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耐風索を有する斜張橋(歩道橋)の設計と施工
—宮崎県須木村—

宮崎県 須木村長
有 薗 三 郎

第一復建株式会社
 設計1部技術部長
中 村 登 是

第一復建株式会社
 設計1部課長補佐
岡 田 憲 正

1 はじめに
宮崎県須木村は,宮崎市の北西約40kmに位置し,九州中央山地国定公園に指定された自然色豊かなところである(図ー1)。この恵まれた環境の地に,昭和52年度から小野湖(人造湖)を中心とした観光レジャー基地「すきむらんど」の開発が進められている。昭和62年度は,この基地内にフィンランド風体験実習館と,同湖西側のままこ・・・滝広場と対岸の岩観音・・・を結ぶ歩道橋が計画された。昭和63年度は,歩道橋としては日本一の斜張橋が完成して,橋梁名を公募し「すきむらんど大つりはし」と命名された。
この橋の景観的特色は,床版に須木村特産の木材を使用して森林との調和を図り,かつ橋上から自然美あふれる風景を観賞できるように,橋の中央に展望所を設けたことである。さらに,構造上の特徴としては次の2点があげられる。
(1)山岳地系では,主塔位置に制約があるため他定式単径間斜張橋とした。
(2)幅員が狭くて橋長が長く,そして補剛桁にH形鋼を使用したために剛性が低くなり,かつ床版に木材を使用したため死活重が小さい等の耐風安定性に対する悪条件を克服するために,斜張橋としては珍らしい耐風索を設けて,さらにその耐風索にプレストレスを導入することにより,使用時の全体剛性を高めたことである。
以下にこの橋の設計施工の報告を行う。

2 橋梁形式の選定
橋梁の形式選定に際しては,観光レジャー地内に架橋されることから,観光の対象となる形式が重要な課題として指摘されたので,次のようなテーマを総合的に検討して選定した。
静かな湖面に容赦なく流れ落ちる“ままこ滝”を観賞し,自然を満喫でき(写真一1),観光におとずれた人々の印象に残るものとして,まず斜張橋案,吊橋案,上路アーチ案の3案(図ー2)を考えた。
その中から,景観性,斬新性,構造性の評価によって,全国各地においてもほとんど報告されていない,耐風索を有する斜張橋案が最終的に採用された(図ー3)。

3 設計概要
(1)設計条件
型  式:他定式単径間斜張橋
橋  長:155.0m(主塔間隔)
幅  員:1.5m 径間中央部3.0m(展望所)
荷  重:活荷重(等分布荷重)
     床版,床組     300kg/m2
     補剛桁,ケーブル他 200kg/m2
     風荷重(風上側のみ)450kg/m2
床  版:木床版(t=5.0cm)
主塔形式:ロッキングタワー
主  索:ファン型マルチケーブル4段
縦断勾配:1.5%放物線
横断勾配:水平
適用基準:小規模吊橋指針・同解説(日本道路協会) S59.4
     道路橋 示方書・同解説(日本道路協会) S59.2

(2)補剛桁
補剛桁の架設手順として,通常のケーブルエレクション工法で補剛桁を所定のキャンバー値で支持し,添接箇所の高力ボルト締付完了後,斜主索ヘ盛り換える方法をとるため,解析にあたっては特に架設系は考慮しないものとした。
ケーブルは,すべてストランドケーブルを使用し,サグの影響を考慮して等価弾性係数を求めて E=1.4×106kg/cm2とした。
断面力の算出は,微小変形理論による平面解析と,有限変形理論による立体解析によるものとし以下のように使い分けた。
1)平面解析
耐風索なしの系とし,死荷重および活荷重(影響線載荷)による断面力を求める。
2)立体解析
耐風索有りの系とし,死荷重プラス耐風索のプレストレスによる断面力と,横荷重による断面力を求める。
3)解析結果
平面解析での死荷重による断面力と,立体解析での死荷重プラス耐風索のプレストレスによる断面力との比較では,部材断面の決定に支配的な位置(支間中央部)において,補剛桁の軸力に最大約7.0tの差(立体〉平面)が生じたが,曲げモーメント,せん断力については,ほとんど差が生じなかった。以上から,断面決定に際しては平面解析による活荷重断面力と,立体解析の断面力を使用した。その結果,600×300のH型鋼となった(図ー4~8に補剛桁の断面力を示す)。

