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機械化施工における施工改善手法の研究

建設省土木研究所機械施工部
機械研究室室長
杉 山  篤

建設省土木研究所機械施工部
機械研究室主任研究員
村 松 敏 光

建設省土木研究所機械施工部
機械研究室研究員
高 津 知 司

建設省土木研究所機械施工部
機械研究室技官
北 島 公 生

まえがき
建設業における生産性の向上や作業環境の改善を求めて,ロボット化,合理化,施工改善の必要性が叫ばれている。しかし,工場におけるこれらの開発のような,客観的かつシステマティックな方法,手順が確立していないため,合理的かつ強力な開発体制の確立が遅れている。
本研究は,そのような改善において,エキスパートを必要とした改革から,総合的なアプローチによる客観的な改革手法への転換を図るもので,本報文は概要と中間的な経過を紹介するものである。

1 研究の背景と目的
建設工事の機械化施工は,昭和20年代の黎明期に始まり,油圧駆動方式の導入,大型化などの改善がなされてきた。この時期は,建設機械がその出力を大きくしていくことによって施工の効率を高めてきたといえる。その後,困難な工事条件での施工,より高品質の施工,長大なものや巨大なものの施工への取り組みが多く行われた。このため,工法の開発が多くなされ,そのための施工機械が開発,改良されてきた。
近年,建設工事における労働生産性の低迷,3Kなどの作業環境問題,人手不足などへの対応の必要が叫ばれている。このため,省力化,効率化を目指した自動化への取り組みが盛んになってきている。建設省は,本年,「建設工事自動化のビジョン」を作成し,その方向付けを行った。
しかしながら,現実の工事は作業員一人一人の知的な判断に基づいて行われており,単純なロボットの導入や小手先の改善では解決できない。また,このような困難な問題解決へのインセンティブも求められている。
このため,複雑かつ知的な作業によって組み立てられている建設工事に対して,分析的,解析的,定量的な記述手法を開発することによって,客観的な問題表現と解決への合意形成に基づく作業改善,機械化あるいはロボット化等を推進し,生産効率の向上,安全の確保,苦渋の低減に資することを目的とする。

2 研究の概要
建設工事において実際にロボットを導入したり,施工の効率化を行うには,複雑に関係したいくつかの作業を整理していかなくてはならない。ロボットの導入に際しては,ロボットの判断を軽減するとともに効率的に作業するための環境作りや作業をプログラムするための詳細な分析が特に必要である。
また,効率化やロボット化を実現するための投資は決して少ないものではなく,これを行わなくても工事は行える。このため,新たな投資への強力なインセンティブが求められる。現在の組織化された建設業においては,現在の施工の定量的な表現と改善後の施工の定量的な推定,記述に基づいて,合意形成を客観的に進めることが必要である。
これらの課題は,製造業における作業の細分による流れ作業への転換や,産業用ロボットの開発・導入においても提起された。製造業においては,インダストリアルエンジニアリング(以下,単に「IE」と呼ぶ。)の手法を活用した改善手法が成功を修めた。
また,建築の中でも,鉄骨構造によるものでは,大ブロック化が進められるなど,造船と似た合理化が行われている部分がある。組立産業である建築業において,十数年前から,IEの手法を応用することが試みられている。そして,ロボット化やプレハブ化においていくつかの成果が報告されている。
土木工事については,部品の組立ではなく,彫刻や塑像に近い作業形態であることから,在来のIEに基づく手法の適用では限界があると思われる。このため,土木工事における定量的分析を中心とした新たな手法の開発に取組むものである。その全体計画は,図ー1に示すようになっている。

複雑な作業の定量化手法として効果的なIEは,テーラーによるシャベル作業の標準化に始まった(図ー2)。そして,具体的な作業改善の成果を挙げたのは建設業においてであった。それは,ギルブレイスによる動作分析に基づいた煉瓦積み作業の効率化であった。また,生産性を表わす一つの定量化手法として歩掛調査が行われているが,分析の単位が比較的大きく,作業要素を分析するには適していない。このようなことから,本研究の着手に当たって,多くの定量化手法の中から,IEに着目した。

