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弓削高架橋の基礎処理について

建設省熊本工事事務所
 技術副所長
江 崎 茂 明

アイサワ工業㈱福岡支店
 次長
河 津 美智雄

1 まえがき
弓削高架橋下部工は,昭和61年度に直轄工事として,熊本工事事務所で施工したものである。
橋脚基礎工の施工に先立ち,試験杭打ちを実施したところ,土質の状況が,当初の想定と著しく相違して,大粒径の転石が多く,当初設計による施工は不可能と判断して,施工を中止し対応策を検討の結果,当初設計の鋼管杭基礎工を中止して,エクセル工法による場所打ち杭に変更して施工したものである。
以下その当初計画から対応策の検討,施工に至る経過を記すものである。

2 計画の概要
この弓削高架橋は,一般国道57号の熊本市内の交通緩和を図るためのバイパスとして計画した熊本東バイパス(延長15.4km暫定供用ずみ)で,起点部の4車線完成に伴ない,既設橋(昭和47年施工)に隣接並行して施工する橋梁である。
計画の概要は次のとおり
工事場所  熊本市竜田町~石原町
道路規格  第3種1級V=80km/h
橋  格  1等橋
荷  重  TL-20
橋  長  420m
有効幅員  11m
支  間  8@30.0m+27.7m+30.0m+40.0m+30.0m+27.2m+25.0m
斜  角  90°
設計震度  Kh=0.17
橋  脚  (逆T型張出式鋼管杭基礎)10基
     (  〃  〃 直接基礎)1基
(注)橋台2基及び河川内P10,P11橋脚2基は昭和47年度施工ずみ。

3 地質の概要
架橋地点は,熊本市の東部に位置し,北側に合志台地(標高70~80m)と南側にある,託麻原台地(標高60~100m)との間に侠まれた,一級河川白川によって形成された低地部(標高40~60m)である。
この白川は,架設地点の上・下流で左右に大きく蛇行しており,過去において,河道が何回も変動したことを示している。
当地域は,カルデラ式活火山として有名な,阿蘇火山の影響をうけており,火砕流や噴火物を多く含んだ地域である。
地質序層は,中世代白亜紀の姫浦層群で,砂岩礫岩を基盤とし,これらを被覆する,第4紀更新世の,阿蘇ー1火砕流,阿蘇ー1~3間の砂礫層,ローム層,阿蘇ー3火砕流,託麻砂礫層,東部ローム層と更に完新世の火山灰と表層盛土から形成されている。
地質の分布状況は,図ー3に示すとおりであり,表層からの地質の状況は表ー1のとおりである。

4 基礎工の型式及工法決定
4-1 型式の決定
ボーリング調査による地質の概要に基づき,隣接する既設橋脚への影響等も考慮して,P1~P5橋脚については1/2間砂礫層を支持層とし,P5橋脚(P10P11橋脚は施工済)は託麻砂礫層を支持層として,P1~P9及びP12橋脚は鋼管杭基礎とし,P13橋脚は直接基礎と決定した。

4-2 工法の決定
工法の選定については,次の条件を設定して決定した。
(1) 中間層にある託麻砂礫層に存在する,礫径をボーリング資料の3倍程度として想定し,P1~P5橋脚間は,3~20cm,P7~P12橋脚間は,6~30cmとした。
(2) P1~P2橋脚間に,層厚5m程度の細砂層がある。
(3) 地下水位が,地表面+10m程度ある。
(4) P3~P6橋脚周辺に民家があり,騒音,振動対策を必要とする。
(5) 既設橋(昭和47年度施工)が,鋼管ぐい,H鋼ぐいで施工されている。
以上のことに着目して検討した結果(表ー2)のとおり決定した。

5 試験施工の概要
本工事の施工に先立ち,中掘工法,打撃工法による試験施工を行った。
5-1 中掘工法
P2橋脚について実施した。設計支持層深度21mに対して,深度10mの位置から,託麻砂礫中の礫が予想以上に大きく,地下水の影響も受けて,管内排土と,圧入によるくいの貫入が困難となり始めたが,モンケンによる打撃を長時間繰り返し続けて,ようやく,所定の支持層に達した。
この結果から,地中に点在する礫の状態を把握するため,既設橋脚付近で,アースオーガのみによる掘削を実施した結果,深度5m附近で粒径40~50cmの玉石が出現した。更に深度6mに至り,掘進が不可能となったことから,P1~P7橋脚いずれも,この工法による施工は,不可能であると判断し,くい基礎工法を中止することに決定した。

5-2 打撃工法
P8 P9 P12橋脚について,各々2ケ所ずつ計6本の試験杭を実施した。6地点とも順調な貫入をみ,設計支持力に対し,充分な数値を得たので,表ー3のとおり,実施杭長を決定した。

