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渡り鳥の宿り木~山陰神社大祭~ ( 宮崎県日向市東郷)
矢括吉崇
「地元の祭りで神輿を担いでみらんか。」上司からの突然の問いかけに少々戸惑っていると、困惑した自分の表情から状況を察してくれたのか、詳しい内容を話してくれた。
どうやら地元で毎年開催している祭りの中で、神輿を担いで町内を回っているが、人口減少や高齢化のあおりを受け、担ぎ手が不足しているらしい。そこで事務所の上司と比較的若手の自分を含めた数名に、神輿の担ぎ手としてお誘いがあったようだ。
正直なところ神輿を担いだ経験など、遠い昔の子ども神輿ぐらいしか記憶にない自分としては、本物の神輿の担ぎ手など務まるのか一抹の不安を覚えた。しかし神輿を担ぐ経験など滅多にない機会であり、少しでも地元に協力出来ればと考え、参加させていただくことにした。
祭り当日お借りした法被を身にまとい、あまりの着慣れなさ、似合わなさに自分でも苦笑しながら地元の方々と一緒に神輿を担いで回った。担ぎ始めて20 分ほど経過すると息が切れ、肩に痛みが走る。もう限界だと感じた時、一旦集会所に立ち寄り振る舞い酒をいただく。お酒の影響か次第に気分が高揚し、最初のうちは照れもありか細い声で行っていたかけ声も、あたかも自分が地元の人間であるかのように声を枯らしながら叫ぶようになった。担いでは飲み担いでは飲みを繰り返し、集まった地元の方々や子ども達と談笑し、不思議な一体感に包まれながら最後は山陰神社の境内へ戻り、無事神輿担ぎは終わった。
神輿担ぎが終わると神社の境内の前で直会(※注釈)の開始である。頂いた振る舞い酒と神輿担ぎの影響か、既に酔いがまわっている状況の中、お酒を煽る。ただひたすらに談笑し酒を煽る。気がつけば意識はなく、最後の記憶は地元のお宅で一緒にカラオケを歌っていたことを断片的に留めているだけだ。
一夜明け残ったものは、得も言われぬ充実感と、二日酔いからの頭痛と両肩の痛みであった。
日々の業務を行う中で、数年に一度転々と職場を異動する自分達の状況は、さながら作業着を身に纏った渡り鳥のようだと思うことがある。そうした渡り鳥が地元の行事に参加し、地元の方々とふれあい、自分の故郷であるかのように感じる経験は、例えるなら自分の心の中に新たな宿り木を見つけたようなものである。
日々の業務で忙殺されていたが、思い返せば自分が今の職を目指したきっかけは、地元と繋がり、地元のために出来る仕事はないかと考えたからである。これからも初心を忘れず、各地に第二、第三の心の宿り木を探していきたい。

(※注釈)直会(なおらい)…祭事が終わってから神酒(みき)・供物を下げていただく宴会。

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