IEは,図ー3に示すように,「人,材料,設備,エネルギー,情報の統合された体系の設計,改良,設定に関する活動」であって,「その体系から得られる成果を規定し,予測し,評価するために工学的な分析・設計の原理と方法とに加え,数学,自然科学および社会科学の専門知識と経験とを利用して行うものである。(JIS)」つまり,経営資源を有効に活用するために,システムの設計・改良・設定を行うことであり,そこでは科学的・定量的な規定・予測・評価をすることが必要で,工学的・経験的な知見に加えて数学や社会科学まで広く導入する必要があることを示している。このため,単に製造業に限られたものではないが,混同を避けるために,本研究による成果となる手法は,コンストラクションエンジニアリング(以下,単に「CE」と呼ぶ。)とでも名付けたい。

製造業におけるIEの調査,工場,建築業におけるIEによる改善事例調査を基に,土木工事の定量化手法の基本として,IEの適用性を検討した。この結果,土木工事の抱える課題のいくつかについては,その効果が期待できるものとの結論を得た。
そこで,本年度は,いくつかの土木工事において,IEの手法を適用し,課題の定量的解決を試みている。
その結果を基に土木工事における手法としてCEを構築し,施工改善手法のマニュアルとして,先の適用事例とともにまとめるものである。

3 工場建築における作業改善
3.1 工場における事例調査
製造業では,初期には,作業にかかる時間を分析する時間研究や,作業を構成する動作の組合せ等を分析する方法研究を中心とする作業研究が生産現場の改善に利用されていた。その後,多くのIE手法が開発され,近年では極めて高度な手法も適用されている。このIEの手法の拡大とともに,その適用範囲も拡大し,工場の生産に係わる製造レベルから,経営に関わるレベルをも含んだ生産に係わる全領域にまで広く関係してきている(表ー1)。
しかしながら,製造業の各分野を通じて,その大半は工程分析,時間研究,方法研究といった基本的なIE手法が大半を占めており,依然として極めて重要な手法となっている。
工場におけるIE手法の適用事例を調査した結果,次のような形に集約できる。
目   的:効率化,ロスの低減,リードタイムの短縮などの生産性の向上
対   象:作業者(一部機械を含む)
手   法:PTS,ワークサンプリングなどの間接的時間研究手法
分析レベル:工程,作業,動作
測定データ:時間,工数,移動
分析方法 :工程分析,作業分析,動作分析,稼働分析,ラインバランス

3.2 建築における事例調査
建築分野では,昭和40年代から,作業現場の改善にIEの手法の適用が検討されてきた。特に,高層の建築物を中心としてIE適用の研究が行われ,作業や施工の管理,作業改善,機械化を目的として有効に活用されてきている。近年では,雑誌の常設コラムとして現場におけるIE活動の事例紹介が行われるなど,定着しつつある。
建築では,作業員の活動範囲が広いこと,協力した作業が多いこと,習熟が求められることなど,工場とは異なった側面を持つ(表ー2)ため,適用に当たって工夫が必要である。このような特殊性を考慮した上で,次の点で,IEを建築分野に応用することは大きな意義をもっている。
◦時間研究は施工管理面の有効な手段となる。
◦施工管理の面で時間研究による標準時間の設定は有効である。
◦工程研究は,標準的な作業方法や施工方法の検討に有効である。

建築におけるIE手法の適用事例(表ー3)を調査した結果,次のような形に集約できる。
目   的:工数の低減,作業時間の短縮などの生産性の向上
対   象:機械と作業者
手   法:ストップウォッチ法,ビデオ分析,作業帳票分析などの直接的時間研究手法
分析レベル:主として作業レベル
測定データ:時間,工数,作業量
分析方法 :時間分析,エ数分析,連合工程分析

3.3 土木工事における定量化
一般的には,事象を定量化する方法は,対象となる事象の特質に左右される。その意味で,工場,建築,土木を比較すると,表ー4のようになる。この表から,工場と土木の中間的なところに建築があるといえる。工場に適用され,開発されてきたIE手法を,建築の作業に合わせて改良し,活用してきた作業を進展し,IEを基礎としたCEの開発,適用の可能性が確認できた。