6 本杭施工の経緯
試験施工の結果から,本杭の準備を整え,先づP9,P12橋脚の杭打込作業に着手したものであるが,試験施工の成果とは全く異なり,深度4~5mに達すると,いずれも貫入不能の状態に遭遇したため,試採(試掘ではと思うが確証がないのでそのまま)による確認をしたところ,深度4mの位置で,径1m程度の転石が確認された。
このような状況から作業を続行しても,杭基礎としての根入れ長を確保することが困難と判断して,当工法による打設を中止した。

7 変更工法の検討
7-1 トラブル発生の主要因
当初計画を根本的に変更せざるを得ない状態に至った要因として,次の点があげられる。
(1) ボーリングの成果から,礫,玉石の存在は予測されていたものであるが,最大粒径が,ボーリング資料の5~10倍と当初想定した3倍を大きく上廻っていた。
(2) 既設橋が同上地点にあり,設計,施工とも,鋼管杭で同様な打撃工法で施工されていることからその実績を過大評価していた。
(3) 既設資料の不足と近隣の他工事等の資料収集が完全でなかった………等のことが反省される。

7-2 工法決定の経緯
工法の決定にあたっては,トラブル発生の施工経過とその原因を把握し,学会誌,建設機械にかかわる各種資料をもとに,鋼管杭,場所打杭について,この工事に適用可能な6工法を抽出し,その施工性,経済性等の検討を行った。
この結果,鋼管杭を使用する場合,他工法との併用工法となり,大転石に対する対応に問題がある。場所打ち杭についても,ベノト工法は,この転石の処理には他工法との併用工法となること,重錘工法は,経済性に問題があり,又施工場所の作業ヤードが狭く作業能率に問題があることなどから,転石,玉石層の掘削に適し,施工実績から,この転石を含む砂礫層の掘削が確実に施工でき,更に騒音,振動等の公害にも有利なことから,エクセル工法を採用することとした(表ー4)。

杭の形状の決定にあたっては,適用する杭径により掘削機が異なるため,杭本数,橋脚のフーチングの形状,寸法等を含めて経済的な最適杭径を比較検討した結果,杭径1,500m/mとした。なお各橋ごとの杭長,杭本数及掘削長は(表ー5)のとおりである。

8 エクセル工法について
8-1 工法の概要
この工法に使用する掘削機械は,先端に特殊刃を取りつけたケーシングを横からつかみ,全開右回転させ,その回転速度・刃先の形状,角度を変えることにより,転石や岩盤を掘削するもので,その概要図は(図ー4)及(写真ー1)のとおりである。
また掘削機械の仕様は(表ー6)に示すとおりである。

8-2 エクセル工法の特徴
エクセル工法の特徴としては次の点があげられる。
(1) 杭径より大きな転石の掘削が可能である。
(2) ケーシングによる先行掘削であるため,周辺の余掘りがなく,コンクリートの打設におけるロスが少ない。
(3) 地下水位が高い土質箇所でも,ヒービングやボイリングを起さない。
(4) 低振動,低騒音である。

8-3 施工の概要
この種の機械は当時九州に保有がなく,長野県より搬送した。始めての施工であり,果たして順調な掘進が出来るかどうか危惧したものであるが,さしたるトラブルもなく,予想以上の工程で,平均1本/日の進捗で無事に施工完了することが出来た。工法選定時に予測した転石は予想以上に最も多く,粒径1.0~1.5mのものが切削排出された(写真ー3)。
もし他工法で施工した場合,補助工法を併用しても掘削は不可能だったろうと思われる(写真ー2)。

9 あとがき
以上この工事の施工の経緯を述べたが,予期しないトラブルで,やむを得ない処置であったとはいえ,このことにより,発注者としては,工費の増大と工期の延伸を生じたことは勿論,「より良い工事を,より安く,より早く」施工することをモットーとする企業としてもまた資材,労力等の手戻りにより,可成りの影響を受けたこともいなめない事実である。
しかしながら,このことが,貴重な体験となり,あらためて調査の重要性が再認識された。
今後はこのような複雑な地質については,単にボーリングの調査によることなく,各種の科学的探査を併せ行ない,適確な実態を把握して,最適の工法を選定することを心がけなければならない。
この記録を寄稿することに躊躇したが,編集委員からの反省の記録としてのすすめもありあえて投稿した。前車の轍として,諸賢の参考の一助ともなれば幸いである。
この稿をまとめるにあたり,工事に直接かかわった方々から,資料の提供と教示をいただいたことに対して謝意を表するものである。

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