅立つことになった訳です。
(二)いよいよ年の瀬も押しせまった12月24日福岡発ソウル経由ロスアンゼルスヘと旅立ちました。そしてここで1泊し,次の日アルバカーキヘと飛び立ちました。
間もなく万年雪を頂くセラネバダ山脈を越え,やがて雄大なコロラド川を眼下に,はるかグランドキャニオンの絶景を左手に望みながら氷と雪の砂漠の高原地帯を一路東へと飛び続けました。こうしてロスアンゼルスから東方へ旅する人は,複雑で変化に富む雄大な景観を楽しみながら飛ぶことができます。
ロスアンゼルスから2時間たらず飛んだ砂漠の真中で私達の乗ったジェット機は機首をグングン下げていきます。やがて行く手遥かに私達の目指すアルバカーキの街並みが見えてきます。空港には長男と婚約者のジェネスが出迎えてくれました。
(三)ここアルバカーキは,ニューメキシコ州中部のリオ,グランテ川に面した都市で1706年,今から280年前にスペイン人によって創設された歴史の古い州最大の都市です。人口は33万で州の人口の1/4が集中しており標高1,800mに位置する砂漠の都市です。またアルバカーキ市は保養・観光の都市としても有名で,ここの地名は入植当時スペイン総督アルバカーキ公にちなんで命名したということです。このため“公爵の町”として今日に知られています。
空港に降り立った私達はこの大砂漠を見渡しながら遥けくもこんな遠くまでよく来たものだと感慨ひとしおでした。早速長男が空港で借りていたレンタカーに乗り込み市内の観光地オールドタウンヘと向かいました。この町は250年前の開拓時代の一画を保存したところで,あの西部劇に出てくる町並みそのままで遥か当時の面影をしのばせてくれます。今はメキシコの影響を強くのこしたレストランやおみやげの商店となっています。町並みには当時油で明りをともした街灯が並び,町はずれには幌馬車がそのままおかれていましだ。
(四)ここから車で10分程で私達はリオグランテ川の辺りに立っていました。この川は,ニューメキシコ州のほぼ中央を南北に縦断し更に流れを東南方向へ変え合衆国とメキシコ両国の国境をなしています。その流域面積60万km2,長さ3,000kmの大河で流路の半分以上が河川国境をなしています。日本で最大の河川である利根川が流域面1万7千km2,長さ322kmと比較すれば如何に大きな河川であるかがわかります。平均流量は4,000m3で特に夏の増水期の流量は大きく,ニューメキシコ州とテキサス州に肥沃な農業地域をつくる重要な河川です。
また,アルバカーキのような砂漠の都市の気候の特色は雨量が少ないこととその不規則性にあると言われます。1度に年間降水量以上の雨が降ることもまれでなく,豪雨時にだけ水が流れるワジ(枯れ川)で自動車が押し流されたり,キャンプしていた人が水死する事もあるということです。また,砂漠の気温は変化が大きく夜は急速に冷えて行きます。夏の真昼時には自動車のボンネットの上でタマゴ焼が出来る程暑くなり暑熱にあえぎ死者が出ることもあるということです。また,時には気圧の急変のために竜巻が発生し土砂や家屋まで巻き上げ,遠くの竜巻でも土砂や板ぎれが思わぬ所に降ってきて自動車などメチャメチャに懐すこともあるそうです。
(五)私達は縁あってアメリカヘ旅することができ,色々な事を勉強するチャンスを得ました。また,長男がアメリカ女性と結婚したことによって砂漠の都市アルバカーキに親戚も出来,更にアメリカは身近かに感じられるようになりました。私達はアルバカーキに2泊し,ジョンズ家へ神父に来て頂き無事結婚式をすませ,帰りは長男夫妻と一緒にアルバカーキ空港へ向かいました。
さて,機中私はかわいい少女と隣合わせの席になり「幾つか」と聞くと「6才」と答えが返って来ました。そして私に「スペイン語がわかるか」と聞くので「わからない」と答えると紙に自分の名前を書いてくれました。彼女はスペイン語を話すが簡単な英語もわかるらしくこれも筆談を交えながら1時間程話してきました。「君の髪と目がきれいで美しい」と言うと,「オオ,サンキュウ」と大人みたいな笑顔とウィンクが返ってきたのには唖然としました。そうしている内に私達はロス空港に降り立ち,ここで長男夫婦と別れ,彼等はロングビーチヘ新婚旅行に旅立ちました。
外国旅行は,風俗や習慣の違いやそれぞれの国の歴史と文化を肌で感じとって来ることができるものです。
私はいくつかの海外旅行を経験しましたがアメリカの旅もまた,興味があり,魅力あるものでした。更に深くアメリカヘの目を開かせてくれるものでした。

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