4 土木工事におけるCEの適用に関するアンケート調査
4.1 調査目的
アンケート調査によって,土木工事におけるCEの適用に関する視点,その視点においてCEを適用すべき工程および具体的な作業,並びに改善が求められる原因および作業の特徴,在来のIE手法の適用の有効性を把握することを目的とした。
4.2 アンケートの設計と実施
アンケートに当たって,IEやCEといった言葉はなじみが薄く,一般的でないため,アンケートの文面には用いないように配慮した。調査項目は以下のように構成した。
・CEの適用目的:IEの目的には生産管理と施工改善があるが,土木工事の実態を考慮し,後者に関して調査した。
・CEの適用の視点:生産性,苦渋性,安全性の3点について調査した。
・改善が求められる問題点と原因:作業改善の必要な問題点を抽出し,その原因が機械,作業者,手順のいずれにあるのか,さらにその作業の特徴について調査した。これによって,何に着目してCE手法を適用すべきか,また適用できるかを把握することとした。
・CE手法の有効性:在来のIE手法を具体的に示し,その適用の可能性について調査した。調査の対象とした工種は,先のエレクトロニクス利用による建設高度化システムの開発に関する総合技術開発プロジェクトで指摘された7工種(土工,トンネル工等)とした。
4.3 アンケートの結果
アンケートの結果の詳細については紙面の都合で省略するが,次のような点について,CE手法のような定量化手法による問題解決が期待できることが指摘された。
・安全面:危険環境での作業時間の短縮,解消等
・苦渋面:機材の作業性,悪い姿勢での長時間作業等
・生産性:機械の作業効率,低稼働,作業時間等

5 IEによる施工現場の調査
上記の調査の結果,作業内容・性質の違いによって測定分析のレベル・対象・方法の面で改良が必要なこと,土木工事の抱えている問題の全てにCEが有効に働くものではないことといった制限があるものの,作業の客観的記述や作業データに基づくシステマティックな施工改善方法としてCEが有効な手法となり得るとの結論を得た。そこで,実際の工事において定量的な分析を試み,施工改善を行って,定量化手法の得失を明らかにすることによって,土木工事に適した手法開発につなげることとした。
5.1 調査の骨子
本調査は次の点から成る。
(1)改善対象の選定
改善の緊急性,同種の工事が同手順で数多く行われている,改善効果が予想される等の施工ニーズ等から改善の対象となる工種を絞り込み,さらに改善の目標を明確にする。
(2)調査手順の決定
工場生産や一部建築分野で用いられている生産工学的手法を調査し,土木工事の特徴,改善目標等を基に土木工事へ適用する。また,改善案を受けて,手順の体系化も行う。
(3)改善の提案
上記の調査手順を用いて施工現場で調査を行い,その結果に基づいて建設機械・施工工種等の改善を提案する。
(4)改善案の確認
建設機械・施工工程の改善に関する提案を受け,機械の試作,試験施工を行い,改善効果を確認する。
5.2 対象工種
調査対象工種の選定は,基本的には以下の3点に留意して行った。
・改善することが緊急であるもの。
・同種の工事が数多く同手順で行われているもの。
・改善の余地があることが予想され,改善効果が期待できる。
以上の条件に適合する工種としては,道路交通への影響,夜間にわたる作業の改善等緊急課題であり,改善点も多く存在することから道路維持修繕工を選定した。
また,死亡災害発生率が土木工事平均の5倍以上もあり安全面に対する改善が求められることから土工を選定し,粉塵が多く飛散し狭隘であるので作業環境が悪くその改善が求められることからトンネル工を選定し,海上での作業で気象条件に作業効率や安全性が左右されやすく改善の効果が期待されることから離岸堤を選定した。
これらの工種は,定量化手法の適用といった観点からも特徴的で,土木工事におけるCEの運用の一般性の確認にも有効なものと考える。例えば,道路維持修繕工は定められた狭い範囲の中の作業に限定されているため,作業員を追跡するなどの詳細な調査が可能である。トンネル工では,切り羽を基準にすれば同じ位置で同じ作業が直列的に繰り返され,外乱の少ない状態での組合せ作業が行われている。離岸堤は人と機械の組合せによる単純な繰り返し作業であるが,気象や水といった制限による作業の困難性がある。土工は機械と機械の組合せによる作業で,機械を対象とした分析が必要になる。
5.3 着眼点
各工種における着眼点は,IE的手法の適用性を含めて検討し,次のように設定した。
(1)道路維持修繕工
・工事による渋滞の解消(工事時間の短縮,工区の延長)
・重機と交通車両に接して作業を行うので,事故の発生しやすい環境である。(建設機械と作業員の分離,建設機械の改善)
(2)トンネル工
・粉塵・CO等による悪環境下での作業(粉塵・CO等の低減)
・機械故障による作業の停滞(機械故障の低減)
(3)土 工
・建設機械による事故(建設機械と作業員の分離,建設機械の改善)
・オペレータによる作業速度のばらつき(自動・半自動化)
(4)離岸堤
・クレーン船と水中作業者との連絡が作業環境に影響されて,安全性や生産性を悪くしている(効率的な連絡手段の確立)
・水中作業による事故・作業員の苦渋(水中作業時間の短縮)
5.4 調査方法・手順
調査方法・手順の設定に当たっては,対象となる作業の内容と解決すべき問題点に適合した手法を採用することが重要である。このため,対象工事によって大きく左右される。ここでは,道路維持修繕工を例に紹介する。
なお,調査方法,手順の検討に当たっては,施工現場での予備的な調査や専門家へのヒアリング調査などを行って,調査方法の妥当性を確認した。
5.4.1 対象作業
調査の対象となる作業については大きく次の二つに分類できる。
・機械が主であり,機械と機械の相互関連がある作業
・人手による補助作業に依存する機械作業
前者に相当する作業としては,舗装版取壊しから掘削までの工程,後者に相当する作業としては,路盤工から舗装工までの工程が該当する。
5.4.2 分析レベル
単位作業レベル以上の粗い分析では,機械の移動や作業の問題を取り扱うことができず,問題点の抽出が難しくなる。また,動作レベルの分析では,複雑な変動要因の影響を受け易く,データがばらつき,問題の本質が把握しにくくなる。このため,要素作業レベルでの分析を行うこととした。
なお,ビデオによる記録を十分行うことによって,事後の詳細な分析も可能なようにした。

