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災害に強く名水と歴史のふるさとの川・稲葉川

大分県土木建築部河川課改良係
 副主幹
安 田 栄 一

1 はじめに
稲葉川は,阿蘇国立公園・久住の山麓の清水を集め,城下町竹田市街地を流下して,狭田地区十川で,大野川に合流する。
流域面積129.4km2,流路延長34.0kmを有し,竹田市を流れる玉来川,緒方川と共に,大野川水系の上流部を形成する河川である。
稲葉川の河川改修は,昭和57年の洪水による被災を契機として,昭和60年度より中小河川改修事業により改修に着手した。
昭和62年12月には「稲葉川ふるさとの川整備事業」のモデル河川に指定され,昭和63年6月に整備計画の認定を受け,町づくりと一体的に水辺空間の整備を実施中に,平成2年6月28日から7月3日の集中豪雨,平成5年9月2日から9月4日にかけての台風13号と2度にわたる大水害の被害を被ったところである。
そのため,平成2年度に稲葉川・玉来川激甚災害対策特別緊急事業の認可を受け,以来“災害に強く名水と歴史のふるさとの川”をテーマに改修が進められている。以下,事業の経緯と概要,これからの展望を記述するものである。

2 竹田市の災害
竹田市は,地形上から阿蘇,久住山の山麓に降った雨量が市街地に集中するため,梅雨前線,台風の豪雨により度々被害を受けてきた。特に昭和57年,平成2年,平成5年の洪水では,広範囲にわたって甚大な被害を受けた。
その被災状況を表ー1に示した。ここでは特に平成2年の水害による被害が大きいため,被災状況,対策等を記述する。

3 被害状況
稲葉川,玉来川をはじめとする大野川上流域の河川は緩やかな傾斜をなす阿蘇外輪山を源として流下する急流河川で,いずれも竹田市において扇の要のように集中している。
平成2年の被害が極めて大であった背景にはこのような地形的要因による急流河川特有の水勢の強い洪水氾濫,さらに土石流や崖崩れにより多量の土砂を含んだ洪水が流木とともに流下してきたことが考えられ,これらが洪水の破壊力を増し,被害を一層大きくした。
市内部で河川は至るところで氾濫して護岸決壊等の災害を被るとともに,土砂害による道路・橋梁の災害が多発し,竹田市街地においては電話,電気,水道等の都市機能も被害を受け市民生活に著しい不自由を与えた。
平成2年の豪雨は,昭和57年7月24日豪雨出水を上回る規模となり,加えて流木による橋梁の閉塞が洪水の氾濫を一層助長することとなり,大災害の一因となった。
玉来地区の中心部は,昭和57年の災害を契機に小規模河川改修事業による蛇行部のショートカットの開削工事を進められていたため,洪水はこの部分を溢れることになり,玉来地区の被害を軽減することができた。また,稲葉川についても昭和57年の災害を契機に中小河川改修事業による河床掘削や法線是正等の工事を進めていたため,昭和57年の洪水で浸水した豊岡橋下流の城北地区は浸水を免れることができた。
しかし,他の地区では,写真の如く被災を受け,大分県では竹田市周辺災害復旧計画検討委員会を設置して,災害復旧に早急に対応することとした。

4 総合的災害復旧の方針
竹田市では,昭和57年の災害を契機として河川改修事業や治水ダムの建設事業を鋭意進めていた矢先の出来事であり,これまでの治水計画の安全度や水害に脆弱な都市の構造,地域防災システム等防災上の種々の問題を露呈した。
したがって,再度災害の防止と早期災害復旧のためには,今回の被害の状況や原因等を総合的に判断し,ハードとソフトの両面から対応することが必要となった。
総合的災害復旧のための甚本方針は次のとおりである。
 ① 治水計画規模の見直し。
 ② 早期河川改修と緊急治水ダム群の建設。
 ③ 発生源や河川での流木対策。
 ④ 関係機関と住民とが一体となった地域防災システムの確立。
 ⑤ 耐水性の街づくり。
 ⑥ 事業早期促進のための諸施策立案。

5 総合的災害復旧計画
5.1 治水計画規模
これまで1/50確率で進めていた治水事業の計画規模を,今回の実績降雨が2日雨量確率でおおむね1/80となり,しかも既往最大であったことから1/80確率に改定することとし,治水基準点は,大野川の稲葉川が合流する地点より下流の猿飛橋地点とし,上流治水ダム計画においては1/80確率で対処することとした。