(3)ケーブル
通常斜張橋では主索にプレストレスを導入して主塔や補剛桁の曲げモーメントの改善を行うが,本橋においては死荷重状態で主索の張力が10t前後と小さいため,主索へのプレストレスは導入しないものとした。主索の最大張力は21.7tとなり4段ともすべて34φストランドケーブル(A級1種)を使用したが,耐風索の最大張力は64.6tとなり40φストランドケーブル(A級1種)を使用した。
(4)主 塔
主塔の形状は,美観を考慮しH型とした。脚柱の断面決定は,平面解析で得られた断面力を用いて箱断面とした。主索定着部は,中央径間側とバックスティ側との張力がスムーズに伝達するように,脚柱内に定着板を貫通させた。また主塔はこの橋のメインとなることから,周囲の景観にマッチした色が選択できるように塗装仕様とした。
(5)活荷重の偏載荷に対する照査
本橋はたわみやすい形式であり,かつ支間中央に拡幅部(展望所)を設けているため,橋面上の半幅員部分にのみ群集荷重200kg/m2(これは360人にあたる)を載荷した場合,支間中央での左右補剛桁の鉛直変位差は約9cmとなった。
しかしながら,このような極端な載荷状態は現実問題としてはないと判断した。
(6)固有振動についての検討
数値解析結果による本橋の固有振動数を以下に示す。
  1次モード:0.79Hz
  2次モード:1.15Hz
  3次モード:1.55Hz
  4次モード:2.05Hz
  5次モード:2.42Hz
上記のうち通常考える振動モードの次数1次および2次モードにおいては,歩行者に不快感を与える恐れがあると言われる1.5Hz~2.3Hzの範囲からははずれており,その心配はないものと判断できる。
(7)下部工
下部工の設計内容は,主塔脚2基,主ケーブルアンカーレイジ2基,耐風索アンカーレイジ4基,および取付階段の中間脚1基と小橋台1基の計10基である。ほとんどの基礎は岩盤上に位置するため安定に対し問題はない。しかし,右岸側下流の耐風索アンカーは,岩盤が露頭していることからこの岩盤にアンカーする形式とした。
また,右岸側主ケーブルアンカーレイジ付近の地層は,他と異なり,南九州に広く分布するシラス層と基盤岩である頁岩から構成されている。
このシラス層はN値13~19で,基礎底面下約10mまで分布し,それ以深は頁岩となっている。
このような場所では,通常鉛直荷重を主体とする構造物であれば杭基礎とすべきであるが,本基礎の場合は,主作用荷重が水平荷重(鉛直荷重は負)となるためシラス土の水に弱い特性を考えて施工中および完成時において雨水等に対する措置を講ずれば,直接基礎も可能であると判断でき,そして鉛直変位および水平変位について,杭基礎と比較した結果も差はなかった。以上より,ここでは経済性や立地条件,施工性を比較検討した結果,直接基礎方式を採用した。

4 施工概要
(1)主塔の架設
主塔高は30mあり,特に左岸側は脚高の10mに加えて40mの高さになる。よって45t吊りトラッククレーンを用いて積上げ架設を行った。
架設中の主塔の転倒防止に対して橋軸方向には控え索をとることができたが,橋軸直角方向については地形上の制約から,控え索アンカーを取ることができないため,架設用形状保持材を用いて組立てた(図ー9)。

(2)補剛桁,主索および耐風索の架設
主塔および主索アンカーレイジを架設時に使用し,地形的にも適したケーブルエレクション工法で補剛桁および主索の架設を行った。
補剛桁は無応力状態(架設ケーブルで吊った状態)で,高力ボルトの締付けを行った後に,斜主索を取り付けた。最後に耐風索を取り付けたが,耐風索により架設ケーブルに計画値以上の力がさらに作用するのを避けるため,耐風索を取り付ける事前に架設ケーブルは解体した。
(3)張力管理
この橋では,橋梁全体の剛性を高めるために,耐風索にプレストレスを導入している。このプレストレスが設計値どおりになっているかどうかがこの橋の安全性および,使用性にとって重要である。従って,耐風索へのプレストレスの導入を正確かつ安全に行うためには,導入に伴って変化する主索の張力および橋の形状を,振動法,歪ゲージ,レベル,トランシット等を使用して観測管理を行った。

5 おわりに
これまでに本文では,報告された例のない耐風索を有する斜張橋(歩道橋)で,さらに橋全体の剛性を高めるために耐風索にプレストレスを導入した「すきむらんど大つり橋」の設計・施工の概要を報告した。従来であれば,山岳部では吊橋が主体であったこの規模の歩道橋を,美観・耐振性で優れる斜張橋にしたいという要求が増えることが予想される。その際にこの報告が技術発展の一助となれば幸いである。
また,この橋が自然美豊かな「すきむらんど」の目玉となり,観光開発に大いに役立つことを期待しています。
おわりに,このような貴重な体験の機会を与えて頂いた,宮崎県須木村の有薗三郎村長をはじめ須木村の関係者各位にこの紙面を借りて深く感謝の意を表します。

参考文献
1 橋梁と基礎 VOL 13,No.8,1979
2 橋梁と基礎 VOL 18,No.9,1984

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