5.4.3 調 査
調査は,マクロ的なものとミクロ的なものに大別される。前者は,工事あるいは対象とする工程の全体的な把握を目的とするもので,機械,人,資材などの投入資源の量とレイアウト,作業量,作業方法,工程の流れ・時間,作業者・機械の稼働等に関する調査,分析である。後者は,問題点を定量的,解析的に明らかにし,改善の方策を見いだすためのもので,作業者や機械の動き,管理のための測定や作業相互の関連などに関する調査分析である。ミクロ的な調査は,要素作業レベルでの所要時間,サイクルタイム,稼働率,制約条件,作業工数,損失時間と原因,要素作業回数等に関して,ストップウォッチやビデオテープを用いて計測する。
5.4.4 分 析
調査結果の分析方法には多くのものがあるが,主なものについては以下のようになる。
・工程別,要素作業別の作業時間から,改善による施工時間の短縮効果の大小などを判定できる。
・稼働率の分析から,問題となる機械,人が抽出できる。
・時間の流れの中で,それぞれの人や機械が相互に制約している様子を分析する連合工程分析によって,作業の進捗を制約するクリティカルパス(またはネックエンジニアリング)が抽出できる。また,作業者毎の作業の分析と合わせることによって,作業毎の不要人員が明らかになる。
・工程別の作業者数から,投入人員を規定するピークが明らかになり,省人化への改善を必要とする作業が抽出できる。
・計測などの作業への影響(必要人員,作業中断要因での重要度など)から,施工管理工程などの作業への影響が明らかになる。
これらの分析方法によって明らかになる問題点は,そのまま裏返せば改善につながるものであると考える。

6 まとめ
以上,土木工事のロボット化や作業の改善を進めていく上で,定量的,客観的な解析が重要であること,そのためにはIEを基にしたCEの開発が必要なことを述べた。そして,CEの開発へ向けて,在来のIEを適用した調査の概要を紹介した。現在,九州地方建設局を始めとした各地方建設局のご協力の下に,実際の工事現場における調査を行っているところである。
今後は,調査方法の見直しとともに,調査結果に基づいた改善のケーススタディを行い,建設工事における施工改善のためのCEとして整理し,マニュアルの形にまとめたいと考えている。

あとがき
IEが初期に成果を挙げたのは,建築の中の煉瓦積み作業であった。その後長い間に製造業で大きく育ってきた。現在,IEを生み出した分野への帰還が行われているといえる。
現段階では,机上の理論であるが,いずれ機会を得て,調査結果に基づいた具体的な改善の手法について紹介したいと考える。

参考文献
(1) (社)日本鉄鋼連盟:IEによる実践的問題解決の進め方,1989
(2) 古川光:おはなしIE。日本規格協会,1988
(3) 建築の技術施工(1977年3月,1980年1月,1984年4月)に建築関係の特集が組まれているほか,同誌には多くの報告がある。
(4) 今泉益正ほか:現場の改善手法テキスト(上)・(下),日科技連出版社,1985

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