5.2 災害改良復旧事業
被害が甚大で広範囲にわたった玉来川,大野川,濁淵川支川笹無田川および稲葉川上流は早期に再度災害防止と安全度の向上を図るため,改良費を加えた改良復旧事業で対応することとし,災害復旧助成事業と河川等災害関連事業により3~5ケ年の短期間で実施する計画とした。
また,河川改修にあたっては,大野川河川空間環境管理基本計画を踏まえ,自然,歴史文化に恵まれた当該地区にふさわしい河川環境の整備を推進していく必要があることから,瀬や淵等の自然空間の確保,親水性護岸の整備,魚族の保護等水辺空間の整備計画を今後具体化していく必要がある。
5.3 河川激甚災害対策特別緊急事業
これまで中小,小規模の河川改修を進めていた稲葉川,玉来川については再度災害防止と事業の早期完成を図るため,河川激甚災害対策特別緊急事業を計画し,5ケ年を目途に河床掘削,捷水路の掘削を行って治水能力を確保することとした。また稲葉川においては,護岸工は「ふるさとの川モデル事業」との調和を図って,引き続き実施する計画とした。

6 「名水と歴史のふるさとの川」稲葉川
昭和63年6月に建設省の河川局より,「ふるさとの川モデル事業」として認定され,「稲葉川ふるさとの川検討委員会」,「竹田市まちづくり委員会」を開催し整備計画を策定したが,策定以来6年を経たことから,稲葉川をとりまく社会条件,社会的要請が少しずつ変化してきており,平成6年7月に再度「稲葉川ふるさとの川検討委員会」を開催し,ふるさとの川整備計画の見直しを図り,より時代のニーズに対応した川づくりの計画を策定した。
6.1 整備方針
ふるさとの川整備計画の立案にあたり,竹田市の地域の特性,街づくりの方向,整備方針を表一2にまとめた。

以上の様な整備方針により,稲葉川を4つのゾーンに分け整備を行う。
水辺のプレイパークと多機能ウォーターフロント
(上流ショートカット)
●ショートカット部の落差工や河床を生かし,総合的な水辺学習レクリエーションゾーンの一画を形成する。
●水生植物園・名水博物館等を水辺に整備するとともに,旧河道部分を清流復活用の貯水池として活用する。

水辺のメインストリート(竹田駅周辺~豊岡橋)
●旧竹田荘や愛染堂等の歴史的文化財を結ぶ「歴史の道」と連携を図り,沿川に「名水遊歩道」を整備する。

水辺のプロムナード(豊岡橋~下流ショートカット)
●藩校の復元などをしつつ,岡城祉への登り口を整備し,対岸のおたまや公園との連携を図る。
●高水敷・低水路に水辺の遊びの空間を設け,河岸沿いにプロムナードを整備する。

三日月岩水辺パーク(下流ショートカット~三日月岩)
●竹田市を代表するイベントとなった観月祭,薪能の利用に対応した広場として,三日月岩一帯の整備を行う。

① 名水遊歩道の整備
竹田市街地には観光のために,歴史的な文化財等を結ぶ歴史の道の整備が進められている。これと連携して稲葉川沿いに遊歩道を設け,観光振興の一助とする。この遊歩道は,「名水都市・竹田」のイメージをさらに高めるために,並木や石畳みの整備のほかに“名水飲み場”や“名水の流れ”を取り入れた『名水遊歩道』とする。
② 名水と歴史の里づくり
計画区間内上流部には捷水路を新たに開削するが,旧河道部とその間に挟まれた地区はこの計画の中でも最大の面積(約4.6ha)を持つことから,水辺と堤内地を一体的に整備する拠点地区とする。
旧河道内には水生植物園と,流量が少なく水質が悪い本川の維持流量を確保するための貯水池を造る。また,堤内地には竹田の特性を活かした名水博物館等を整備する。
③ 三日月岩広場の整備
計画区間最下流部右岸には,江戸時代藩主が楽しんだと伝えられている,崖を三日月状にくりぬいて造った“三日月岩”がある。その対岸の水際で,数年前から新能を地元の有志が中心となり復活した。この計画では,能をみることに対応した低水護岸および広場を整備する。

7 おわりに
稲葉川については,昭和60年より改修に着手し,平成2年の災害を契機に,中小,小規模および激特事業により工事を進めて来た。全体事業費82億円の内,平成8年度までに67億円を注ぎ込み,事業の進捗率82%,治水安全度95%の流下能力が確保でき,さらに治水ダムの本体を早期に着手し,流域全体の治水安全度100%を目指している。
また,計画策定について,竹田市周辺災害復旧計画委員会,稲葉川ふるさとの川検討委員会,竹田市まちづくり委員会の委員に貴重なるご指導をいただき厚く御礼を申し上げます。今後も真にふるさとの川にふさわしい事業の完成を目指し,よりよい「名水と歴史のふるさとの川 稲葉川」を推進していきます。

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